優秀な人材ほど流出する リストラと人材紹介
先手を打って転職した方が有利 優秀な人材から先に流出するリストラ
大手電機メーカーの再生計画がしばしばニュースになっている。そんな時、話題に上るのが「リストラ」、つまり人員削減である。退職した人は当然、新しい職場を探すことになる。早期退職者を専門に扱うアウトプレースメントというサービスもあるが、一般の人材紹介会社もリストラとは無縁ではない。リストラが行われそうだと知ると、先手を打って自力で転職しようという人が増えるからだ。しかし、人材紹介会社への登録者が増えることは、一方でリストラの難しさを物語っている。
優秀な転職希望者が増える!
「○○社が海外投資ファンドの傘下に」「○○社の再生計画がまとまる」
新聞などでこうしたニュースが報じられると、人材紹介会社は「優秀な人材の登録が増えるのではないか」と期待する。リストラなどの可能性を考慮して、転職の準備をする人が増えるからだ。
よくお世話になっていた企業の経営者、S社長はこう言っていた。「今は会社の業績が悪くなるとすぐに人員削減を、という風潮がありますが、リストラというのは非常に難しいものだし、できればやらない方がいいと思います。確かに人件費を削ることで、会計上の業績は急速に改善されます。しかし、数字だけで考えていると一人ひとりの社員の顔が見えなくなる。本当はいちばん辞めてほしくない優秀な人材から去っていくのが、リストラなんです」
リストラというと「無駄を削る」というイメージがある。本来は業績貢献度の低い社員から順番に指名解雇するのがもっとも効率的なリストラだろう。しかし、対外的なイメージや社内の雰囲気などを考慮すると、そこまでドラスティックなリストラはできない。
「一般的には、年齢や職種を区切っての早期退職者募集でしょう。しかし、そうなるとまず応募してくるのは、他社でも通用する自信がある『仕事のできる社員』なんです。彼らは転職先に困りませんからね」
本来なら残さなければいけない、貴重なノウハウなどを持った社員が結果的に退職していくことになる。また、企業が「50代以上」などと年齢で早期退職の範囲を区切ったとしても、自力で転職する人材まで止めることはできない。30代、40代の第一線で活躍する人材も、将来のことを考えると、「リストラされた社員」というネガティブなイメージがつく前に、売り手市場の有利な転職活動を進めようとする。そうなると、企業の戦力は大幅にダウン。会社を立て直すどころか、さらなる業績悪化を招き、再度のリストラが必要……という負のスパイラルに飲み込まれてしまうこともある。
そういった中堅や若手が利用するのは、人材紹介会社など一般の転職支援サービス。そのため、転職希望者の動きを見ていると、それぞれの企業が置かれている状況もなんとなく見えてくることがある。
長く海外現地法人の幹部を任されていたS社長は意外なことも教えてくれた。「これは日本だけの現象ではありません。海外企業には大胆なリストラを行うイメージがあるかもしれませんが、実は海外でも、リストラを成功させるのはとても難しいんです」