計画停電と労基法第26条(休業手当)について
~人事担当者が労務管理上、留意すべき点とは?~
特定社会保険労務士 森 紀男
社会保険労務士 岡安 邦彦
6. 間接的な計画停電の影響による休業のケース
今回の通達の第2項ただし書において、「計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として休業には該当しない」としており、計画停電を超える時間の休業について例外を認めています。
例えば、原料、資材等の不足で工場の操業が困難な場合(いわば今回の東日本大震災が原因で、事業主が関与で きない範囲にあたるもの)には、事業の外に起因するものと解するのが相当であり、原則として使用者の責に帰すべき事由による休業に該当しないと解されます (「労働基準法」コンメンタール平成22年版/P370/労務行政)。
また、3月18日に厚労省が発表した今回の地震に伴う労働基準法等に関するQ&A(第1版)では、
今回の地震により事業所の施設・設備に直接的な被害を受けていない場合には、原則として「使用者の責に帰すべき事由」による休業に該当すると考えられます。ただし、この休業について(1)その原因が事業の外部より発生した事故であること、(2)事業主が通常の経営者として注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であることの要件を満たす場合には、例外的に「使用者の責に帰すべき事由による休業に該当しないと考えられます。
とあります。
例えば、特に製造業等において原材料等の調達が困難な状況であれば、計画停電の時間を超えて休業することは可能です。
また、道路状況の悪化によって物流機能が不充分であって、原材料が到着しない場合もこのケースに該当すると思われます。
7. まとめ
今回のような非常時の場合、今までの慣習で処理できる状況でなくなったため、労務管理の問題が多く発生しています。
例えば、地震により鉄道などの交通網が混乱し、徒歩で出社、または退社した場合の労災保険の適用の考え方、費用の負担の問題、さらには、本人が外出することを拒み、休んだ場合の有給等の処理など、日頃の業務の中では発せし得ない事柄が多い状況です。
今回、休業手当について検討しました。もちろん休業手当という法律も必要ですが、このような非常時の場合には、法律的要素だけでなく、生活保障的視点も踏まえつつ対応する必要があると考えます。
もり・のりお ● 全日本能率連盟認定マネジメント・コンサルタント。株式会社スタッフコンサルティング代表取締役。特定社会保険労務士法人フルセル社員(特定社会保険労務士)。株式会社日本コンサルタントグループ・パートナーコンサルタント。経営法曹会議賛助会員。個別労使紛争解決支援、労働時間管理および是正勧告対応指導、コンプライアンス・リスクマネジメントの観点からの人事労務管理の相談・指導、経営コンサルティング等を行う。
おかやす・くにひこ ● 社会保険労務士、ポート社会保険労務士法人代表社員、株式会社スタッフコンサルティング取締役。就業規則、労働時間管理を中心として主にIT関連業界、映像制作業界のコンサルティングを行っている。
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