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人事マネジメント「解体新書」 第二回
いま求められる「ダイバーシティ・マネジメント」

ダイバーシティとは何か?

◆「違い」を受け入れ、認め、活かしていくこと

そもそも、ダイバーシティとは何のことなのかー。
一般的に、ダイバーシティ(Diversity)は「多様性」と訳されているが、実は「Diversity&Inclusion」を省略したもので、本来は「多様性の受容」ということを意味している。そして、この「受容」という点が大切なのだ。

言うまでもなく、人間は人種や性別、年齢、身体障害の有無などの外見的な違いだけでなく、宗教や価値観、社会的背景、生き方、考え方、性格、態度、嗜好など、内面も皆違っている。ダイバーシティとは、個々の「違い」を受け入れ、認め、活かしていくことである。そこでは、「かくあるべし」と画一的なものを強要するのではなく、各自の個性を活かした能力を発揮できる風土を醸成していくことが求められている。それは、個人のみならず、組織にとっても多様性の受容は大きなプラスになる、という考え方がベースにあるからだ。

ちなみに、ダイバーシティに対する組織マネジメントという視点で、大きく「属性」と「働く条件」に分けて考えると、以下のような事項へと分類することができる。働く人々にはこうした点で違いが出てくることを踏まえ、この先の話を進めていこう。

【1.「属性」の違い】
  • ジェンダー(性別)の違い~「男性」⇔「女性」
  • 身体状況の違い~「健常者」⇔「身体障害者」
  • 人種・国籍・民族・宗教の違い
  • 世代の違い~「高齢者」⇔「若年者」
【2.「働く条件」の多様性】
  • 働き方の多様性(在宅勤務、短時間勤務、フレックスタイム、育児休業・介護休業の取得など)
  • 雇用形態の多様性(正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト・パート社員、再雇用制度など)
  • 働く場所の多様性(在宅、地域限定社員、転勤前提の正社員など)

◆ダイバーシティを進めることの「意味」

グローバル化が進む現在にあって、日本の外をみれば、世界中のどこでも女性の登用、外国人の活用など、ダイバーシティの推進に力を入れている現実がある。一方、これまでの日本はというと、「経営者に多様性や異質性を活用する価値観が希薄」であり、「社会に多様性や個別性を前提とした考え方、システムが存在していない」、何よりも「男女の分業を基本とした日本の社会、企業、組織風土が根強く存在している」などの理由から、ダイバーシティという概念があまり形成されてこなかったのではないか。というより、その存在さえ知らない人もいる。いずれにしても、ビジネス社会においては男性正社員を中心としたワークスタイルが支配的であったことは間違いない。

その結果、現在の日本では「仕事と生活を両立することが難しく、子育て支援も不十分で、ライフスタイル選択の多様性や、若年層の自立可能性も極めて低い状況にある」のは否定できない事実である。しかし、このままで良いはずはない。いまや主要企業の利益の源泉は海外に大きく依存しており、とりわけグローバルに事業を展開している企業にとって、ダイバーシティの推進は必須の事項となってきている。また、日本国内に目を向けても、少子高齢化の進展が一段と進んでいる。外国人や女性・高齢者の活用など、多様な人材の活用を進めていくことは、企業戦略の中核課題として位置づけられてきているのである。

加えて採用難が進むなか、雇用ミックスが進展し、労働条件が改善されてきた昨今の状況下では、バブル期よりもさらに進化した人材の調達・活用戦略が求められている。同質的な人材を求めることは組織マネジメント上、一見、効率的のように思われるかもしれないが、実はそうではない。実感としてお分かりだろうが、均質な人材から構成される組織より、多様な人材がいる組織のほうが、さまざまな面でリスクを軽減できる。変化や混乱への対応力、無から有を生み出す力などが全然違ってくるのだ。自然界の種の存続をみても分かるように、“雑種”は強い。変化が激しく先の読みにくい時代にあって、スピーディに対応していくためにも、組織内部に多様な人材がいることが不可欠になってきていると言えよう。


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