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学校法人立教学院:
立教学院が取り組む、学校職員の能力開発を促す
「リーダーシップ研修」とは(前編)

人事部人事課 

原 正福さん

グローバル社会にふさわしい人材の育成など、学校教育に求められるものが大きく変化しています。また、少子化の進展や若者気質の変化などの影響もあり、学校経営に変革の波が押し寄せています。大学においては「大学改革」が叫ばれて久しく、大学に関する記事が新聞紙上をにぎわすことも珍しくなくなってきました。このような状況下、学校法人立教学院では学校経営を支える職員が自ら考え、行動し、成果を出していくことが重要であると考え、アクションラーニングを取り入れたリーダーシップ研修を導入するなど、学校職員の「能力開発」を改革していこうとしています。立教学院ではどのような人材が必要だと考え、具体的にはどのような職員研修を実施しているのでしょうか。人事部人事課で職員の採用・教育を担当されている原正福さんに、詳しいお話を伺いました。

Profile
原 正福さん
原 正福さん
学校法人立教学院 人事部人事課

はら・まさよし ●1976年生まれ。立教大学社会学部卒業後、1999年に住友銀行(現・三井住友銀行)入行。パソナキャレントを経て、2004年10月に学校法人立教学院へ入職。2012年5月まで、リサーチ・イニシアティブセンターに配属。科学研究費助成事業から産学連携・知的財産まで幅広く研究支援業務に従事する。2012年6月に人事部人事課に異動し、職員人事(主に採用・研修)を担当。

拠り所となるのは立教学院 建学の精神

 まず、立教学院の建学の理念についてお聞かせいただけますか。

立教学院は小学校から大学、大学院に至るまで、建学の精神に基づく一貫した連携教育を行う学校法人です。1874年(明治7年)に、アメリカ聖公会から派遣された宣教師チャニング・ムーア・ウイリアムズ主教によって設立され、今年(2015年)で創立141年を迎えます。創立当時の日本は、欧米先進諸国に早く追いつき、物質的な豊かさを手にすることが国民全体の目標となっていた時代でした。教育も“実利主義”な傾向が強く、知識や技術を物質的な繁栄と立身出世の道具とする風潮もありました。しかしウィリアムズ主教は、そのような時代の流れとは一線を画し、単に既知の知識を修得するのではなく、むしろ無限の未知なる世界に足を踏み入れていくことを目的とし、真理を追求する場として学校を位置づけたのです。その建学の精神が「PRO DEO ET PATRIA(神と国とのために)」。これを我々は「普遍なる真理を探究し」「私たちの世界、社会、隣人と具体的につながる」と解釈しています。そしてこれは、立教学院の一貫連携教育の二本柱である「テーマを持って真理を探究する力」「共に生きる力」ともつながっています。

教員・教師と児童・生徒・学生がいて、授業を行うという点では、学校はどこも同じです。では何に違いがあるのかと言うと、建学の精神によるところが大きいと思います。その精神に基づいて、どういう人材を育成していくのか。そのためには、どういうカリキュラムが必要で、どんなゴールを目指すのか、ということを常に意識しなければなりません。

 経営理念に基づいて事業を行うという点は、企業と全く同じですね。

原正福さん Photo

学校は特殊な組織だと思われがちですが、一つの事業法人として経営していくという点では、一般の企業と何ら変わりありません。ヒト・モノ・カネ・情報が経営資源である点も同じです。学校職員とはその中で、学校の経営・管理・運営をダイレクトに担当する存在です。

創立者ウイリアムズ主教を語るとき、「道を伝えて己を伝えず」という言葉がよく使われます。この言葉は、ウィリアムズ主教が、キリスト教の聖職者として清貧、謙虚で尊敬すべき教師であったことからきていますが、一方で、ウイリアムズ主教は、学校経営や教会運営における管理者・実務者としても傑出した力を持っていたとも言われています。そのウイリアムズ主教の生き方に職員の姿を重ねるのはおこがましいのかもしれませんが、職員も「道を伝えて己を伝えず」という姿勢で職務に当たることが大切だと考えています。学校という道を作り、児童・生徒・学生の成長を支援することに尽力する。それが立教の職員として重要な役割です。

 その役割を果たすために、立教学院の職員はどのような人材であるべきだと定義していますか。

本学院では求められる職員像を、「建学の精神のもと、チームワークを大切に、自ら考え動ける職員」としています。これは「教育機関に勤める者としての自覚を持つと共に、建学の精神に対する理解に努め、それらに基づく姿勢・行動をとることができる」「現状に満足せずに、業務や組織のあり方を改善・改革していくために創造的に提案をし、実行できる」「組織の目標に向かって、チームワークを重視することができる」「幅広い視野と高い専門性を持つことができる」の四つのポイントからなっています。また、本学院で学ぶ児童や学生が、キリスト教に基づく人間教育の下、「テーマを持って真理を探求する力」「共に生きる力」を育めるように導いていくことも職員が担う大きな使命の一つです。

 学校の職員だからこそ求められる、スキルや姿勢などはありますか。

「これがなければ職員になれない」というスキルはありませんが、強いて言えば、建学の精神を理解し、共感し、それに基づく価値判断や行動をとることができる「意識性・規律性・責任性」。現状や前例を適確に踏まえつつも、それだけに固執しない柔軟性を持ち、全体的な視野から業務を迅速かつ創造的に変革していくことができる「柔軟性・創造性・実行力」。人間関係を円滑に保ちながら、チームおよび組織の発展に貢献することができる「協調性・コミュニケーション能力」。困難な状況における精神的・肉体的負荷に適応して、常に安定的に業務目標の達成に向かうことができる「積極性・ストレス耐性」が大事だと思います。しかし、これらのスキルは一般の企業が社員に求めているものと変わらないでしょう。一事業法人であれば、学校でも企業でも、働く人に求められる資質・スキルに大きな差はないはずです。

 原さんご自身は、どのような経緯で立教学院の職員になられたのですか。

大学卒業後は銀行と人材サービス会社に勤めましたが、教育に携わる仕事をしたいと考えるようになり、縁あって母校である立教学院の職員になりました。

原正福さん Photo

子供の頃から学校という場が好きでした。一方で学校の組織については、学生時代の経験と銀行勤務時代に学校法人を担当した経験から「何か変化が必要なのではないか」という漠然とした疑問を持っていました。学生の成長を何らかの形でサポートするという点で教育に携われること、また、学校という組織が抱える問題を解決してみたいという興味が、学校法人の職員という仕事にたどりついた理由です。

私は在学中、バレーボール部に所属し、学生時代はバレーボール一色の生活でした。その経験がなければ今はありません。中でも、仲間たちと試合に勝つためにチームを作り上げていくことの魅力や面白さを味わったことは、最も印象深い経験です。その経験から、学校という組織を作り上げていくことに貢献できるなら、それはとても魅力な仕事だと思いました。しかもそれが母校なら最高だと。

入職後7年半くらいは、リサーチ・イニシアティブセンターという部署で、研究支援、産学連携、知的財産などを扱う仕事を担当しました。その後、人事部に異動して、もうすぐ3年になります。当初思い描いていた、学生を直接支援する仕事ではなかったのですが、研究者(教員)を支援するという仕事をする中で、大学の組織・経営に関する仕組みを知ることができました。ここでの仕事が、また違った視点で、職員という立場での仕事の魅力や面白さを見つけることにもつながりました。

また、リサーチ・イニシアティブセンターでは、銀行での経験が役に立ちました。大学の教員は中小企業の社長のような存在で、いわば一国一城の主です。その先生たちの専門領域である研究の支援をするという仕事の中で、銀行時代のように1対1で膝を詰めて話し合うこともありました。うまくいくことばかりではなかったですが、改めて、人としっかりコミュニケーションをとって当面の問題・課題へと向き合い、相互の理解と信頼を深めていくことが大事だと思いました。


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