計画停電と労基法第26条(休業手当)について
~人事担当者が労務管理上、留意すべき点とは?~
特定社会保険労務士 森 紀男
社会保険労務士 岡安 邦彦
4. 計画停電により全日休業をするケース
多段階的な計画停電の状況によっては、その日について経営判断として休業するということもあるでしょう。計画停電は全日行われることがないため、その場合、前述の部分休業と同様に、計画停電の時間帯部分以外の時間は、前掲基監発0315第1号2の判断が必要となります。
前述のように、休業手当には時間という概念がないため日にち分の支払が必要となります。
次のケースは所定労働時間を1日8時間とした場合(図表4 例3)です。1日3時間の計画停電により、計画停電以外の時間も含めた全日休業を行う場合は、平均賃金の60%の支払をすることとなります。
ところが、短時間勤務の社員の場合、注意が必要です。
<短時間勤務制度対象社員の場合>
3ヵ月平均月給 184,000円
3ヵ月暦日合計 92日
1日当たり所定労働時間 6時間
計画停電 3時間
平均賃金の計算184、000×3ヵ月/92日=6,000円
休業手当は、休業した日について平均賃金の60%以上必要となりますので、
休業手当の計算平均賃金×60%=3,600円
となります。
では、その日について計画停電以外の時間について労働させた場合、どのようになるのでしょうか(図表5 例4)。
その日の実労働時間数=所定労働時間-計画停電の時間帯(3時間)=3時間
仮に、平均賃金から時間単価を出すとなると、
6,000円÷6時間=1,000円となり、実労働時間数3時間@1,000=3,000円
となるため、労働をさせた場合の賃金が休業手当よりも少なくなるという可能性があります。
この試算はあくまで簡略化した計算の中での想定のため実務的ではありませんが、可能性としてこのようなことがあるということを認識しておく必要があるでしょう。
5. 計画停電予定が実施されなかったケース
計画停電は、事前に予告はなされるものの、直前になって回避となることがよくあります。
例えば、会社が事前の予告により操業不能になると判断して、翌日の操業をしないことを決定したにもかかわらず計画停電が回避され、実態としては操業することが可能であった場合にこの休業手当の扱いはどうなるのでしょうか。
これについては、前掲基監発0315第1号の3の「計画停電が予定されていたため休業としたが、実際には計 画停電が実施されなかった場合」にあたり、休業手当が必要であるかどうかは、「計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期を踏まえ、上記1及び2に基づき判断すること。」となっています。
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