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人事マネジメント「解体新書」第九回
「高齢者活用」のススメ~年齢マネジメントの限界

少子高齢化が進み、若年労働力の確保が難しくなってきた。2007年から「団塊世代」の定年退職が本格化したこともあり、働く意欲と能力のある「高齢者」をいかに活用していくかは、企業の生き残りにとって大きなテーマとなってきている。と同時に、それは従来の「年齢」を基軸とした人事マネジメントの見直しを迫るものと言えるだろう。さらに10月からは「改正雇用対策法」が施行され、募集・採用時の「年齢制限」が禁止事項となった。今回は今後、高齢者活用を進めていくために人事部はどのような考え方に立ち、具体的な対応を行っていけばいいのか、そのポイントをまとめてみた。

解説:福田敦之(HRMプランナー/株式会社アール・ティー・エフ代表取締役)

10月1日「改正雇用対策法」が施行

募集・採用時の「年齢制限」禁止を義務付け

2007年10月1日、募集・採用時の「年齢制限」を禁じた「改正雇用対策法」が施行された。同法は中高年の雇用状況改善が狙いで、改正以前は「努力義務」にとどめていた年齢制限の禁止を企業に義務付けるとともに、例外的に年齢制限を認めるケースも大幅に削減したことが特徴である。例えば、「35歳以下」といった年齢制限付きの求人はNGとなり、これからは年齢不問の求人が増加することになる。ちなみに今回の改正は、安倍前首相が掲げた「再チャレンジ支援策」の一環であり、中高年層とフリーターの雇用促進を図ることに主眼を置いている。

この年齢不問の求人については、2001年に募集・採用時の年齢制限に努力義務が課せられた「雇用対策法」が施行されて以降、ハローワークでは年齢不問の求人割合は増加傾向にあるという。事実、厚生労働省の調べでは、2001年9月は全体の1.5%にしか過ぎなかった年齢不問の求人が、2007年5月には50.8%と過半数に達した。そして今回、労働者の募集・採用時に年齢制限を設けることができなくなったというわけである。

例えば、これまで認められてきた「体力」などを理由とした例外規定は、年齢制限付き求人の半分近くを占めていたが、そうした求人は10月以降、認められなくなった。例外的に今後も年齢制限が認められるのは、以下の6項目に限られる。

【例外的に年齢制限を行うことが認められる場合】
・定年年齢を上限として、当該上限年齢未満の労働者を期間のない定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
・労働基準法等法令の規定により年齢制限が設けられている場合
・長期勤続によるキャリア形成を図る観点から、若年者等を期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
・技能・ノウハウの継承の観点から、特定の職種において労働者数が相当程度少ない特定の年齢層に限定し、かつ、期間の定めのない労働契約の対象として募集・採用する場合
・芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請がある場合
・60歳以上の高年齢者又は特定の年齢層の雇用を促進する施策(国の施策を活用しようとする場合に限る。)の対象となる者に限定して募集・採用する場合
厚生労働省では、「これまでの中高年の就職は、年齢制限で門戸が閉ざされていた。今回の施行により、実際に中高年の採用につながるかどうかを見極めたい」としている。

70歳まで現役!~「高齢者活用」は時代の要請

さらに、団塊世代が定年退職を迎えた2007年以降、少子高齢化は新たな段階に入ってきた。そのため厚生労働省は働く意欲と能力のある「高齢者」が社会の支え手として活躍できる体制が必要と考え、「70歳まで働ける企業推進プロジェクト」を進めている。

考えてみれば現在、人口の5人に1人は65歳以上の高齢者である。それが30年後には3人に1人が高齢者となる時代がやってくる。迫りくる「超高齢化社会」に備え、働く意欲と能力のある人が働き続けることのできる仕組みを考えなくてはならないのは言うまでもない。

「高年齢者雇用安定法」が改正され、「定年」の年齢も65歳に引き上げられつつある。しかし、若年労働力が減少の一途をたどり、高齢者人口がよりいっそう増えるこの先のことを考えると、「生涯現役社会」への布石として、70歳まで働ける企業の推進を考えていこうとする厚生労働省の考えは基本的に正しい。ただ、そうはいっても、なかなかうまくいかないのが企業社会の「現実」である。

「高齢化」って何?

「若者が少なく、高齢者が多い」のは悪い社会か?

周知のように、日本は世界一の「長寿国」であり、出生率の低下ともあいまって(最近はやや持ち直しつつあるが)、ますます高齢者の多い国となっている。こうした現象は「少子高齢化問題」として大きく取り上げられ、労働市場や会社組織に大きな影響を与えている。というのも、高度成長期のように若年労働力が豊富にあり、それを安価で活用できることがこれまでの社会システムが成立する基本だったわけだが、少子高齢化はその大前提が崩れるがために大きな問題であり、これを少しでも阻止しなければならないというのが大方の言い分である。もちろん、そのロジックはよく分かる。

だが、ちょっと待ってほしい。ここで気になるのは、高齢化自体が「悪いこと」のように語られている点である。問題は、今までの仕組みが機能しなくなることであって、高齢者が増えることではないだろう。人間は誰もが年を取るし、長く生きたいと思っている。「若者が多く、高齢者が少ない」のが良い社会で、「若者が少なく、高齢者が多い」のは悪い社会ではないはずだ。むしろ、前者は高度成長期にみられたあくまで限定的な状態であり、この状態が長く続くほうが不思議なのである。実際、多くの先進国は程度の差こそあれ高齢化社会を迎えており、それを生き抜く「知恵」や「術」を持っている。

「年齢」を気にする日本社会

それに対して、日本は「年齢」というものを非常に気にする社会のように思う。その人が何歳なのかを知ることでその人の「世代」を知り、その世代が共有する「価値観」や「原体験」を知ることに異常なまで意味を見いだす。また、年齢と「スキル」が一致している職業世界では、年齢はその人の「能力」や「習熟度」を測る指標ともなっている。さらには、年齢から「賃金」を推し量ることも可能だ。そこではまさに「年功」が機能していたわけで、だからこそ企業は定期的に新卒一括採用を行ってきた。「年齢」を重視し、人材を採用する際には「年齢制限」を設け、履歴書に記入することを求めてきた。こうした「年齢マネジメント」の最たるものが「定年制」である。

「定年制」の弊害

ある一定の年齢となると、個人の能力やスキル、組織への貢献度に関わらず基本的に全員を退職させるシステム、それが定年制である。しかし、今ではその弊害が露呈してきている。何より定年制の存在、そして採用時の年齢制限によって、働く意欲も能力もある高齢者が活用されていないのだから。

もはや高齢者となったことを理由に、一律に労働者を市場から退出させるやり方は、合理的ではなくなってきている。急激な少子高齢化の進展により、前提となる潤沢な若年労働力が失われ、人口ピラミッドを形成することができなくなったことでもそれは明らか。今まさに「年齢マネジメント」を支える根幹が失われつつあるのだ。

このような状況下では、当面の労働力の確保が急務であろう。さらに、年金支給年齢が65歳へと引き上げられたことで、企業は雇用延長に取り組まざるをえなくなり、その結果、高齢者活用は必須の条件となってきたというわけである。

法施行により、改善が進んできた高齢者雇用だが…

実際問題として、「高年齢者雇用安定法」が施行されたことで、「(1)65歳までの定年の引上げ」「(2)継続雇用制度の導入」「(3)定年の定めの廃止」のうち、いずれかの措置を講じなければならなくなった。その影響もあり、現在では大半の大企業が「高年齢者雇用確保措置」を行い、中小企業でも9割を超える企業が実施している。そして、希望者全員が65歳まで働ける企業の割合も37.0%と、前年同期比で4.0ポイント増加した。

図1-1:雇用確保措置の実施状況(%)

全体

92.7

51~100人

90.2

101~300人

93.8

301~500人

97.7

501~1000人

98.3

1001人以上

98.8

図1-2:65歳以上まで希望者全員が働ける企業の割合(%)

 

定年の定めの廃止

65歳以上定年

希望者全員65歳以上継続雇用

合計

全体

1.9

8.6

26.5

37.0

中小企業(51~300人)

2.2

9.3

28.5

40.0

大企業(301人~)

0.6

4.6

14.8

20.0

出所:平成19年6月1日現在の高齢者の雇用状況(厚生労働省/2007年)

しかし、人材の有効活用という点では、見かけ上の数字と比べまだまだ不十分な点が少なくない。改善したといっても、多分に法律の存在が大きいからだろうし、実際のところ制度の導入を義務付けただけで、65歳まで必ず雇用しなければならないというわけではない。あくまで、雇用のための機会を作りなさいということに過ぎないのだ。

事実、55歳以上の失業率が依然として高いことからも、それは明らかである。いったいなぜ、企業は高齢者を前向きに活用できないのだろうか?

「高齢者活用」はなぜ進まないのか?

果たして、高齢者は「割高」か?

「年齢マネジメント」に関して言えば、これまでの日本の賃金体系というのは、若いときには比較的低い賃金だったものが、年齢を重ねるに従って徐々に上がっていくという、生活費の実情に合わせた年功型賃金体系を採用していた。その意味で高齢者に対する「賃金」を今やってもらっている「仕事」とのバランスで考えた場合に、高齢者の「今」の時点をみただけで「貢献度合いと賃金とが合っていない。だから高齢者は割高だ」と決め付けるのには無理がある。現在の高齢者の人たちも、彼らが若い頃には実際の企業業績に対する貢献より低い賃金に甘んじていたわけである。そして、その足りない部分を会社に「貯金」していたと。そう考えれば、今は割高と思える賃金についても、これまでの貯金を下ろしているという至極当然の結果と言える。

何より、今まで賃金と仕事とのバランスというものは、少なくとも1年単位で合致させる仕組みではなかった。過去に「債務」があり、将来的にそれを返済するといった賃金のあり方を忘れて、「今」の時点だけをみて賃金をどうこう言うのは、少し勝手過ぎるのかもしれない。

高齢者に対して、「仕事」が用意できない!

そして、高齢者を適材適所というか、適切に活用できていないのには、現実問題として彼らに相応しい「仕事」が用意できないということがある。これには2つの要因が考えられる。1つは「技術革新のスピード」が以前と比べて格段と速くなり、昔蓄えたスキルがすぐに陳腐化してしまっている点。ここで技術革新へとうまく適応していける人はいいけれど、そうでない人の場合には正直、処遇が難しい。

加えて、「日本国内に仕事がなくなっている」という現実がある。例えば、製造現場で働いている人たちを考えた場合、同じような製品を作るのであれば、賃金の安い中国などアジアの国々で作ったほうが明らかに効率的である。それならばと、中国などでは作れない付加価値の高いもの考えても、そのような仕事は「量」的にまだまだ少ない。総じて高齢者の持っている「能力」は優れていると思うものの、それを使える「場」が細ってきたというのが最近の状況である。

このように「賃金と仕事のバランス」そして「仕事が用意できない」という2つの大きな理由により、高齢者活用に対して企業側は冷たい対応となっている。法の整備により、見かけの「形」は整いつつあるようだが、意に反した処遇をされることも少なくない。そこでは本人にも煮え切らない思いがあるだろうし、受け入れる職場の雰囲気も、必ずしも良好とは言い難いものがあるのではないか。

「高齢者活用」に向けての考え方

高齢者に対する「見方」を変えてみよう

正直に言えば、企業側が持っている高齢者に対する「偏見」はまだまだ根強い。特に、60歳を過ぎると能力的に限界が訪れ、結果を出せないと思っているようだ。しかし、そんなことはない。「個人差」が大きいだけの話である。若い20~30代の人たちと遜色なく仕事をこなす人もいれば、逆に、どう見ても働くのはもう無理だと思える人もいる。そこを十羽一からげに扱い、60歳を過ぎたから使えない、高齢者には適当な仕事を与えておけばいいと決め付けてしまっては、一向に話が進まない。高齢者ということではなく、あくまで個人に着目すればいいのだ。

空前の求人難の現在にあって、一部の超大手企業や人気企業では質の良い若者を採用できる状態にあるが、そうでない会社では若者を採りにくくなってきている。それならば、高齢者にちゃんと働いてもらったほうが得策ではないか。彼らには改めて教育訓練する必要もないし、会社の内情もよく分かっていて、ビジネスマナーもできている。そういう人たちが、今なら大卒初任給と同じ程度の賃金で雇える。

高齢者は「使える!」

結局のところ、これまでは高齢者があまり会社の中にいなかったので、高齢者の活用に尻込みしているだけのことだと思う。あるいは高齢者は使えないという単なる思い込みがあったかもしれない。しかし、高齢者を使わざるを得ない状況となってきた現在では、中小企業を中心に、「予想以上に使える」「若者の“範”になる」と高齢者に対する考え方、見方を変えきている企業も少なくない。早晩、能力があり意欲も高い高齢者は引く手あまたとなることだろう。今のうちに、使える高齢者をつなぎとめておいたほうがいい。

人間は加齢によって、先見性やコミュニケーション能力、折衝力、指導力などのヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルが高まっていく。その他にも、経験による「勘」や「コツ」が必要な仕事、精度や注意力が求められる仕事などには、若者よりも高齢者のほうが適していると言われている。「修羅場経験」も豊富だから、何かあった場合にアドバイスもできるだろう。これからは、こうした高齢者の「強み」をさらに伸ばし、体力の低下などの「弱み」を補完するような能力開発が望まれる次第だ。

「団塊世代」が定年を迎え、大量の高齢者が出現

そして、団塊の世代が定年を迎えた2007年以降では、それこそ大企業だと1000人を超す単位で退職者が出ている。毎年1000人を超す退職者が出てきたような場合、全員に相応しい仕事を用意することは無理な相談かもしれない。65歳までの雇用継続の義務化に対して、企業は及び腰になるのも分からないではない。

この問題を解決するには、会社側が「この人を使いたい」と思えるような能力を、定年退職者が十分に持てるような状態にもっていくことである。これが、双方にとってのベストのあり方だと思う。そのためには、会社側の努力と個人の努力の両方が必要となってくる。

「使える高齢者」への条件

まず、会社側の努力としては、65歳まで働いてもらうことを前提として、トータルな「ジョブデザイン」の設計が求められる。少なくとも50歳くらいからその人の配置を新たに考えていくこと。今この人が持っている能力を、少しずつ幅を広げていく形で仕事経験を積んでいけば(職群管理のイメージ)、65歳まで働いてもらうことは十分可能と思われる。その意味でも、個人が持っている能力と仕事への配置の整合性というものを、会社側は真剣に考えていく必要がある。

一方、個人側の努力としては、年齢で自分自身に制約を与えないこと。何歳になっても、人間の能力は伸びていくものと信じることだ。努力を止めると伸びなくなってしまう。「生涯現役」という意識を持つことである。そのためにも、新しいことにチャレンジし、新しい知識やスキルを吸収していく心構えが大切となってくる。そうすれば55歳になって新しい仕事に移ってみないかと言われたときに、それを新たなチャレンジとして前向きにとらえることができる。

これからの「高齢者活用」のあり方

「年齢差別の禁止」の考え方

高齢者を活用する場がないからといって、高齢者を切り捨てるような対応をしてはならない。それは本人のモラールを著しく低下させるだけではなく、彼らに対する処遇を目の当たりにする若い世代に対するモラールの低下にもつながるからだ。いずれにしても、高齢者活用に当たり、今どうするかという「現状の打開策」と、そうした問題を起こらないようにするための「将来に向けての予防策」、この2つを同時に考えていくことが重要である。

内閣府が実施した「高齢者の雇用実態と労働力減少時代への対応に関する調査」(2005年)によれば、年齢に関わりなく働けるシステムを構築していくためには(図2)にあるように、労働者の能力、意欲などに応じた賃金・処遇システムの拡大が求められている。これは、「年齢差別の禁止」の考え方の導入を意味している。つまり、働く年齢の上限を定めている定年制を廃止することなどをはじめ、年齢を理由とした諸々の制度を禁止するということだ。

「年齢差別の禁止」では、働く側にとっては「雇用保障の喪失」、企業においては定年年齢での「無条件の雇用終了」というお互いのメリットを失うことになる。しかし、これが実現できれば、年齢に関わらず働くことが可能となるばかりでなく、年齢や勤続年数ではなく、仕事の成果や業績に賃金や処遇が連動するという「あるべき人事制度」の実現に向かうための、大きな推進力となっていくことだろう。

図2:年齢に関わりなく働けるシステムの構築条件(3項目回答)(%)

労働者の能力、意欲等に応じた賃金・処遇システムの拡大

71.4

厚生年金の支給開始年齢や、在職老齢年金制度の見直し

37.0

短時間勤務や隔日勤務など、弾力的な形態での就労の場の拡大

36.7

定年制度の廃止や見直し

34.8

労働者に対する教育、職業能力開発機会の拡充のための支援

26.4

仕事が同じ労働者の間での、処遇や賃金の均等な扱いの確保

19.5

長期雇用を前提とした年功的な賃金・処遇システムの見直し

17.1

職業生涯を通じての労働者の教育、職業能力開発

16.7

合理的理由なく年齢によって差別することを禁止するルールの導入

10.4

高齢者による起業活動の活発化

8.4

募集・採用時の年齢制限の解消

7.1

その他

2.2

出所:高齢者の雇用実態と労働力減少時代への対応に関する調査(内閣府/2005年)

高齢者活用に向けた「施策」

現在、高齢者の活用や戦力化を考えている企業では、さまざまな施策を講じている。そして、それらは大きく以下の4つのカテゴリーにまとめることができる。

(1)岐路選択施策
・早期退職優遇制度
・転職支援制度
・独立開業支援制度
・ICとしての契約(終身ネットワーク化)
・転籍・出向
(2)雇用確保施策
・定年廃止
・定年延長制度
・再雇用制度
・勤務延長制度
・ワークシェアリング
・中高年部署の設置
(3)能力再開発施策
・生涯生活設計教育制度(ライフプラン教育)
・職務再設計・職務開発
(4)人事・賃金制度改革施策
・専門職・専任職制度の充実
・コースの複線化・選択の自由
・裁量労働制
・キャリアパスの確立
・年功賃金から能力主義賃金・成果反映型賃金
・年俸制
・実績評価・コンピテンシー評価
・業績連動賞与
・賃金と切り離した退職金制度

一般的に、これらの施策を幾つか組み合わせて、高齢者の活用を図ろうと考えている企業が多いが、いずれの施策もオールマイティとはいかない。場合によっては弊害が出ているケースもあると聞く。これは、人事制度に関する基本理念のないまま、現状の対応策(対処療法)と今後の対応策(根治療法)を混在して、導入したからに他ならない。

施策を「対処療法」「根治療法」に分けて導入・運用していく

確かに現状の打開策としての対処療法の確立は大切だが、同時に将来に向けての予防策としての根治のための処方箋が、より重要となってくる。その際、何よりも人事の根本理念の確立がまずありき、ということを忘れてはならない。その理念を基本に、各種施策を考えていくことである。

最近は成果や実績が求まれるからと、成果・業績型の制度・施策を実施するという単純なことではなく、まずはそれらのベースとなる人事理念を明確にし、求められる人材像を描き、それをどのように評価し、そして育成していくのか。そして、そのために会社はどのような支援をしていくのかといった「グランドデザイン」を構築し、それを全社的なコンセンサスとして確立していくことを最初に考えてみてほしい。

この点で、高齢者の活用というのは、これまでの「年齢」によるマネジメントを根本的に変えていく“きっかけ”となると思っている。その場合、考え出された施策を一度、対処療法と根治療法とに分けて整理し、自社の置かれた段階や状況に応じて適切に導入、そして運用していくことがポイントとなる。

図3:高齢者を取り巻く現状と企業の取るべき対応

高齢者を取り巻く現状

【社会的な問題点】

●「団塊世代」の大量退職、定年延長の波

●若年労働力の減少、フリーター問題

【企業経営上の問題点】

●経営を弾力的に行うための人件費負担の軽減化

●組織の肥大化と業務縮小による企業内失業の増加

●出向・転籍先の不足、ポストづまり感によるモラールの低下

●技術革新へのスピード化対応、知識・スキルの早期陳腐化

 

*矢継ぎ早の対応策(対症療法の限界)

現状の対応策(対症療法)

【組織制度面】

●選択・早期定年制

●組織の再編成による部課長職の縮小、廃止

●配置転換、出向、転籍

【労務コストの軽減】

●昇給ストップ、管理職賃金の抑制

●年功賃金体系の見直し

【教育・意識改革】

●アウトプレースメント教育

●再教育、職務開発、高齢者向け部署の設置

●生涯教育の実施、退職準備プログラム

 

*対症療法から根治療法へ

今後の対応策(根治療法)

【組織制度面】

●専門職、専任職制度の充実

●コースの複線化、キャリア選択の自由、キャリアパスの確立

●専門分野を育成する人事システム・処遇制度

●裁量労働の適用

【労務コストの軽減】

●年功賃金の廃止、仕事・成果・コンピテンシーに応じた能力主義評価に基づく賃金体系の確立

●年俸制の確立、潜在評価から実績評価への評価軸見直し

●賃金と切り離した退職金制度、業績連動賞与

【教育・意識改革】

●能力・成果主義への意識改革教育

●専門能力の強化、スキルサーベイでスキルの“見える化”を実現、スキル強化

●自立意識の醸成、ライフキャリア研修の充実

 

*高齢者の成長・自立、前向きの活用

期待される効果

●求人難に対応した労働力の確保

●個別、全社的な生産性向上

●社内の活性化、全社的なモラールアップ

(チャレンジ精神、成長への自覚)

●年功主義などの悪癖の撤廃、正しい年功意識の醸成

●対外的なイメージアップ、終身ネットワークの実現

高齢者問題は、実は若年層問題である

で、結論。将来の高齢者とは、すなわち現在の若者のことであると。パフォーマンスよりもコストが高くつく高齢者を量産してしまうのは、何も年功賃金だけの責任ではない。どういう人材育成をしてきたかも、使える高齢者とそうでない高齢者を分ける大きな要因となるのだ。その意味で、まさに高齢者はその企業の人材観を映す鏡であると言える。

結局、高齢者問題というのは、若年層問題であるということ。将来的に活用できる高齢者を育てることを前提に、人事制度や能力開発システムを構築することが重要なのである。

だからこそ、あえて言いたい。「年齢マネジメント」は、「性」や「人種」と同じように、「年齢」という本人の努力ではどうにもならないことに対する一種の差別であると。そして、こうした年齢差別が明らかに労働市場の流動化を妨げている。今後、高齢者問題を解決するためにも、まずは「高齢者」というくくり方自体を改める必要があるのではないか。

また、それは単に高齢者に限られた問題ではなく、ダイバーシティ(多様性)マネジメントの実現を視野に入れた、グローバルかつトータルな人事制度を再構築しいていく中で、正しく舵取りされていくことだろう。

企画・編集:『日本の人事部』編集部

Webサイト『日本の人事部』の「インタビューコラム」「人事辞典「HRペディア」」「調査レポート」などの記事の企画・編集を手がけるほか、「HRカンファレンス」「HRアカデミー」「HRコンソーシアム」などの講演の企画を担当し、HRのオピニオンリーダーとのネットワークを構築している。

この記事ジャンル 高齢者活用

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【用語解説 人事辞典】
ボアアウト(退屈症候群)
チェンジカーブ
人員配置
イノベーションを生み出すためには何が必要か
健康寿命
エイジレス社会
ダイバーシティ・マネジメント
ぶら下がりシニア
まだらテレワーク
70歳定年制