2019年賃上げの見通し
―労使および専門家472人アンケート
~定昇込みで6820円・2.15%と予測。経営側の38.1%がベアを「実施する予定」
民間調査機関の労務行政研究所(理事長:猪股 宏)では、1974年から毎年、来る賃金交渉の動向を把握するための参考資料として、「賃上げ等に関するアンケート調査」を労・使の当事者および労働経済分野の専門家を対象に実施している。このほど、2019年の調査結果がまとまった。
それによると、19年の賃上げ見通しは、全回答者472人の平均で「6820円・2.15%」(定期昇給分を含む)となった。賃上げ率は14年以降、6年連続で2%台に乗るとの予測となっている。労使別に見た平均値は、労働側6779円・2.14%、経営側6701円・2.11%で、両者の見通しは近接している。
また、自社における19年の定期昇給(定昇)については、労使とも「実施すべき」「実施する予定」が8割台と大半である。一方、ベースアップ(ベア)については、経営側は「実施する予定」が38.1%となり、4割近くがベア実施の意向を示しているが、労働側はベアを「実施すべき」が75.8%と4分の3以上を占めており、ベアをめぐる労使のスタンスには差が見られる。
【調査要領】
1. 調査時期:
2018年12月3日~2019年1月16日
2. 調査対象:
被調査者8851人(内訳は下記のとおり)
◇労働側 東証1部および2部上場企業の労働組合委員長等2089人(労働組合がない企業は除く)
◇経営側 全国証券市場の上場企業と、上場企業に匹敵する非上場企業の人事・労務担当部長4927人
◇労働経済分野の専門家 主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなど1835人
3. 回答者数および集計対象:
1月16日までに回答のあった合計472人。対象別内訳は、労働側223人、経営側126人、労働経済分野の専門家(以下、専門家)123人。ただし4ページの3については、労働側240人、経営側125人、専門家127人の合計492人。
4. 集計要領・方法:
賃上げ額・率は東証1部・2部上場クラスの一般的な水準を目安に回答いただいたもので、定期昇給込みのものである。「賃上げ額」「賃上げ率」はそれぞれ別の項目として尋ね、具体的な数値の記入があったものをそのまま集計したため、両者の間には必ずしも関連性はない。
※本調査の詳細は、当研究所編集の『労政時報』第3966号(19.2.8)で紹介しています。
1 実際の賃上げ見通し
- 全回答者の平均:6820 円・2.15%で、賃上げ率は2%台に乗るとの予測
- 労使別の見通し:労働側6779 円・2.14%、経営側6701 円・2.11%
額・率の見通し[図表1~2]
19 年の賃上げ見通しを、東証1 部・2 部上場クラスの主要企業を目安に世間相場の観点から回答いただいたところ、全回答者の平均で6820 円・2.15%となった[図表1]。厚生労働省調査における主要企業の昨18 年賃上げ実績(7033円・2.26%)は下回るものの、賃上げ率は6 年連続で2%台に乗るとの予測である。
労使別では、労働側6779 円・2.14%、経営側6701 円・2.11%となった。労使の見通しの差は78 円・0.03 ポイント[図表2]。本調査における「実際の賃上げ見通し」は、14・15 年は企業業績の回復や政府の賃上げ要請等に後押しされ、社会的にも賃上げムードが高まる中、労使の見通しに開きが生じていたが、16 年以降は縮小に転じている。
賃上げ率の分布は[図表1]、労使とも「2.0~2.1%」が最も多い(労働側39.5%、経営側43.7%)。今回の調査では前提として定昇率を「1.8%程度」と提示している。定期昇給制度がない企業もあるため一様には言えないが、調査結果から、定昇に幾らかのベアが上積みされるとの見方が多いといえる。
◆留意点
「実際の賃上げ見通し」については、調査票上に以下のデータを提示し、それを目安として東証1 部・2 部上場クラスの主要企業における19 年の賃上げがどうなるか、世間相場の観点から回答いただいた。なお、賃上げ額・率は定期昇給込みのものである。
①厚生労働省調査による主要企業の昨18 年賃上げ実績は7033 円・2.26%
②上記から推測される大企業の賃上げ前基礎ベースは31 万8000 円程度
③定期昇給のみの場合は1.8%(5720 円)程度
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。