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株式会社 三越伊勢丹ホールディングス:人事部が変われば、現場が変わる、店頭が変わる とことん“個”に向き合う三越伊勢丹グループの人材戦略とは(前編)

株式会社 三越伊勢丹ホールディングス 執行役員 人事部長

中村 守孝さん

中村守孝さん 株式会社三越伊勢丹ホールディングス 執行役員人事部長

消費市場の回復が鈍く、百貨店各社の中には“脱・百貨店”を摸索する動きも見られます。そうしたなか、「三越」「伊勢丹」という強力なブランド力を活かし、百貨店のあるべき姿を追究する成長戦略で収益拡大を目指すのが三越伊勢丹グループです。同社人事部では、経営戦略部門としての役割を果たすため、2012年度から「三越伊勢丹グループで働く従業員が持てる力を最大限に引き出し、伸ばしていける体制づくり」をグループ人事ビジョンに掲げ、さまざまな人事改革に取り組んできました。顧客接点を担う店頭の「スタイリスト」を始め、従業員一人ひとりがやりがいを持ち、モチベーション高く働けるよう、年間約1000名のキャリア面談などを通じ、徹底して“個”と向き合っています。陣頭指揮を執る、同社執行役員・人事部長の中村守孝さんへのインタビュー前編では、人事部改革と人事改革を並行して進めることになった興味深いエピソードをうかがいました。

Profile
中村守孝さん
中村守孝さん
株式会社 三越伊勢丹ホールディングス 執行役員 人事部長

なかむら・もりたか●1984年慶應義塾大学法学部卒業、株式会社伊勢丹入社。1992年慶應義塾大学大学院経営管理研究科修士課程修了。その後、同社経営企画部、IT系グループ会社出向、営業政策部等を経て、2010年経営企画部長として三越、伊勢丹の事業会社統合を推進。統合後の組織、経営システムの構築等に従事。2011年株式会社三越伊勢丹取締役執行役員経営企画部長。2012年より株式会社三越伊勢丹ホールディングス執行役員人事部長(現職)として、人事制度改革、人材育成プログラムの構築等に取り組んでいる。

旧来の業界の価値観を覆し「スタイリスト」を尊重する理由

三越伊勢丹グループでは「高収益で成長し続ける世界随一の小売サービス業グループになる」というグループビジョンを実現するために、「販売力」をあらためて事業運営の要と位置づけ、現場のスタイリスト(販売員)の支援・育成に力を入れています。

何といっても百貨店は小売業ですから、要は販売力。それを店頭の最前線で支えるスタイリストこそが主役であるべきだと、われわれは考えています。そもそも販売員を「スタイリスト」と呼んでいること自体、そうした理念の表れなんですね。当社では最も重要な業務である販売に携わる従業員を大切にし、いままで以上に尊重していくために、2012年度から従来の販売員の呼び方を「スタイリスト」に変えました。この表現には、「お客さまの豊かさ、お客さまの魅力、お客さまの上質、お客さまの感性、お客さまの新しさ、さらにはお客さまの未来をスタイリングしていく」という本質的かつ革新的なミッションが込められています。

百貨店業界のヒエラルキーでいうと、キャリアの“花形”はバイヤー(仕入れ担当)だとよく言われますが。

だからこそ、われわれは変えたんです。一見華やかなバイヤーに偏りがちだった旧来の業界のヒエラルキーや価値基準を正したかった。そこには、現トップの大西(代表取締役社長)の思いが強く働いています。「入社以来一番きつかったのは最初の5年間の販売だった」と、大西は社長就任以来繰り返し言い続けています。そうしたトップ自身の経験が、お買場(売場)を支えるスタイリストをより評価し、大切にしていこうという当社の経営理念の原点にあるわけです。

もちろん、お題目だけじゃありません。実際の業務そのものも見直し、従来バイヤーに寄り過ぎていた部分をもう一度店頭サイドに引き戻すイメージで、スタイリストを束ねるセールスマネジャー(SM)の権限とそれに伴う責任や業務範囲を拡げました。SMが、店頭でお客さまと直に触れあうスタイリストを通じてニーズを吸い上げ、それに基づいて品ぞろえをバイヤーに要望し、商品のディスプレイから販売プロモーションの企画・運営まで取り仕切る。お買場づくりの業務フローを、SMを起点として再構築したのです。人事に限らず、どんな改革でもそうですが、根本課題を抽出し、論理的に戦略を立てて、実際のビジネスプロセスから評価の仕組みまで変えていかないと。いくら店頭で販売に携わる人が大切だ、主役だといっても、かけ声だけでは何も変わりません。

さまざまな人事改革に取り組んでこられた中村さんですが、12年4月に人事部長に就任されるまでは、経営企画や営業企画の経験が長く、人事畑とは無縁だったそうですね。

ええ。まさか自分が人事部長になるなんて、夢にも思いませんでした。ただ、外から人事部を見ていて思うところはありました。その問題意識はおそらく、トップが抱いていたものと、かなりの部分で共通していたのでしょう。着任にあたって、大西には「従来の発想にとらわれず、人事の抜本的改革をすすめてほしい」と言われましたから。

その問題意識とは何でしょうか。

当たり前の話なのですが、人事部自体がきちんとしていなければ、いい人事はできません。つまり人事部そのものに課題があるのではないか、という問題意識です。外からその課題の具体的な中身までは見えませんでしたが、やはり人事部のパフォーマンスが少し低いなとは思っていました。たとえば新しい発想が少なく、業務的、管理的に仕事をこなしており、結果として現場や従業員へのサービス提供という人事部本来の役割が果たせていないなと。そんな印象があって、実際に来てみたら、はたして課題が見つかったというわけです。

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この記事ジャンル 能力開発関連制度

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【用語解説 人事辞典】
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プライミング効果
マクレランドの欲求理論
マタイ効果
内発的動機づけ
静かな退職(Quiet Quitting)
心理的資本(Psychological Capital)
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