「モラトリアム人材」と見られる? ブランクが長い転職者の採用事情
良い人材も多いのに…… すぐに就職が決まらない理由を勘ぐる企業……
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モラトリアムという企業側の見方
「転職活動だけしていたよりも、スキルアップに取り組んでいたほうが、企業側の印象もよくなるのではと思いまして」
Aさんはとてもまじめな人という印象なので、おそらくその言葉は本音なのだろう。しかし、キャリアコンサルタントの立場からすると、転職期間中に短期留学というのは、あまりおすすめできない選択だ。というのも、企業側が明言するわけではないのだが、仕事に直接関係しない留学や資格取得、大学院入学といった活動は、マイナスと受け取られる場合があるからだ。要は「モラトリアム体質では?」と思われてしまうのである。
Aさんの場合も、英会話力が高まったのは良いことだが、それが評価されるかは、キャリアを生かす上で「英語が必要かどうか」がカギになる。
「今後の転職先として、外資系企業も積極的に考えていらっしゃいますか」
ブランク期間の学びをなんとか転職に有利な材料にしていきたい。そう思って質問してみる。
「語学留学したとはいっても、もともとのレベルがあまり高くないので、チャレンジしてみたい気持ちもありますが、外資系企業で求められるレベルの英語力は持っていないと思います」
自信のなさそうなAさん。話をよく聞いてみると、いわゆるスペシャリスト的なキャリアがないことが転職活動で苦戦している理由だろうという思いから、なんとか企業受けする要素を増やしたい一心で語学力アップを思いついたのだそうだ。印象だけでなく、考え方もとてもまじめなAさんだが、今のところその思いは空回りしているといわざるを得ない。
Aさんのケースは、転職活動が思った以上に長期化したことによる、一種の「焦り」や「迷い」が生んだマイナス効果の事例といえるだろう。ただ、それをストレートに伝えてしまうとAさんとしてはおもしろくないに違いない。
「ブランクが多少あっても気にしない企業は必ずあります。ですから、ご経験を生かせる仕事を一緒に探していきましょう」
私は今後もしっかりサポートしていくことを約束した。ただ、転職活動が長引くと生活が厳しくなってしまい、比較的ハードルの低い派遣社員などでつなごうという人も出てくる。個人の経済的なことまでは紹介会社が口を出せないが、いったん派遣で働いてしまうと、再び正社員に戻るのが難しくなる場合もある。帰り際のAさんに私は声をかけた。
「あくまでも正社員にこだわっていきましょう」
数ヵ月のブランクを気にする企業が多い現状では、子育てを終えて現場復帰しようと考えた時の女性の苦労はどれほどのものだろうか。人材紹介でよく言われる「在職者有利」の考え方は、採用市場では良い人材を見極めにくくする原因の一つかもしれないと思ったのだった。
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