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男性の育休取得の現状
-2020年は過去最高で12.7%、5日未満が3割、業種で大きな差

ニッセイ基礎研究所 生活研究部 上席研究員 久我 尚子氏

男性の育休取得の現状

【要旨】

  • 厚生労働省「雇用均等基本調査」によると、2020年の民間企業に勤める男性の育児休業取得率は過去最高の12.7%を示した。前年からの上昇幅は+5.2%ptと大きく、「働き方改革」などによる意識の高まりやコロナ禍による価値観変容の影響があるのだろう。一方、取得期間は5日未満が28.3%を占め、女性の育休とは大きな違いがある。
  • 業種別には、圧倒的に「金融業、保険業」(31.0%)で高く、このほか「情報通信業」(14.8%)や「製造業」(14.1%)、「学術研究、専門・技術サービス業」・「宿泊業、飲食サービス業」(各13.6%)などでも全体平均を上回る。背景には、戦略的に男性の育休取得を促進する企業が多いことや正規雇用者が多いこと、裁量労働制など柔軟な勤務制度が浸透していることなどがあげられる。
  • 男性の育休取得期間は必ずしも育休取得率の高い業種で長いわけではない。取得期間が5日未満の割合は「金融業、保険業」では64.0%を占めるが、「情報通信業」や「学術研究、専門・技術サービス業」では1割前後である。なお、後者では、1ヵ月以上6ヵ月未満が4~5割を占める。
  • 事業所規模別には、100人以上で育休取得率が高く、取得期間は長い傾向があり、男性の育休取得の進む大企業傘下の事業所が取得率を押し上げている様子がうかがえる。一方で日本・東京商工会議所の調査によると、男性の育休取得義務化には中小企業の約7割が反対しており、人手不足感の強い運輸業や建設業、介護・看護業で高い。
  • 本来は育休取得率が高く、取得期間が長ければ良いというわけではない。例えば、夫婦で裁量労働制や時間短縮勤務制度、週休三日制度などを組み合わせることで、必ずしも育休を取らずとも仕事と家庭を両立できるケースもあるだろう。また、家庭によって事情もさまざまだ。一方で取得率の向上は短期間であっても、家事や育児の負担が圧倒的に妻側に偏る現状では価値観の変容を促す「はじめの一歩」としての意義がある。
  • 今年6月に「育児・介護休業法」が改正され、男性版産休とも言われる「出生時育休制度」が創設された。男性の育休取得促進に一層、弾みがつくことに期待したい。すでに政府有識者会議等では継続的に議論が進められているが、今後とも育休取得率の高い企業や組織の工夫等のベストプラクティスを共有するとともに、障壁となる要因を丁寧に把握し制度設計を工夫していくという息の長い取り組みが求められる。

1――男性の育休取得率は過去最高で12.7%だが政府目標におよばず、取得期間は5日未満が約3割

厚生労働省「雇用均等基本調査」によると、2020年の民間企業に勤める男性の育児休業取得率は過去最高値を更新し12.7%を示した(図表1)。これまでも上昇傾向にはあったが、毎年+1%pt前後のごく緩やかなペースであった。しかし、2020年は2019年(7.5%)と比べて+5.2%pt上昇し、過去と比べて大きく伸びた。

図表1 育児休業取得率(民間企業の常用労働者)

背景には、近年の政府の「働き方改革」における男性の育休取得に向けた制度環境の整備や継続的な働きかけによって、企業における意識が少しずつ高まっている影響があげられる。また、新型コロナウイルスの感染拡大によって、生活や家族をより重視する志向が高まった影響もあるのかもしれない1

一方で2020年に男性の育休取得率13%という政府目標値にはわずかに及ばず、依然として女性(81.6%)との差も大きくひらいている。また、育休取得率は伸びているものの、その取得期間は短く、女性との差も依然として大きい。2018年の育休取得期間は女性では1年前後が約6割を占めるが、男性は2週間未満が71.4%、5日未満が36.3%を占める。ただし、2020年では男性の育休取得期間が5日未満の割合は28.3%(▲8.0%pt)へと低下していることから(2020年の同調査では男性の育休取得期間が5日未満の割合のみを公開)、男性の育休取得期間はやや長期化しているようだ。

*1 内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」(令和2年6月)によると、コロナ禍において家族の重要性をより意識するようになった割合は49.9%、就業者で生活を重視するようになった割合は50%、また子育て世帯の男性で家事・育児との向き合い方に変化のあった割合は55.9%(女性は65.7%)、未就園児のいる男性では67.2%(女性は67.7%)。

2――業種別に見た育休取得状況

1|育休取得率~男性では圧倒的に金融・保険で31%、男女とも高いのは情報通信業

男性の育休取得率を業種別に見ると、2020年の首位は圧倒的に「金融業、保険業」(31.0%)であり、次いで1位「サービス業(他に分類されないもの)2」(18.0%)、以下は僅差で3位「情報通信業」(14.8%)、4位「製造業」(14.1%)、5位「学術研究、専門・技術サービス業」および「宿泊業、飲食サービス業」(どちらも13.6%)と続く(図表2・3)。なお、2018年でも「金融業、保険業」(18.7%)や「情報通信業」(10.1%)は比較的高順位であり、取得率は一層伸びている。

また、2018年から2020年にかけて取得率の上昇幅が大きい業種は、2020年で取得率が高順位の「サービス業(他に分類されないもの)」(+13.6%pt)や「金融業、保険業」(+12.4%pt)、「製造業」(+9.8%pt)、「学術研究、専門・技術サービス業」(8.0%pt)のほか、取得率が全業種平均と同程度の「教育、学習支援業」(2020年で12.8%、+10.9%pt)や「運輸業、郵便業」(12.7%、+8.7%pt)などである。

図表2 業種別育児休業取得率(民間企業の常用労働者、2020年)
図表3 男女別に見た業種別育児休業取得率(%)(民間企業の常用労働者)

一方、取得率の低下幅が大きい業種は、「電気・ガス・熱供給・水道業」(2018年で14.5%、▲11.6%pt)、「宿泊業、飲食サービス業」(▲6.3%pt)、「鉱業、採石業、砂利採取業」(▲6.0%pt)であり、いずれも2018年では取得率が高順位である。

男性の育休取得率が高い業種の要因としては、(1)ダイバーシティ経営の強化に向けて戦略的に男性の育児休業取得等を促進している企業が多いこと、(2)育児休業等の両立支援制度を利用しやすい正規雇用者3が多いこと4、(3)職場に女性が多いなど従来から制度環境が整っていること、(4)裁量労働制など柔軟な勤務制度が浸透し、業務における個人の裁量の幅が大きいことなどがあげられる。一方で、取得率が低下した業種では、コロナ禍による雇用環境の悪化などが影響している可能性もある。

女性の2020年の育休取得率は業種によらず半数を超えるが、「情報通信業」(98.9%)や「複合サービス事業」(93.2%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(92.6%)、「運輸業、郵便業」(90.7%)では9割を超える一方、「鉱業、採石業、砂利採取業」(51.7%)や「不動産業、物品賃貸業」(54.8%)、「宿泊業、飲食サービス業」(58.7%)では5割台にとどまるなど業種による差がある。

なお、2018年から2020年にかけての女性の育休取得率の上昇幅は「運輸業、郵便業」(31.0%pt)や「建設業」(21.6%pt)などで大きい。これら男性が多く5、働き方において旧来型の価値観が根強い印象を受ける業種であっても、近年の「女性の活躍推進」政策の効果等によって、仕事と家庭の両立環境の整備が進んでいるのかもしれない。

業種別に男女の動向を比べると、女性の育休取得率が高い業種では男性でもおおむね高い傾向があり、特に「情報通信業」は女性では2020年で100%に近く、男性でも3位を占める。

一方、男女の傾向が必ずしも一致しない業種もある。例えば、「電気・ガス・熱供給・水道業」は女性では育休取得率が9割を超えて3位を占めるが、男性では3%と、ごく僅かであり最下位である。また、「宿泊業,飲食サービス業」では女性では約6割と比較的低いが、男性では5位で全産業平均を上回る。

この背景には、業種による風土や雇用形態の違いの影響があげられる。例えば、業務における男女の役割分担が固定化しているような業種では、両立環境の整備が進む中で女性は育休を取得しやすくなっていても、男性は依然として育休取得の希望を言い出しにくい雰囲気が根強く残っている可能性がある。また、男女の雇用形態の違いの影響もあげられる。男性は育休を取得しやすい正規雇用者が多い一方、女性は雇用期間によっては制度の対象外となるような非正規雇用者が多いような業種6もあるだろう。

*2 廃棄物処理業や自動車整備業、機械等修理業、職業紹介・労働者派遣業、政治・経済・文化団体、宗教などが含まれる。

*3 非正規雇用者の場合、(1)引き続き雇用された期間が1年以上、(2)子が1歳6ヵ月までの間に契約が満了することが明らかでない、という二つの条件を満たせば育児休業を取得可能であったが、2021年6月の「育児・介護休業法」の改正(2022年4月施行)にて(1)が撤廃された。一方で三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 平成30年度厚生労働省委託事業 報告書」によると、女性非正社員が妊娠判明時に仕事と育児の両立の難しさで辞めた理由では「会社に産前・産後休業や育児休業の制度がなかった」(44.4%)が圧倒的に多いため、非正規雇用者の育休取得においては制度環境の整備とあわせて認知も課題である。

*4 ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査 第5回」によると、図表2・3の男性の育児休業取得率の上位5位の業種のうち、「宿泊、飲食サービス業」と「サービス業(他に分類されないもの)」以外は、いずれも20~74歳の男性雇用者のうち正規雇用者は8割以上を占め、特に「製造業」(87.7%)や「金融、保険業」(87.4%)で高い。

*5 総務省「労働力調査(2020年)」によると、雇用者に占める男性の割合は「運輸業、郵便業」は78.7%、「建設業」は83.3%。

*6 ニッセイ基礎研究所「新型コロナによる暮らしの変化に関する調査 第5回」によると、20~74歳の雇用者で「宿泊、飲食サービス業」従事者のうち男性は正規雇用者45.0%、非正規雇用者55.0%(男性はサンプル数が少ないため参考値)、女性は20.4%、79.6%である。

2|育休取得期間(男性で5日未満の割合~郵便局や金融・保険で短く、学術研究や情報通信で月単位

次に、男性の育休取得期間が5日未満の割合について業種別に見ると、「複合サービス事業(郵便局や農林水産業共同組合など)」(68.6%)や「金融、保険業」(64.0%)、「宿泊、飲食サービス業」(62.5%)では6割台を超えて高く、全産業平均(28.3%)の2倍以上を占める(図表4)。また、「卸売業,小売業」(43.6%)や「建設業」(42.9%)も4割台を占めて高い。

つまり、「金融、保険業」や「宿泊、飲食サービス業」では男性の育休取得率が高く、取り組みが進んでいるようだが、その多くは、ごく短期間の取得にとどまる。

図表4 2020年の男性の業種別育児休業取得率ランキング(民間企業の常用労働者)と取得期間が5日未満の割合

一方、男性の育休取得率の上位の「サービス業(他に分類されないもの)」(3.8%)や「学術研究,専門・技術サービス業」(8.6%)、「情報通信業」(10.8%)、「製造業」(19.0%)では育休取得期間5日以上が8~9割を占める。

2020年では男性の育休取得期間が5日以上のデータが得られないため、2018年のデータを見ると、多くの業種では1ヵ月未満が8~9割を占める(図表5)。一方で、2020年の男性取得率が高順位の「学術研究,専門・技術サービス業」や「情報通信業」では3ヵ月程度が比較的多い。1ヵ月以上6ヵ月未満の割合は「学術研究,専門・技術サービス業」は48.3%、「情報通信業」は37.2%を占める。特に「学術研究,専門・技術サービス業」で男性の月単位の育休取得が進む要因としては、前述の「裁量労働制など業務における個人の裁量の幅が大きいこと」といった影響があるのだろう。

図表5 2020年の男性の業種別育児休業取得率および2018年の育休取得期間(民間企業の常用労働者)

以上より、男性の育休取得率と取得期間をあわせて見ると、現在のところ、同様に取得率が高くても、夏季休暇や年末年始休暇程度の数日の取得期間にとどまる業種と、女性の育休と近い月単位の業種とがあり、男性の育休取得実態には温度差がある。

とはいえ、2018年と比べれば、5日未満の割合は低下しているため(全産業で▲8.0%pt、育休取得率の高い「金融業、保険業」で▲8.6%pt)、道半ばではあるものの、本来の意味での育休としての取得が進んでいる様子がうかがえる。また、たとえ取得期間が短くても、家庭における男女の役割分担や働き方における価値観の変容を促す「はじめの一歩」としての意義はあるのではないだろうか。

3――事業所規模別に見た育休取得状況~中小企業では人手不足で

同様に男性の育休取得率を事業所7規模別に見ると、最も高いのは「100~499人」(17.2%)であり、次いで「500人以上」(13.1%)、「30~99人」(12.7%)、「5~29人」(9.7%)と続く。男性の育休取得の進む大企業傘下の事業所が取得率を押し上げている様子がうかがえる。

また、育休取得期間5日未満の割合が最も高いのは「5~29人」(38.4%)であり、次いで「30~99人」(36.2%)、「500人以上」(23.6%)、「100~499人」(16.4%)と続く。つまり、育休取得率の高い事業所規模ほど育休取得期間は比較的長い傾向がある。

なお、日本商工会議所および東京商工会議所「多様な人材の活躍に関する調査」(2020年9月)によると、中小企業では男性の育休取得義務化に対して70.9%が反対しており(「反対(22.3%)」+「どちらかというと反対(48.6%)」)、業種別には運輸業(81.5%)や建設業(74.6%)、介護・看護業(74.5%)で高い。これらの高い数値は「義務化」という強い表現で尋ねた影響もあるだろうが、より人手不足感の強い業種で反対の割合は高い傾向がある。

*7 厚生労働省「雇用均等基本調査」ではハラスメント防止対策等を調査する企業調査と、育休取得状況等を調査する事業所調査があり、事業所調査では事業所を調査単位としており、同一企業内でも本社や支社、工場、営業所等は別の事業所として回答を得ている。つまり、事業所規模は必ずしも企業規模に相当するわけではない。

4――おわりに~2025年30%に向けて男性版産休(「出生時育休制度」)に期待

2020年の民間企業の男性の育休取得率は、初めて1割を超え、前年と比べて+5%pt以上というこれまでにない大きな伸びを示したが、報道等ではさほど取り上げられなかった印象だ。厚生労働省による発表は7月末で、新型コロナウイルスの感染力の強い変異種による感染拡大が止まらない中、東京五輪が開催されており、連日、世間の注目を集める話題が多かったためだろう。また、そもそも約1割という低い数値であり、目立たなかったのかもしれない。

本稿では男性の育休取得率の高さや取得期間の長さに注目したが、本来は取得率が高く、取得期間が長ければ良いというわけではない。例えば、夫婦で裁量労働制や時間短縮勤務制度、週休三日制度などを組み合わせることで、必ずしも育休を取らずとも仕事と家庭を両立できるケースもあるだろう。また、家庭によって事情もさまざまだ。

一方で、現在のところ、家事や育児の負担は圧倒的に妻側に偏っている。内閣府「令和2年版 男女共同参画白書」によると、共働き夫婦の週平均の家事育児介護時間は妻が平均258分、夫は39分であり、実に3時間以上の差がある。妻側の負担の大きさは女性が希望通りに働き続ける上で大きな障壁であり、男性の月単位の育休取得を進めることは当人にとっても、周囲にとっても、家庭における男女の役割分担や働き方における意識改革につながるだろう。また、夫の家事育児時間の長い家庭ほど、第2子以降の出生率は高く(同白書)、男性の育休取得は少子化抑制にもつながる可能性がある。

今年6月、男性の育休取得等を促進するために「育児・介護休業法」が改正された。男性版産休とも言われる「出生時育休制度」が創設され、2022年秋頃から施行される方向で調整が進められている。

この新たな枠組みでは、原則子が1歳(最長2歳)までという現行の育休制度とは別に、子の出生後8週間以内に4週間まで休業可能である。申出期限は原則2週間前までで(現行の育休は1ヵ月前)、2回に分割することもでき、より柔軟に取得できる。女性の産休のような強制力はないが(女性は産後6週間は強制的に休業)、事業主には従業員に対して制度内容の周知や取得意志の確認などが義務付けられる。また、新制度も育児休業給付の対象(6ヵ月間は休業前賃金の67%8が給付)となるように雇用保険法上の手当ても行われる。

冒頭で述べた通り、2020年に男性の育休取得率13%という政府目標にはおよばなかったが、2025年には30%という目標がある。まずは、この新制度によって男性の育休取得に弾みがつくことに期待したい。また、本稿で見た通り、男性の育休取得の現状には業種や企業規模によって大きな違いがあり、その背景には企業風土や制度環境、雇用形態、裁量労働制などの勤務制度の違い、そして、人手不足といった要因が見られた。すでに政府有識者会議等では継続的に議論が進められているところだが、今後とも育休取得率の高い企業や組織の工夫等のベストプラクティスを共有するとともに、障壁となる要因を丁寧に把握し制度設計を工夫していくという息の長い取り組みが求められる。

*8 なお、金明中「韓国で男性の育児休業取得率が増加、その理由は?」(ニッセイ基礎研究所、研究員の眼、2021/8/30)によると、韓国では育児休業給付金の引き上げ(同じ子どもに対して1回目の育休取得では休業前賃金の80%:上限150万ウォン、2回目では100%が給付:上限250万ウォン、いずれも3ヵ月間で3ヵ月以降は50%:上限120万ウォン)によって男性の育休取得者数が大幅に増加しており、日本でも同様の制度設計となることで育休取得率を押し上げる可能性もある。なお、日本でも休業前賃金の実質100%給付といった議論は自由民主党「育休のあり方検討PT中間報告~男性が育休取得しやすい社会を創る~」(2020/3/31)等でも進められている。

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