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「社外からの 社外への」×「セクハラ パワハラ」対応策

弁護士

岸田 鑑彦(杜若経営法律事務所)

4 具体事例の検討

事例1:女性ドライバーが、荷積み先の工場で、担当者にお尻を触られた

女性ドライバーとしては、加害者である担当者に対する不法行為に基づく損害賠償請求と、担当者を雇用する会社(荷主)に対する使用者責任の追及をすることが考えられます。

また、女性ドライバーから相談を受けた使用者は、まずは事実関係を確認したうえで、荷主に対して改善要求等を出さなければならないでしょう。荷主との関係があるため、いきなり法的な対応というわけにはいかない場合もあるでしょうが、少なくとも事実関係の確認をしたうえで改善を求めなければ同じような被害が発生してしまいます。他に内部でできることとしては、ルートや時間帯を変える等の配車の工夫でしょう。

では、女性ドライバーから被害届を出したいという相談があった場合、使用者としてはどう対応すべきでしょうか。

まず、「被害届を出すな」という説得は間違っていると考えます。もちろん、まずは話合いや謝罪要求等、円満に解決する方法を模索すべきですが、それでも被害者の気持ちが収まらないのであれば、それは本人の判断を尊重すべきでしょう。そうでなければ後になって、「会社は犯罪行為を隠ぺいした。それでさらに精神的に傷ついた」といった安全配慮義務違反の問題に発展する可能性があるからです。その意味で、会社としては、被害を受けた従業員を守る一方で、荷主に改善要求等を求めつつ取引関係を維持するという難しい課題をクリアしなければならないのです。

事例2:男性ドライバーが、荷積み先の工場の担当者から「お前のところは後回しだ」と言われ、なかなか荷積みをさせてもらえなかった

この場合、荷積みが後回しにされると、会社としても業務上の支障が生ずるので、その改善を求めて荷主と交渉します。

もっとも、まずはドライバーから経緯を詳しく聞き取る等、事実を確認すべきです。荷主側にも何か事情があったのかもしれませんし、それ以前にドライバーの態度に問題があった等の経緯があるかもしれません。したがって、決めつけるのではなく、荷主にも事情を確認するというスタンスで臨む必要があります。

事実関係を確認し、やはり嫌がらせであるとしか考えられないような場合でも、ストレートに伝えるのか、「労働時間削減に取り組んでいるので荷主様のご協力もお願いします」等、言い方を工夫して伝えるかは検討する必要があります。

運送業者としては荷主に言いづらいというのは経験上非常によくわかります。ただ重要なのは、“会社として自社の従業員を守るために立ち向かった”“会社は自社の従業員を大切に扱っている”という姿勢を従業員に見せるか否かなのです。

事例3:男性営業社員が、取引先の受付担当女性に、「独身ですか? よければ今度食事に行きませんか?」と誘った

このような質問や誘いを業務中にされると受付担当女性も困るでしょう。取引関係にあるので冷たい態度を取るわけにもいかないですし、どう答えてよいかわからないでしょう。

受付担当女性から相談を受けた使用者としては、それをどこまで、どのように男性営業社員に伝えるかはケースバイケースかと思いますが、執拗な場合は、会社(被害者本人ではなく上司や役職者)から男性営業社員に対してやんわりそのような誘いをしないように伝える必要があるかと思います。それでも改まらない場合には男性営業社員を雇用する使用者に対してその旨を伝えざるを得ない場合も出てくるでしょう。受付担当女性から相談を受けた使用者が、相談を放置したまま何も対応しないということになると、男女雇用機会均等法11条1項(※)との関係でも義務を尽くしていないと言われかねません。

※男女雇用機会均等法11条1項
事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。

事例4:カラオケに付き合わされた。さらに深夜でも休日でもお構いなしに電話がかかってきて、「なぜ電話に出ない?お前のところとはいつでも契約を切ってもいいんだぞ」と言われた

こういった問題は、会社が、業務の範囲としてどこまで従業員に対応を求めるかということに尽きるでしょう。

そして、ここまではやるべき、これ以上はやらなくてよいという線引きは会社が明確にすべきです。「客商売だから、相手が望むことはできるだけやってくれ」という指示では、人によって差が出てしまいます。ここは、「それで契約を切られても、君のせいではない。会社が責任を持つから心配するな」と会社が堂々と言えるかにかかっています。理想論的な話ではあるものの、この問題は社外パワハラの問題にとどまらず、長時間労働、過労による精神疾患等のり患、最終的には会社の安全配慮義務の問題に発展する可能性があります。

取引上の問題もあるのでケースバイケースになるとは思いますが、取引関係を続ける場合でも、担当を変える、上司や役職者が対応する等の配慮・検討が必要になるでしょう。

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