『労政時報』調査記事(2009/4/13掲載)
私傷病欠勤・休職制度の最新実態
──欠勤・休職期間は勤続10年で約2年
労政時報 業務上の傷病とは異なり、私傷病については法的な雇用保障はなく、健康保険法による傷病手当金の給付が規定されているだけです。とはいえ、社員が万が一私傷病で長期にわたる休みを余儀なくされても安心して療養できるよう、就業規則等において雇用や生活の保障を整備しておくことは重要です。本記事では、労務行政研究所が2007年9~11月にかけて実施した「私傷病欠勤・休職制度に関する実態調査」の中から、設定状況や欠勤・休職期間、雇用保障期間などを中心に取り上げました(同調査は、前回2001年から6年ぶりに行ったものです)。
※『労政時報』は1930年に創刊。70余年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
インデックス
欠勤・休職期間の設定状況
欠勤は84%、休職は98%とほとんどが設定

社員が私傷病により休む場合、一般的には本人が保有する年休や失効年休を行使した後、一定の欠勤期間を経て休職期間に入るケースが多くなっています。私傷病による欠勤・休職については、労基法上特に定めがあるわけではないので、各社の就業規則の取り決めによるところとなっています。そして、欠勤と休職を通じた期間が、いわゆる“雇用保障期間”や“身分保障期間”といわれるものです(以下、ここでは「雇用保障期間」という)。

私傷病を対象にした欠勤・休職の期間については欠勤で83.9%、休職で98.3%とほとんどの企業が設定しています。両者の設定関係をみると、「欠勤期間と休職期間の両方設定」が82.8%と8割を超え主流であり、「欠勤期間のみ設定」は1.1%、「休職期間のみ設定」は15.6%となっています。なお、「いずれも設定なし」が0.6%(180社中1社)だけみられましたが、この企業では私傷病による欠勤・休職を認めないというわけではなく、“医師の診断書等をみて個別に判断している”とのことでした。

いずれにしても、私傷病による欠勤・休職については、多くの企業が期間を設定していることが明らかです。

ちなみに、前回2001年の調査では、欠勤期間については77.7%が、休職期間については94.0%が設定していました。調査の回答企業は異なるものの、欠勤・休職とも設定企業は増えていることがうかがえます。

図表1 私傷病による欠勤・休職期間の設定状況
図表1 私傷病による欠勤・休職期間の設定状況

[注] 欠勤期間と休職期間の設定関係をみると、「欠勤期間と休職期間の両方設定」が82.8%、「欠勤期間のみ設定」が1.1%、「休職期間のみ設定」が15.6%、「いずれも設定なし」が0.6%であった。

欠勤・休職期間の決め方
欠勤では“一律”、休職では“勤続年数別”が多い

欠勤、休職期間をどのように決めているのかみてみましょう。

欠勤期間の場合は、「勤続年数、疾病の種類を問わず一律に定める」が67.5%と3社に2社を占め主流で、次に多いのが「勤続年数別に定める」の27.8%です。「疾病の種類別に定める」(2.0%)や「勤続年数と疾病の種類の両面から定める」(2.6%)は、いずれもごくわずかにとどまりました。

規模別にみると、“一律に定める”は300人以上では6割超であるのに対し、300人未満では87.1%と顕著に多くなっています。300人以上ではその分、“勤続年数別”が3割を超えています。

一方、休職期間については、欠勤期間で主流であった“一律に定める”は14.7%と格段に少なく、代わりに「勤続年数別に定める」が50.8%と半数を占めています。また、「勤続年数と疾病の種類の両面から定める」(26.0%)も4社に1社に上り、欠勤と休職では期間の決め方の傾向が異なっていることが分かります。

一般的に、欠勤期間よりも休職期間のほうが長く設定される傾向にあり、また、疾病の種類によっては療養期間が長くなったりもするため、休職期間については、一律設定ではなく勤続年数や疾病の種類といった区分を設けるところが多いものといえます。

ちなみに、「勤続年数と疾病の種類の両面から定める」には、“一般疾病は勤続年数別に定め、結核は一律に定める”などのケースも含めています。

欠勤と休職の両方に回答のあった企業についてみると(「その他」を除く)、「欠勤は一律、休職は勤続・疾病等で区分」が56.9%と過半数を占めました。次に多いのが「欠勤・休職とも勤続・疾病等で区分」の28.5%でした。

図表2 欠勤・休職期間の決め方
図表2 欠勤・休職期間の決め方

[注]
1.「勤続年数と疾病の種類の両面から定める」には、“一般疾病は勤続年数別に定め、結核は一律に定める” などのケースを含む。
2.欠勤・休職の両方に回答のあった(「その他」を除く)144社をみると、「欠勤・休職とも一律に設定」が 10.4%、 「欠勤は一律、休職は勤続・疾病等で区分」が56.9%、「欠勤は勤続・疾病等で区分、休職は一律」 が4.2%、「欠勤・休職とも勤続・疾病等で区分」が28.5%であった

勤続年数別にみた欠勤期間
平均は、勤続10・20年で5カ月台

一般疾病と結核の場合の欠勤期間を、勤続1・5・10・20年の4ポイントについて集計しました。なお、勤続年数や疾病の種類にかかわらず“一律に設定”している場合は、すべて同じ期間として計上しました。

平均は、一般疾病の勤続1年で4.1カ月、同5年4.8カ月、同10年5.4カ月、同20年5.6カ月でした。勤続年数とともに欠勤期間も長くなっていますが、勤続1年と同20年の差はわずか1.5カ月であり、それほど大きなものとはいえません。欠勤期間については、もともと“一律に設定”している企業が多いため、勤続年数による格差は生じにくいものといえます。最多頻値はいずれの勤続年数でも「3カ月」で、次いで「6カ月」が多く、この2者で過半数を占めています。

一方、結核の場合については、平均で4.4~5.9カ月と一般疾病に比べやや長くなっています。一般疾病と同様、勤続年数による格差は大きくなく、分布はこちらも「3カ月」と「6カ月」の2者に過半数が集中しています。

勤続年数別にみた休職期間
平均は、一般疾病の勤続10年で約20カ月

休職期間についても、勤続1・5・10・20年の4ポイントについて集計しました。欠勤期間と同様、“一律に設定”の場合はすべて同じ期間として計上しました。

[図表2]でみたように、休職期間については欠勤期間とは異なり勤続要件を加味するケースが多くなっています。一般疾病における平均は、勤続1年で12.6カ月と約1年に達し、同5年で17.3カ月、同10年で20.3カ月、同20年で21.6カ月となりました。勤続1年と同20年とでは9カ月の差が生じています。また、勤続1年を100とすると、同5年137、同10年161、同20年171となり、格差が顕著です。

分布状況をみると、勤続1年では「6カ月」が26.3%と最も多く、6~12カ月が過半数を占めています。これに対し、勤続5年では12~18カ月が約半数を占め、同10・20年では「24カ月」が3割弱で最も多く、24カ月以上が半数前後を占めています。勤続年数が長くなるとともに、長期間のほうに分布はシフトしています。

[図表2]では、疾病の種類を加味して休職期間を設定する企業も3割程度あることから、結核の場合の期間も集計しました。平均は15.7~24.5カ月と一般疾病に比べて3カ月程度長く、分布もより長期間のほうにシフトしていることがみてとれます。

図表3 勤続年数別にみた欠勤・休職期間(一般疾病の場合)
図表3 勤続年数別にみた欠勤・休職期間(一般疾病の場合)
欠勤・休職(雇用保障)期間
勤続5年以上では20カ月台の水準

欠勤と休職を合わせた雇用保障期間の平均は、一般疾病の場合、勤続1年で15.9カ月、同5年で21.2カ月、同10年で24.8カ月、同20年で26.2カ月となっています。勤続1年を100とすると、同5年は133、同10年は156、同20年は165となります。

分布をみると、勤続1年では「12カ月」「13~17カ月」「18カ月」がそれぞれ1割超で、この3者に全体の約38%が分布しています。勤続年数が長くなると、分布も長期間のほうにシフトし、勤続10・20年では24カ月以上が6割以上を占めています。

注)
* ここでは、労務行政研究所が2007年9月13日から11月1日にかけて、全国証券市場の上場企業(新興市場の上場企業も含む)3827社と、上場企業に匹敵する非上場企業(資本金5億円以上かつ従業員500人以上)349社の合計4176社(ただし、持株会社の場合は、主要子会社を対象としたところもある)を対象として(回答があったのは180社)行った調査をもとに、『日本の人事部』編集部が一部をピックアップし記事を作成しました。調査は「私傷病欠勤・休職制度の最新実態」と題されたもので、詳細は『労政時報 第3721号』(2008年3月14日発行)に掲載されています。

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