「モラトリアム人材」と見られる? ブランクが長い転職者の採用事情
良い人材も多いのに…… すぐに就職が決まらない理由を勘ぐる企業……
多くの候補者の応募書類を見なくてはならない採用業務。人材を絞り込むためには、書類選考である程度ふるい落とす必要がある。その際の重要なポイントの一つに「ブランク」が挙げられる。企業の採用担当者は、以前の会社を退職してどこにも属さない期間が長い人材が応募してきた場合、「優秀な人材ならすぐに次が決まるはずなのに、なかなか決まらないということは実力不足か、何か問題があるのでは……」と勘ぐることも少なくない。人材紹介の仕事をしていてもどかしい思いをするケースである。
無駄に過ごしていたと思われたくない
「この際、会社を辞めて転職活動に専念しようかと考えているのですが、どう思いますか」
転職相談では多い質問だ。こんな時は、一般論として「転職先が決まるまでは、できるだけ辞めない方がいいですよ」と伝えている。
「ブランクが3ヵ月以内ならほとんどの企業は問題にしないと思います。ただ、中途採用の場合は、求職者の方にマッチする仕事が常にあるとは限りません。十分なキャリアをお持ちの方でも転職までに半年、あるいはそれ以上の時間がかかってしまう場合もあります。そうなると、企業側は『なぜブランクがあるのか』と気にしはじめます。同じくらいの実力の人材と比較された場合、在職者の方がどうしても有利になってしまいます」
ブランクが長くなると、求職者も「こんなはずではなかったのに……」と焦りはじめる。
そうなると、そもそもの転職の目的が二の次になって、とにかくどこでもいいから再就職したいという気持ちが強くなってしまうことがある。経済的にじっくり探す余裕がなくなるケースも出てくる。
実際に、余裕がなくなって当初の転職目的が揺らいでくると面接でも不利になる。「なぜ転職しようと思われたのですか?」という定番の質問に対しても、つじつまのあった受け答えができなくなり、結果的に「軽い理由で転職を考える人だな」「あまり計画性のない人だな」と受け取られてしまう危険性が出てくるのだ。そうなると決まるものも決まらず、よけいに負のスパイラルにはまってしまうことになる。
そのため、労働環境が過酷で体を壊しそうなケースや、人間関係などで精神的にこれ以上続けられないと思われるケース以外は、できるだけ在職しながら転職活動をすることをおすすめしている。
しかし、私たちのところに転職相談に来た時には、すでに退職している人が少なくない。ブランクが長くなっている場合には、それを前提として紹介を進めることになる。その日相談を受けたAさんもそんな人材だった。
「実際に転職活動をしてみると、意外に時間がかかるものだと思いました。やはりブランクが長いと、時間を無駄に過ごしていたと見られて不利になるのではないかと不安になります」
そこでAさんは「この機会を利用して語学を勉強しよう」と考え、短期留学をしたのだという。