「電話での転職相談」増加中
「非対面」は効率的? 伝わりづらい「キャラクター」
求職者一人ひとりの職務経歴や、転職にあたっての希望・条件を聞く「転職相談」。人材紹介会社と転職希望者が接点を持つ機会であり、転職を成功させるために欠かせない意思共有の場でもある。ところが、その転職相談に、少しずつ変化が見えはじめている。「仕事が忙しく、面談の時間を取れない」「できれば電話などで済ませてほしい」といった声が増えているのだ。多くの紹介会社では、こうした希望を受け、電話などでの転職相談を行っている。しかし、転職希望者との対面の場を設けないことで、問題が生じることもある。
電話では、変わった印象はなかったのだが……
「昨日のIさんのご面接は、いかでしたか」
ある企業の採用担当者に、前日面接を行ったIさんの合否を尋ねた。結果は見送りとのこと。残念だがこればかりはどうしようもない。意外だったのはその後に続けられた採用担当からの一言だった。
「あの方、ちょっと変わってますよね……」
「それは、何か失礼があったということでしょうか」
詳しく聞いてみると、訪問の際のIさんの様子が、一般的な社会人の常識からかけ離れていたという。
「面接に遅刻してきたのに謝罪もしないし、シャツはシワシワ、髪もぼさぼさで、身だしなみにも問題があります。それに、面接中に携帯が何度も鳴っているのに、電源も切らずにそのまま話している。営業の即戦力として期待しているんですから、さすがに難しいですよ。Iさんにはお会いになっているんですよね? 御社では何も感じなかったんですか」
そう言われて私は言葉に詰まってしまった。Iさんとは、一度も直接会っていなかったからだ。
かつて人材紹介といえば、転職相談で必ず人材と「面談」するのがあたりまえだった。忙しくて転職相談の時間が取れないという場合でも、勤務先の近くまでこちらから出向いて外部面談を行ったものである。ところが、近年は「その時間でさえもったいない、電話相談で仕事を紹介してもらえないか」という転職希望者が増えてきているのだ。
これは人材紹介業界全体に共通する傾向らしい。電話相談の比率は年々上昇しているという。さらに、若年層ではネットのアプリを使った「チャット」で相談を済ませたいという要望も増えていると聞く。実際に、そうしたチャットによる転職相談ができることを売りにしている紹介会社もあるほどだ。
Iさんも、電話だけで転職相談を行った人材だった。電話では特に変わった印象はなかったので、キャリアなどをもとに企業へ推薦したのだが、どうもそれが裏目に出てしまったようだった。
こうした事態は想定されることでもある。そのため、私は電話だけで相談を行った人材の面接の際には、できるだけ同行し、必要に応じてフォローすることにしていた。ただ、Iさんに限っては、今回たまたまスケジュールが合わなかったのだ。企業の担当者におわびをしながら、私は心の中でため息をついた。