ヤフー株式会社:
四つのバリューで働き方のリズムを変える!
ヤフーの“爆速”経営を支える“ワイルド”な
新評価制度とは
人事本部 人事企画室 室長
湯川 高康さん
「うちの働き方のリズムは“爆速”です」と語るのは、ヤフー人事企画室室長の湯川高康さん。ヤフーでは2012年 10月、「社員の働き方のリズムをシフト」する新しい人事評価制度を導入しました。最も変化の激しい業界を生き抜くために、トップが掲げる「爆速」経営や 「現場の解放」を制度としてどう具現化し、仕組みに落とし込んでいくか。ベテランの湯川さんをして「人事の常識を超えた」といわしめた制度改革のねらいや 手ごたえ、構築・運用のポイントなどについて、じっくりお話をうかがいました。
- 湯川 高康さん
- ヤフー株式会社 人事本部 人事企画室 室長
(ゆかわ・たかやす)●2003年5月、ヤフー株式会社に入社。採用担当(新卒&中途)を経て、2005年4月に給与厚生チームのリーダーに。2008年7月に人事厚生室長に就任し、2012年4月より現職。人事制度の企画、運営、労務を担当。
「ヤフーバリュー」を実現するための新しい評価制度
新しい評価制度が導入されて半年が過ぎました。新制度には、2012年4月に「爆速」を旗印にして発足した現経営陣の考え方が、色濃く反映されているようですね。
今回の制度改革は確かに人事主導ではなく、経営陣と根本から議論した結果です。体制が刷新され、経営の方針も大きく変わりましたからね。当社が「爆速」を志向する背景には、パソコンからスマートデバイスへ、ITビジネスを取り巻く環境が劇的にシフトしているという現実があります。ただ、いくらトップがそう考えていても、現場で働いているわれわれ自身の意識がシフトしないと、会社は生き残れません。社長の宮坂がよく言うのですが、「現状維持は衰退。常に追い越し車線にいないと置いていかれてしまう」ということです。
そこで新体制における経営を推進するために、「ヤフーバリュー」を策定しました。「課題解決って、楽しい」「爆速って、楽しい」「フォーカスって、楽しい」「ワイルドって、楽しい」――これら四つのバリューは、ヤフーが目指す方針を定義したものであると同時に、社員一人ひとりにとっての行動規範であり、働き方に対する経営メッセージでもあるんです。これによって社員の働き方のリズムを変えていきたい。人事としては、そうした経営陣の思いをどう具現化し、仕組みに落とし込むかという視点から、あらゆる人事制度を抜本的に見直していきました。
新しい評価制度も、ヤフーバリューを実現する仕組みの一つというわけですか。
そのとおりです。簡単にいうとバリューを発揮したかどうか、つまり会社の目指す方向と合致する形で貢献したかどうかを新しく評価の基準としました。というのも、それまでの制度では、評価が給料に差をつけるための理由づけ、エクスキューズの意味合いが強くなっていたからです。評価にはそういう側面もありますが、第一は経営メッセージであり、本来は人材開発のために使われるべきなんです。社員の意識や働き方を変えて、結果に結び付けていくものとして機能しなければ意味がありません。そういう意味で、当社の従来の評価制度が長年の運用の中でやや形式化してきていたのは否定できません。
宮坂社長は就任前から「現場の解放」を強調されていました。個々の裁量に委ねるからこそ、バリューを示すことで全体としての方向性を共有したいというねらいもあるんでしょうか。
確かに現場への権限移譲は進んでいます。その結果、社員が各自の裁量で決断を下さなければならない場面も増えてきました。現場で判断に迷ったり、わからなかったりした場合、以前の当社なら何でもかんでも上司の指示を仰ぎ、上がいなければ「答えが出せません、決められません」となりがちだったんです。よくある大企業病の一種かもしれませんが、いまはヤフーバリューが社員の判断基準にもなっています。宮坂も「迷ったらワイルドなほうを選べ」とよく言いますからね。
2012年12月に東北でまた大きい地震があったとき、NHKが「急いで逃げてください!」と、いままでにない強い口調で非難を呼び掛けたことがありました。あのとき、ヤフーではそこまで思い切った判断ができなかったんです。現場の裁量でトップページに「このエリアの人はすぐ逃げてください」とメッセージを出すとか、すべての広告を止めて地震速報に切り替えるとか、急を要するからこそ、より「ワイルド」なアクションを「爆速」で起こすべきだったのですが……。貴重な教訓になりました。行動のレベルにはまだ十分に落ちてきていませんが、それでもバリューを記したカードを全社員に配布し、携帯させるなどして啓発した結果、理解や意識のレベルではかなり浸透してきましたね。