職場のモヤモヤ解決図鑑
【第14回】介護休暇や介護休業はどう使う?人事ができる介護と仕事の両立支援[前編を読む]
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。昔思い描いていた理想の社会人像より、ずいぶんあくせくしてない? 働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!
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吉田 りな(よしだ りな)
食品系の会社に勤める人事2年目の24才。主に経理・労務を担当。最近は担当を越えて人事の色々な仕事に興味が出てきた。仲間思いでたまに熱血!
親の介護が必要になるのではないかと悩んでいた、鈴木さん。その後、親が要介護の認定を受け、付き添いで平日休まなければいけないなど、仕事を続けられるか不安を隠せません。
こんなときに利用できるのが、介護休暇と介護休業です。二つの制度の特徴と違いや、介護と仕事の両立に役立つ制度についてみてみましょう。
介護休暇と介護休業って何が違う?
育児・介護休業法では、男女がともに働く権利および育児・介護の両立について、企業が設置するべき休業や休暇制度を定めています。介護休暇と介護休業は、親や近親者の介護が必要となった労働者が利用できる制度です。
【介護休暇と介護休業の違い】
- 介護休暇……半日から取得できるため、要介護の家族の通院など、短い休みが必要なときに使用します。
- 介護休業……仕事と介護の両立体制を整えるときなど、まとまった期間休みたいときに使います。
介護休暇 | 介護休業 | |
---|---|---|
取得可能日数 |
年5日まで (対象家族が2人以上の場合は10日まで)。取得単位は、1日または時間単位。 ※上記単位での取得が困難な業務に携わる従業員がいる場合、労使協定を締結すれば除外することができます。 |
対象家族1人につき3回まで、通算93日まで。 |
取得に関するルールや手続き | 従業員からの取得申し出の方法について定めはなく、口頭で受け付けてもかまいません。 社内書類の提出を求める場合も、事後提出でも差し支えないこととすることが必要です。 |
従業員は休業開始予定日の2週間前までに、書面などで申請するよう定められています。 従業員から介護休業の申し出を受けた際は、介護休業開始予定日と終了予定日などを、従業員に書面などで通知します。 ※就業規則によって、申請期限を2週間より短く設定するなど、従業員に有利な形にすることも可能です。 ※通知書などの法定様式はありません。厚生労働省による様式例はこちら。 |
賃金・給付金の有無 | 賃金の支払いについて特に定めはなく、企業にゆだねられています。 | 賃金の支払いについて特に定めはなく、企業にゆだねられています。 また、支給要件を満たした労働者には、休業開始時賃金月額の67%の介護休業給付金が支給されます。 |
利用対象者 |
対象家族を介護する労働者 (日々雇用を除く) 【労使協定を締結している場合に対象外となる労働者】
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対象家族を介護する労働者 (日々雇用を除く) ※パートやアルバイトでも、条件を満たせば申請が可能です。 【労使協定を締結している場合に対象外となる労働者】
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「介護休暇」は、介護で短い休みが必要なときに活用しよう
介護休暇とは、要介護状態にある家族の世話を行うために、休暇が取得できる制度です。介護サービスの手続き代行や、病院の付き添いなどで出勤できない日に利用できます。
介護休暇のポイント
- 1年に5日、対象家族が二人以上の場合は10日まで休暇を取得可能です。
- 半日単位での利用もできます。
- 介護関係が認められる対象家族は、配偶者 (事実婚を含む) 、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫となっています。
「介護休業」は、まとまった休みが必要なときに活用しよう
短期間ではなく、仕事と介護の両立のためにまとまった時間が必要な場合に利用できるのが、介護休業です。要介護状態の対象家族を介護するために、通算で93日を限度として休業が可能です。
介護休業のポイント
- 介護関係が認められる対象家族は、介護休暇の範囲と同様です。
- 対象家族一人につき、3回まで、合計で93日まで取得できます。分割して取得することも可能です。
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介護休業を申請できる社員は、対象家族を介護する労働者です。パートやアルバイトでも、以下の条件を満たせば申請が可能です。
- 入社1年以上であること
- 取得日から計算して、93日を経過する日からさらに6ヵ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと
そのほか育児・介護休業法で定められている制度
育児・介護休業法では、仕事との両立にむけて下記の制限や配慮が定められています。
- 所定労働時間短縮等の措置
- 所定外労働の制限
- 時間外労働の制限
- 深夜業の制限
- 転勤に対する配慮
- 不利益取り扱いの禁止
- 介護休暇等に関するハラスメント防止措置
「介護休業」「介護休暇」「所定外労働・時間外労働・深夜業の制限」は、就業規則に制度がなくても労働者からの申し出があれば利用可能です。(労使協定の定めにより、勤続年数1年未満など取得できないケースを除く)
こうした制度を充実させつつ、フレックスタイム制やリモートワークの充実により、柔軟な働き方ができる環境を整えることで、介護と仕事の両立をサポートできます。
介護と仕事の両立支援で企業が使える助成金や給付金
企業が介護と仕事の両立支援にむけた取り組みを行う際、利用できる助成金や給付金があります。
介護休業給付金制度
社員が介護休業を取得した場合、月額賃金の67%が支給される給付金制度です。申請は、介護休業終了日の翌日から2ヵ月以内に行います。
介護休業給付金制度のポイント
- 同じ介護対象者に対して、最長93日を限度として支給されます。介護休業と同様に、3回までの分割使用が可能です。
- 介護休業給付を受けられるのは、介護休業を開始した日から2年にさかのぼった期間、12ヵ月以上の被保険者期間がある社員です。
- 職場復帰を前提として、介護休業を取得する社員が対象です。
両立支援等助成金 介護離職防止支援コース
仕事と家庭の両立支援に取り組む中小企業の事業主を支援する制度です。「介護離職防止支援コース」が利用できます。
介護離職防止支援コース
以下の三つの状況で助成金が支給されます。- 介護休業取得時
- 職場復帰時
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介護両立支援制度の利用時
※2020年の時点では、新型コロナウイルス感染症への対応で家族介護のために特別な有休休暇を取得させた場合にも支給対象です。
※一人につき28.5万円が支給されます。各シーンで1年度5人までが限度です。
※支給にあたっては、企業が対象となる従業員と面談し、介護支援プランの作成や、復職時は休業前と同じ職務への復帰などが必要です。
【まとめ】
- 社員の短期間の休みには「介護休暇」、仕事と介護の両立体制を整える時期は「介護休業」を活用しよう
- 時短や残業・深夜勤務の制限など、介護をする社員が利用できる制度をチェックしよう
- 介護休業給付金制度や両立支援助成金を理解し、企業の負担を減らして社員を支援しよう
自分のことだけ集中したくても、そうはいかないのが社会人。働き方や人間関係に悩む皆さまに、問題解決のヒントをお送りします!