勤務時間限定正社員/勤務地限定正社員/職務限定正社員
タイプ別 限定正社員の制度設計
野口&パートナーズ法律事務所 弁護士 野口 大/弁護士 大浦 綾子
1. 限定正社員の種類
正社員、限定正社員というのはそもそも法律用語ではありません。一般的に正社員という場合、無期契約で(1年等期間が定まっていない)、残業に応じる義務があり、勤務地にも限定がなく(転勤に応じる義務がある)、職務にも限定がない社員のことを指します。それとの対比で、無期契約ではあるが、残業義務がない、所定労働時間が短い、転勤に応じる義務がない、または、特定の職務のみに従事していればよい社員のことを限定正社員といいます。厚生労働省はこれを「多様な正社員」と呼称していますが、本稿では「限定正社員」を用いて解説します。
限定正社員の種類(バリエーション)については特に規制はありませんし、呼び名も統一されているわけではありませんが、一般的に次のような種類があります。またその中から複数の種類を組み合わせることも自由です(例 短時間正社員でかつ勤務地限定)。企業のニーズに応じて制度設計することとなります。
(1)勤務時間限定正社員
育児、介護、家事、その他で一定時間までに帰宅しなければならないというニーズや、仕事以外の趣味やボランティア等にも時間を割きながら継続勤務したい等のニーズに対応するものです。
なお、病気治療等、労働時間短縮よりも労働日数の短縮のほうが勤務継続しやすいというニーズもあり、その場合は勤務日数限定正社員を検討することとなります。
ア 短時間正社員
所定労働時間が正社員に比べて短い正社員です。
(例 所定労働時間が6時間の正社員)
イ 残業免除等正社員
所定時間外労働・深夜労働を免除されたり、時間外労働の制限が認められたりする正社員です。
ウ 勤務日数限定正社員
所定労働日数が正社員に比べて少ない正社員です。
(例 週4日勤務の正社員)
(2)勤務地限定正社員
育児、介護、家事その他の理由で、勤務地を一定範囲に限定したいというニーズに対応するものです。
転勤の範囲に一定の制限を加えるものであり、それを国内のみとするか、関西関東等のブロック内とするか、特定都道府県内とするか、特定市町村内とするか、通勤可能な範囲とするか(何分程度を通勤可能と定義するかは自由ですが、1時間以内とか1時間30分以内とする例が多いです)、特定の複数事業場に限定するか、特定の事業場のみとするか等、無数のバリエーションがあります。
ア ブロック限定正社員
全国をブロックに分け、当該ブロック内の転勤のみに限定する正社員です。
(例 関東ブロックを東京・神奈川、埼玉、千葉、茨城、栃木、群馬と定義し、関東ブロックを越える異動を行わない、という制限を加える)
イ エリア限定正社員
(例 自宅から1時間30分以内で通勤可能なエリア内で勤務するものとし、それを超えるエリアへの異動を行わない、という制限を加える)
ウ 事業場限定正社員
(例 事業場の変更を伴う異動は行わない、という制限を加える)
(3)職務限定正社員
特定分野の専門的知識を活かして当該特定分野に関する仕事のみに従事したい等のニーズに対応するものです。また、非正規社員の正社員化を目的とする場合にも、職務を限定するほうがスムーズなことも多いでしょう。
職務の変更の範囲に一定の制限を加えるものであり、どの程度絞り込むかによって無数のバリエーションがあります。
ア 職務を一定範囲に限定
(例 経理業務の定常業務のみを行う)
イ 特定の職務に限定
(例 法人顧客を対象とした営業業務のみに従事する)(例 商品の販売業務に従事する)
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