悪質クレームに対応する
従業員ケアの必要性と対策
弁護士
村上 元茂(弁護士法人マネジメントコンシェルジュ)
4. クレーム対応体制整備の必要性
では、企業は安全配慮義務の履行として、どのようにして従業員を不当クレーム・悪質クレームから守るのでしょうか。クレームが発生する都度、経営者が現場に駆けつけて解決するということは、現実的ではありません。また、クレームは予期せぬところで発生するため、初期対応にあたった従業員が上長に対して、対応方針について問い合わせをする時間はない場合がほとんどです。
アンケート結果によると、迷惑行為があったときにどのように対応したかという点について、55.2%が「謝りつづけた」「何もできなかった」と回答し、37.6%は「上司に引き継いだ」と回答しています。すなわち、クレーム対応にあたった従業員のほとんどがクレームにどのように対応してよいのかわからず、ただ謝罪するか、上司に引き継ぐかしているということになります。
そして、「迷惑行為からあなたを守るために、どのような措置が必要と考えられますか」という問い(複数回答)に対しては、「迷惑行為への対応を円滑にする企業の組織体制の整備」(40.8%)、「企業のクレーム対策の教育」(37.8%)という回答が、「法律による防止」(37.5%)「消費者への啓発活動」(36.0%)という回答を上回っており、従業員は企業に対してクレームに対する体制整備と対応方法の教育を求めているということがわかります。
すなわち、クレーム対応が従業員のストレス要因となっている理由は、企業が従業員に対して対応方法を共有していないため、従業員においてクレーム対応の方法がわからないことであるといえます。
当事務所が現場の従業員から直接相談を受ける場合にも、必ずといってよいほど相手に対するものの言い方、メールの文面に至るまで細かく指示をしてほしいという要望が出されます。
以上から、従業員を不当クレーム・悪質クレームから守るためには、社内にクレーム対応体制を整備し、従業員がクレーム対応に迷わなくてよい環境を整備することが必要であるということがいえます。
5. クレーム対応における基本的考え方
現場の従業員がクレーム対応に困難を感じる理由をさらに分析すると、
- ①現場の従業員において、「顧客」と「クレーマー」の判断基準を持っていないこと
- ②(二次クレーム・レピュテーションリスクを避けつつ)「クレーマー」を撃退するまたはかわす(上長に対応を引き継ぐ)方法がわからないこと
の2点に集約されます。そこで、クレーム対応体制としては、以上の①および②に対応する基準が必要になります。
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