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資格取得は一種のギャンブル
試用期間に利用される紹介予定派遣

合格すればキャリアになるが…
明暗が分かれる難関資格受験の結末


専門的な資格を取得すれば転職や就職に有利ではないだろうか…。誰もが一度は考えることだろう。特に1990年代以降、就職難が続いたため、資格取得を目指した人も多かったはずだ。たしかに、司法試験や公認会計士、弁理士などの試験は超難関だが、合格すれば専門家として高い評価が得られるのは間違いない。ただ、同時に合格しなかった場合のリスクも大きいのが現実である。

司法試験をめざして、気がつけば30歳目前…

「希望は企業の法務部門です。経験はありませんが、これまでずっと司法試験の勉強を続けてきましたので、法律知識にはかなり自信があります。この知識を活かして仕事ができればと思っていますので、年収などには特にこだわってはいません」

こう話してくれたIさんは29歳。アルバイトや学習塾の講師などをしながら、司法試験を目指していた。試験勉強最優先の生活だったので、一般の企業に勤務した経験はない。

「今回は一般企業への就職を目指されているわけですね」

「ええ、そうです。司法試験については、きっぱり断念しました。友人の中には、就職後も勉強して受け続けるという人もいますけど、片手間で受かるほど簡単なものではないと思ってますので…。今後はこれまで得た知識を企業の中で活かしたいと思っています」

資格の勉強のみに専念していたために、社会人としてのビジネスマナーをまったく学ぶ機会がなかったのだろう…という感じの人も時々いる。が、Iさんはアルバイトとはいえ働いた経験があるので、受け答えはしっかりしていた。

「就職活動の進み具合はいかがですか」

「なかなか難しいですね…。営業の仕事はいくらか紹介してもらえるのですが、希望している法務や総務の仕事は、やはり企業での実務経験がないと厳しいと言われます。ハローワークへの登録や自己応募も並行して行っていますが…」

やはり予想した通りであった。Iさんは人柄も良さそうだし、学歴も有名大学の法学部だ。第二新卒であれば興味を示す企業も多いのではないかと思ったのだが、さすがに29歳では第二新卒の範疇には入らないのだろう。

「法律事務所などは受けていますか。企業が難しいようでも事務所なら可能性があるかもしれません」

「はい。司法試験の受験仲間や先輩が多く働いているので、法律事務所は選択肢の一つとして考えたことはあります。ただ、勤務している人の話を聞くと、皆そこから脱出して企業で働きたいと思っている人が多いそうなんです。給与水準の問題もありますし…。せっかくの機会ですから、最初から一般企業で働けるように頑張ろうと思っています」

合格しなかった時のことも考えて計画するべき…

「そうですね、もともとは優秀な方が多いというのは分かるんですよ。ただ、現場サイドがどうしても即戦力を欲しいと言うものですから。試験勉強で得た法律の知識と企業内での法務とは、やはり違うらしいですね…」

Iさんのような資格試験の受験経験者を採用する企業はないだろうか。そう思って、ある大手メーカーの採用マネージャーに話を聞いたが、意見は否定的なものだった。

「25歳以下くらいなら可能性はあるでしょうね」

「つまり第二新卒なら…ということでしょうか」

「そうです。さすがに30歳前後の方に基本的なビジネスマナーなどから教える余裕がない、ということだと思います」

たしかにマネージャーの言うことも分かるのだった。その後、Iさんは社会人向けの資格取得のためのスクールで働き始めた。並行して、引き続き一般企業での法務か総務の仕事への転職も模索している。

「資格取得の勉強というのは、ギャンブル的な要素がありますね。うまく資格が取れればいいですが、取れなかった場合は本当に就職が難しくなります。まあ、最初から受からないつもりで受験勉強を始める人はいないので、それを理解しろというのは無理な気もしますけどね…」

資格取得は一種のギャンブル 試用期間に利用される紹介予定派遣

Iさんは率直な気持ちを話してくれた。

「特に難関な試験ほど、時間や費用、労力もかかりますからね。しかも合格しない人の方が多いわけですから、受かった時のことだけじゃなく、受からなかった時のことも考えて計画を立てるべきだと思いますよ。今は社会人向けコースの受講生の相談に乗ったりしていますから、そういう話をしています」

せっかくの資格取得がギャンブルになっては意味がない。

制度がスタートして7年目
紹介予定派遣はどのように機能しているのだろう


「紹介予定派遣」が解禁されたのは2000年12月。採用の一つの形態としてすっかり定着したこの制度だが、十分に使いこなしている企業はまだ少ないのではないだろうか。また、日本経済全体の好調が伝えられ、正社員でも人手不足感が強まっている現状では、紹介予定派遣を希望する人自体が減少しているという事実もある。特に、人材紹介会社に登録している人の場合、基本は正社員希望。なかなかマッチングが難しいのが実情だ。

きわめて少ない紹介予定派遣希望者

「なかなか候補者が出てきませんが、状況はいかがですか。社員での採用が難しいようなら、最初は紹介予定派遣でもいいのですが…」

ある商社の採用担当者であるT氏からの電話だった。事務の社員を募集しているものの、仕事内容がコンピュータの入力業務中心という単調なものであるせいか、応募したいという人材が現れない。T氏の声からは、やや焦りの色が感じられた。

「なかなかご紹介できなくてすいません。私どものような人材紹介会社に登録される方というのは、どうしても比較的長期間にわたって働きたいという方が多いんです。そのため、仕事内容についても、多少なりともキャリアになるような仕事でないと希望者が急に減ってしまうんですよ」

「そうなんでしょうね…」

とはいっても、T氏としては何とか採用を成功させなくてはならないのだろう。

「さっき言いました紹介予定派遣はどうでしょうか。御社はお取り扱いされていますか。希望者の方はいないでしょうか」

「実は、これが社員に輪をかけて難しいんです。まず私どもは派遣専門の会社ではないので、積極的に派遣を希望される方はいないんですよ。さらに最近は景況感、人手不足感が強まっていますので、ほとんどの方が基本的には正社員採用を希望されているのです。ですから、本当は紹介予定派遣で採用したいという企業にも、正社員採用に切り替えていただく…といったパターンが多いくらいなのです」

私は実情をご説明した。たしかに、働く人にとっても、派遣期間にその企業の実際の姿を見極められる…というのが紹介予定派遣のメリットではある。しかし、その特性を積極的に活用してインターン的に働いてみたいという方はほとんどいないのではないだろうか。むしろ、せっかくの好景気なのだから、少しでも条件のよい正社員で入社したいという希望を持っている方が大多数なのである。

「企業から見ると、正社員での採用の方が難しくて、派遣や紹介予定派遣の方が簡単というイメージがあったのですが、違うんですね…。分かりました。引き続き社員でのご紹介をなんとかお願いしますよ!」

紹介予定派遣なら円満に契約満了できますから…

このように、正社員が難しければ紹介予定派遣で…という考え方には無理があるのだが、逆に企業側が紹介予定派遣の制度を「試用期間がわり」にうまく利用しようとしているケースもあるようだ。

Y社の場合がまさにそうだった。

「…という募集なんですが、ただし最初の3ヵ月から6ヵ月は紹介予定派遣です。その後、社内審査を経て正社員となります」
「なるほど。これまでは、どれくらいの割合で社員になられているのでしょう」
「ほとんどですよ。というよりも、最初の面接の時に、社員としても採用できるかどうか、という視点で面接をしているのです。よほどの見込み違いがなければ、大体の方が社内審査には合格されていますよ」

資格取得は一種のギャンブル 試用期間に利用される紹介予定派遣

素直に聞けば、採用される側にとってもいい話のような気がする。紹介予定派遣で働いて、3ヵ月後に採用されない可能性が大きいのでは、働く人にとってはあまりにもリスキーだ。しかし、社員を想定しての面接まで行っているのであれば、単に試用期間でいいような気もするが…。

「これまでは大多数の人が社員採用されていますから、実績だけを見れば試用期間でいいかもしれません。ただ、どうしても勤務し始めてからでないと分からないミスマッチもたまにあるんですよ。そんな時、試用期間が終わったからといって普通は解雇できないものなんです。その点、紹介予定派遣なら契約満了ということで、お互いあまり傷つかずに円満にいきますからね」

これに似たケースとしては、試用期間中は契約社員にしておくというパターンがあるだろう。いずれにしても、細かいことは気にしないという方や、自分の実力に相当な自信を持っている人以外は、できれば避けたい…という形態ではないだろうか。

「たしかにそうなんですよ。私どもから見たら絶対大丈夫という人でも、もし派遣期間後に正社員になれなかったらどうしようか…という心配をしているようですね。ただ、企業側のリスク管理の一つの方法として、この制度を使わせてもらっている状況です」

Y社でも、本当は最初から正社員採用にした方が良い人材が採れる可能性が高まるのは分かっているのだという。何を重視するのかによって、採用の形態もどんどん変化していっているようだ。

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