在宅勤務制度に関する実態アンケート(労務行政研究所)
実施企業は36.4%。未実施でも検討・予定している企業が61.5%に達する。
運用上の効果は「育児による離職リスク軽減」が54.9%で最多
1 在宅勤務制度の導入状況
在宅勤務制度の実施状況[図表1]
実施企業は36.4%。実施していない企業においても、検討・予定している企業が6割超
在宅勤務制度(以下、在宅勤務)の実施状況を聞いたところ、「実施している」企業が36.4%、「実施していない」企業が63.6%となった。実施していない企業が過半数を占める。ちなみに、調査の手法、調査対象は異なるものの、過去に実施した「人事労務諸制度の実施状況」調査での在宅勤務の導入率は04年1.9%、07年3.9%、10年4.5%、13年7.9%となっている。今回調査において「実施している」と回答した企業で「就業規則等に記載しており、会社のルールとして実施している」と回答した企業の割合は15.0%なので、在宅勤務は確実に増加しているといえる[図表1]。
「実施している」企業割合を規模別に見ると、1000人以上が50.0%、300~999人が31.4%、300人未満が26.1%となり、企業規模が大きいほど実施している割合が高い。
また、実施していない187社を母数として、その内訳を見ると、「導入・実施を検討・予定している」企業が61.5%に上った。なお、「実施していない企業」でも「導入・実施を検討・予定している」割合は、企業規模が大きいほどその割合が高い。働き方改革の動きに呼応して在宅勤務の導入機運が高まっているといえる。
在宅勤務導入のきっかけ、目的、導入時期等[図表2~5]
導入目的は「育児による離職リスク軽減」が77.4%で最多。導入年は、2011年と2016年以降が多い。導入予定のない企業の理由は、「労働時間管理」「セキュリティ」「業務の切り出し」への不安、難しさが6割前後
[1]在宅勤務導入のきっかけ
在宅勤務を実施している企業に対し、在宅勤務導入のきっかけを聞いたところ(複数回答)、106社から回答を得た。それによると、「部門の管理者などの判断」が43.4%と最も高く、次いで「経営トップの判断」の42.5%となっており、経営主導で導入したケースが多いことが分かる[図表2]。「その他」では、“働き方改革” に関連した回答が散見された。
[2]宅勤務導入の目的
同様に、在宅勤務実施企業に導入の目的を尋ねた(複数回答)[図表3]。「育児による離職リスク軽減」が77.4%と最も高く、次いで「介護による離職リスク軽減」65.1%、以下「通勤弱者(身障者、高齢者、妊娠・育児中の女性、けが等)への対応」45.3%、「優秀な人材の獲得」40.6%、「ゆとりや健康的な生活の支援による離職・休職防止」38.7%と続く。なお、後掲[図表29]では、在宅勤務の導入目的と実際の効果について対比しているので、ご覧ください。
[3]在宅勤務の導入時期
在宅勤務実施企業の導入時期をまとめたものが[図表4]である。2011年(14.0%)と2016年以降(24.6%)に導入した企業が多い。2011年については東日本大震災によるBCP(事業継続計画)が、2016年以降については働き方改革の機運が影響していると考えられる。
[4]在宅勤務を導入する予定がない企業の理由
在宅勤務を導入する予定のない68社に、その理由を複数回答で尋ねたところ、「労働時間の管理が難しい」が63.2%と最も高く、次いで「情報漏洩(ろうえい)などのセキュリティ面で不安がある」「在宅勤務する上での業務の切り出しが難しい」がともに57.4%と約6割となった[図表5]。
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