職場のモヤモヤ解決図鑑【第87回】
自社の福利厚生、内容をちゃんと理解できていますか?
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
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石井 直樹(いしい なおき)
人事労務や総務、経理の大ベテラン42歳。部長であり、吉田さんたちのよき理解者。
吉田さんは自社の福利厚生について、きちんと理解できていないと悩んでいます。そもそも福利厚生には、法律によって企業に義務付けられているものと、企業が独自に設定できるものがあります。福利厚生について基本的な情報を整理します。
福利厚生とは
福利厚生とは、「在職中の従業員の生活の安定」「健康維持増進」「老後の生活の安定」「自己啓発・余暇活動」「財産形成」など、従業員の生活安定や、従業員とその家族の福祉向上を目的として、毎月の給与とは別に企業が導入している制度のことをいいます。福利厚生は、法律で義務付けられた「法定福利厚生」と、企業が独自に設定する「法定外福利厚生」の二つに分けられます。
法定福利厚生の種類
法定福利厚生とは、各種法律に基づき、企業が整備することが義務付けられているものです。以下のものが該当します。
- 健康保険
- 厚生年金保険
- 介護保険
- 雇用保険
- 労災保険
- 子ども・子育て拠出金
法定外福利厚生の種類
法定外福利厚生は、法定福利厚生以外に、企業が独自に定めている制度のことです。代表的な法定外福利厚生には、住宅手当や通勤手当などがあります。また、近年は働き方が多様化しているため、従業員の働きやすさを支援する制度や、健康維持をサポートする制度を設ける企業も存在します。法定外福利厚生は多様化しており、会社独自のユニークな制度が登場しています。
住宅 | 住宅手当、社宅、寮、家賃補助など |
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子育てや介護 | ベビーシッター補助、法定を超える育児休業や介護休業・介護休業や時短制度の取り組みなど |
慶弔や災害 | 慶弔休暇、傷病休暇、災害見舞金、遺族年金、結婚祝い金など |
健康やヘルスケア | 人間ドックなど法定健康診断を上回るもの、メンタルヘルス相談、医薬品のあっせんなど |
自己啓発・余暇活動 | 資格取得支援・祝い金制度、運動施設、保養所、レクリエーション活動の補助、リフレッシュ休暇、ボランティア休暇など |
財産形成 | 財形貯蓄、社内預金、確定拠出年金の掛金の補助など |
その他、通勤 | 通勤手当やそのほか、短時間勤務やノー残業デー、テレワークなど勤務時間に柔軟に対応する制度も福利厚生の一環といえる |
従業員のキャリアを支援するための資格取得支援や自己啓発プログラムの提供、定年退職後のための医療保険や年金保険、企業内保育サービスなど、福利厚生制度を通じて、企業は人材を大切にしている姿勢をアピールすることができます。
福利厚生導入のメリット・デメリット
福利厚生を導入することで得られるメリット、また注意するべき点を解説します。
福利厚生を導入するメリット
福利厚生を導入することで、従業員満足度や従業員エンゲージメントの向上が図れるほか、企業の節税や生産性向上といったメリットが期待できます。
従業員満足度の向上
福利厚生は、従業員の生活の安定に役立つものです。多様な休暇制度や、育児・介護への支援、キャリア支援、住宅補助など、働きやすい職場環境の整備を通じて従業員の満足度を高めることは、離職率の低下につながります。
採用活動のアピールポイントになる
とりわけ法定外福利厚生制度を充実させることで、企業の従業員育成や職場環境に対する姿勢を示すことができます。たとえば、育休や育児世帯のサポートを充実させることは、若い世代の中長期的な就業意欲の向上につながります。ほかにも、キャリア支援を目的とした福利厚生制度を導入することで、人材育成に積極的な企業であることをアピールできます。
柔軟な勤務制度による働きやすい職場環境の整備、従業員の健康への取り組みなど、企業独自のさまざまな制度を設けることは、採用活動の場面でのアピールポイントになります。
節税効果がある
福利厚生にかかった費用は、福利厚生費として経費計上が可能です。企業収入から差し引かれて利益が減少するため、節税につながります。
健康経営につながる
健康経営とは、従業員の健康増進を経営課題と位置づけ、その実現に向けて戦略的に取り組むことをいいます。無料の健康診断枠の拡充、メンタルヘルス研修の実施、社内食堂の整備、フィットネスクラブとの連携などに取り組むことで、自社の健康経営に貢献できます。
福利厚生の導入で発生するデメリット
福利厚生を導入する際は、費用負担の増加や福利厚生への社員の利用率・満足度などに注意しなければいけません。
費用負担が増える
制度を充実させるほど、企業の費用負担が増加します。外部と連携して福利厚生制度を運用する場合、従業員規模に合わせた金額や利用頻度などをよく検討し、予算を組む必要があります。やみくもに制度を拡充するのではなく、経営方針や予算編成に合わせた定期的な見直しが必要です。
管理業務・手間が発生する
制度ごとに、従業員への情報周知や受付・申請・承認などの管理業務が発生します。制度が増えるごとに、担当者の業務負担が増える可能性があります。また、制度によっては従業員の個人情報を取り扱うため、情報漏えいやプライバシーの保護などのリスクに対応できる管理体制を構築する必要があります。
社員の利用率に差が出る可能性がある
福利厚生制度を設けても、利用率が低いものや、社員によって利用率に差が出るものがあります。まずは、従業員全員に情報がいきわたるよう、制度の内容や利用条件について積極的に発信することが大切です。また、制度の利用条件によって従業員に不利益が出ないように注意が必要です。
福利厚生を充実させる代行サービス
福利厚生代行サービスは、依頼を受けた業者が企業にかわって福利厚生サービスの整備・運用を担うものです。福利厚生業務をアウトソーシングすることで、管理の手間やコストを抑えながら制度の充実を図れることができます。
導入メリット
低コストで福利厚生の充実が図れる
自社で整備する場合、サービス内容の検討から管理運用まで、多くの負担が発生します。代行サービスでは、従業員一人あたりの月額金額で、多彩なメニューからプランを選べるため、自社のみで運用するよりも低コストで多様なプランにアクセスできます。
従業員の満足度が向上する
代行サービスでは多様なプランが用意されているため、従業員ごとの異なるニーズに応えやすくなります。
福利厚生代行の具体的なサービス
福利厚生代行サービスは、カフェテリアプランとパッケージサービスの二つに分けられます。
カフェテリアプラン | 企業ごとにカスタマイズされたメニューから、従業員がサービスを自由に利用できる制度です。企業は従業員にポイントを付与し、従業員はポイントの範囲内でサービスを選択します。すでにある福利厚生制度の充実を図りたいケースに適しています。 |
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パッケージサービス | 従業員一人あたりの定額料金を払うことで、パッケージで提供されているすべてのメニューを利用できる制度です。コストを抑えつつ、人数の多い規模の組織で幅広い福利厚生を導入したい企業に適しています。 |
【まとめ】
- 福利厚生には、法律で義務付けられた法定福利厚生と、企業が独自に設定する法定外福利厚生がある
- 福利厚生の充実は、従業員満足度向上、企業イメージ向上といったメリットがある
- 福利厚生の充実にあたり、代行サービスを利用することで低コストかつ満足度の高い制度導入が実現できる
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!