「社外からの 社外への」×「セクハラ パワハラ」対応策
弁護士
岸田 鑑彦(杜若経営法律事務所)
2 社内か社外かの違い
セクハラについては、一般的に対価型セクハラ(職務上の地位を利用して性的な関係を強要し、それを拒否した人に対し不利益を負わせる行為)と環境型セクハラ(職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じるなど当該労働者が就業するうえで看過できない程度の支障が生じること)があります。
社外セクハラは対価型セクハラに当たりますが、その場合、「職務上の地位を利用」とはどのような場合をいうのか、拒否した場合の「不利益」はどのようなものが考えられるのかという点については、社内セクハラとは異なる視点で検討する必要があります。例えば、「職務上の地位を利用」は、「取引関係上の地位の利用」、「不利益」は「取引上の不利益」という形で置き換えることができるかもしれません。
パワハラについては、優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)、業務の適正な範囲を超えて、身体的もしくは精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害することがこれに当たるとされます。社外パワハラの場合、「優越的な地位に基づく」という点については、社内での優位性というよりも「取引上の優位性」に、「業務の適正な範囲」については、「商取引の適正な範囲を超えて」と置き換えて考える必要があるように思います。社内パワハラの場合には、実務上、業務の適正な範囲、すなわち適正な指導の範囲か否かが争点になることが多いですが、社外パワハラについては、商取引の適正な範囲を逸脱しているか否かというところで違法性を見ていくことになるかと思います。
いずれにしても、セクハラ、パワハラの定義は社内か社外かによって異なるため、社内セクハラ、社内パワハラの問題を、社外セクハラ、社外パワハラの問題にそのまま置き換えることは難しいという印象を受けます。
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