田中潤の「酒場学習論」【第19回】
芝大門「タイごはん泉州屋台」と、
テレワークと出社のハイブリッド生活
株式会社Jストリーム 管理本部 人事部長
田中 潤さん
古今東西、人は酒場で育てられてきました。上司に悩み事を相談した場末の酒場、仕事を振り返りつつ一人で呑んだあのカウンター。あなたにもそんな記憶がありませんか。「酒場学習論」は、そんな酒場と人事に関する学びをつなぎます。
多くの方が、テレワークと出社のハイブリッド生活を過ごされていることかと思います。所属する組織によって出社比率は異なるでしょうが、この生活がすでに1年を超えているのは皆に共通していることです。そして、この生活はまだしばらく続くだけでなく、多くの組織では戦略的にテレワークを取り入れ、コロナ禍とは関わりなく上手に活用し続けることになるかと思います。
私が働く企業でも、昨年の10月から恒久的なテレワーク制度を導入し、テレワークと出社を組み合わせた仕事が完全に日常化しています。私の場合、会議やショートミーティングがかなり多いので、テレワークは快適です。本格的なブレストを目的とする会議は別として、テレワークと会議の親和性はかなり良いからです。また、形式的な会議はテレワークになると自然と淘汰されるので、会議全体の生産性が高まります。
そうなると出社する意味が徐々になくなってくるので、出社する際は自分なりの楽しみを見出していく必要があります。そこで、今回は私が出社する際の8つのインセンティブをご紹介します。
テレワークはあまり好きじゃないなという方は、自分がテレワークをすることのインセンティブを言語化してみるとよいかもしれません。日々の生活というものは、自分のとらえ方次第で苦しくも楽しくもなるものです。
私が出社する際の8つのインセンティブ
(1)出社途中にみる東京タワーの雄姿から元気をもらう
本当に美しい姿です。ゴジラに襲われてもモスラに繭を作られても、毅然とそこに立ち続けている東京タワー。「東京は大丈夫だから」と声をかけてくれている気がします。
(2)スターバックスのラテ(ベンティサイズ)で仕事を始められる
家の近くにはスタバがないので、これも実に大きいです。
(3)通勤だけで7000歩の気持ちいい運動
通勤はいい運動です。往復の通勤だけで7000歩ほど歩けます。出社日が晴れていると、それだけで気分が良くなります。
(4)通勤時間に企画が進む
通勤時間は仕事の企画を組み立てる時間です。なぜかテレワークの日の朝に散歩をしてもできないのですが、通勤途中はいい感じで頭の中で思考が進むのです。そして、出社したら即、パソコンを開いて頭の中にできた企画をドキュメント化します。
(5)メンバーとのやりとりで、ちょっとした業務改善
メンバーとの何気ないやりとりから、ちょっとした業務改善が生まれます。ただ、この何気ないやりとりというのが、テレワークでは難しいところでもありますね。
(6)両面印刷と縮小印刷が使える
自宅のインクジェットプリンターだと印刷機能が足りず、コンビニにいくのも面倒。印刷する機会自体が大幅に減ったとはいえ、やっぱり両面印刷と縮小印刷は便利です。
(7)なじみの店で帰りに一人で静かに一杯
今は仕事を早く切り上げなければ、営業時間内に酒場へたどり着けません。そのため、出社日の残業は厳禁で、可能な限り早帰りを励行しています。
(8)最高のタイ料理のランチ
実は今回の本題がこれです。
この店がなければ出社回数がもっと減っているかもしれないというくらい本当に素敵なタイ料理屋、それが今回ご紹介する「タイごはん泉州屋台」です。
オープンエアの店舗は確かに屋台的。金曜日だけ夜も営業しており、素晴らしい酒場になります。しかし、昨年の初回の緊急事態宣言以降、夜営業は自粛されているので、今はランチタイムにお邪魔することしかできません。
タイの3輪自動車トゥクトゥクを都内で乗りこなしておられる、とにかくタイ好きのオーナーが日々大量に仕込む料理は私たちを元気づけてくれます。毎朝、フェイスブックで今日のメニューがリリースされるのですが、これが出勤時の楽しみです。
ランチのメニュー構成は、グリーンカレー・ガパオ・カオマンガイが定番であり、週替わりのカレー1品と日替わりメニュー2品からなります。3種盛りまでが可能なのですが、もはやメニューから3品を選ぶのではなく、6品のうちのどの3品を諦めるかの選択です。どれも食べたくなるのです。
コロナ禍以前から、ランチ時はテイクアウト客がメインで12時にもなるとテイクアウト客で長蛇の列ができます。イートイン客もテイクアウト客と一緒に列に並ぶのがまたいい感じです。
私が一番好きなメニューは、ムーバロー。タイ風豚の角煮とでもいう感じの料理です。月に一度程度しか登場しないレアなメニューなので、出社日にこれがあたると本当に幸せな気分になります。ムーバローが登場した日の3種盛りのオーダーは、(1)カオマンガイ、(2)ムーバロー、(3)ムーバロー。ムーバローがダブルで、実質2種盛りとなります。それくらい好きなんです。そして、この店が何といっても素晴らしいのは、ご飯が実に美味しいのです。
いつか感染症の心配が薄れ、夜営業が再開されることを願っています。それまではランチを楽しみ続けましょう。さあ、次の出社日が楽しみです。
今後、永遠に続くと思われるテレワークと出社のハイブリッド生活。それぞれに自分なりの楽しみをどうつくるか。大げさかもしれませんが、よりよい企業人生活を続けるためにも大切なことになってきているように感じます。出社日の楽しみ、テレワーク日の楽しみ、自分なりに言語化してみませんか。
- 田中 潤
株式会社Jストリーム 管理本部 人事部長
たなか・じゅん/1985年一橋大学社会学部出身。日清製粉株式会社で人事・営業の業務を経験した後、株式会社ぐるなびで約10年間人事責任者を務める。2019年7月から現職。『日本の人事部』にはサイト開設当初から登場。『日本の人事部』が主催するイベント「HRカンファレンス」や「HRコンソーシアム」への登壇、情報誌『日本の人事部LEADERS』への寄稿などを行っている。経営学習研究所(MALL)理事、慶応義塾大学キャリアラボ登録キャリアアドバイザー、キャリアカウンセリング協会gcdf養成講座トレーナー、キャリアデザイン学会代議員。にっぽんお好み焼き協会監事。
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