「シン・人事の大研究」調査レポート【第9回】
30代前半までの人事パーソンが体験する、
キャリアに関する「モヤモヤ」とは?
人事パーソンは何を学び、どんなキャリアを描いているのか。自身をどう評価し、どのように変わろうとしているのか――。立教大学 田中聡氏・中原淳氏と『日本の人事部』編集部による「シン・人事の大研究」の調査結果を基に、人事パーソンの実態を明らかにしていきます。
「幸福活躍度」から見る人事の幸せなキャリアとは
本連載の第4回でも取り上げた通り、人事パーソンの42.1%が自身のキャリアに不安を感じていました。では、人事を生涯の仕事として幸せなキャリアを送るには、どうすればよいのでしょうか。
まず、幸せなキャリアを測定する指標として「幸福活躍度得点」をつくりました。
ここからは仕事での客観的な成果の度合いと主観的な幸福感を掛け合わせた、この「幸福活躍度」を指標に用いて、人事パーソンの幸福活躍度の実態とその要因を探っていきます。
人事の幸福活躍度を年齢ごとに見ていくと、新人で入って30代前半くらいまでぐっと下がっていきます。その後、40代半ばにかけて少しずつ上がり、そこから60歳に向かって緩やかにまた下がっていきます。そこでここからは、人事キャリアについて、34歳までの若手を「モヤモヤ期」、35歳~44歳までの中堅を「ウキウキ期」、45歳以降のベテランを「ドンヨリ期」と3区分して話を進めていくことにします。
若手人事パーソンは「モヤモヤ期」をいかに乗り越えればいいのか
若手期には幸福活躍度が少しずつ下降しています。人事パーソンの“幸せな活躍”に最も影響する満足度指標について聞いたところ、もっとも多かったのは「仕事内容」でした。
では、どんな仕事が若手人事パーソンの“幸せな活躍”につながるのでしょうか。調査によれば「従業員の成長をサポートできる仕事」「新しいことにチャレンジできる仕事」はプラスに働きますが、「専門性が身に付かない仕事」はマイナスの影響を与えています。「専門性への意識」は、若手ならではの傾向であるといえそうです。
次に、若手期の職場以外での学習行動で、幸福な活躍につながっている要因を調べました。すると「最新情報の収集」や「専門書の読書」があり、アウトプットではなくインプットが重要であることがわかりました。
成長を実感している内容について聞いたところ、「人・組織に関する学術的な理解が深まった」「経営層の視点に立って考えるようになった」という要素がプラスに働いています。特に若手期においては、理論に基づいて人や組織に対する自分なりの見立てを持つことが、その先の長いキャリアを考えるうえで重要なカギになると思われます。若手期は「持論より理論」といえるでしょう。
若手人事パーソンが「モヤモヤ期」を乗り越えるためには、以下がポイントといえそうです。
若手人事パーソンが「モヤモヤ期」を乗り越えるためのポイント
- 仕事がいかに「従業員の成長」につながっているかを考える
- 仕事の意義ややりがいを定期的に振り返る習慣を持つ
- とにかく膨大な量のインプットを行う
- 持論を形成する前にまず「理論」を学ぶ
第10回のレポートでは、「中堅人事パーソンの幸福活躍度」からキャリアについて考えます。次回もお楽しみに!
実施時期 | 2022年2月1日(火)~ 2月28日(月) |
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調査対象 | 企業で人事関連の仕事(人事、人材開発、組織開発など)に従事している方 ※「人事関連の仕事」とは、ご自身が所属する組織の「人と組織にまつわる業務全般」を指します。所属部署が本社人事部であるか事業部であるかは問いません。採用支援や人事コンサルティングなど、人事担当者に対してサービスを提供する企業に従事されている方は該当しません。 |
調査方法 | Webでのアンケート |
回答者数 | 1,514名 |
全国の人事パーソンを対象に行った大規模調査の結果から、人事パーソンの実状を明らかにしていきます。