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キーパーソンが語る“人と組織”

“人間のプロ”として、人事はどうあるべきか?
~今、求められる「戦略人事」の実現に向けて [1/3ページ]

八木 洋介さん

株式会社LIXILグループ執行役副社長 人事総務・法務担当

企業が成長・繁栄していくために、人事は大きな役割を担っています。経営戦略の下、採用から育成、組織開発など「人」に関するあらゆる場面で、人事はその力を発揮しなければなりません。しかし、経営環境が大きく変化している現在、人事は必ずしも有効に機能していると言えないのが実情。この状況を受け、「戦略人事」の重要性を説くのが、LIXILグループ執行役副社長 人事総務・法務担当の八木洋介さんです。NKKや日本GEで、長らく人事の要職を務めてこられた八木さんに、「人事は何のためにあるのか」「人事のプロはどうあるべきなのか」といったテーマで、人事部・人事責任者に期待される役割と戦略についてうかがいました。


Profile
やぎ・ようすけ●1955年京都府生まれ。1980年京都大学経済学部卒業後、NKKに入社、人事などを歴任する。1999年にGEに移り、GE Medical Systems Asia、GE Money Asia、日本GEでHRリーダーを務める。2012年より現職。著書に『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社新書・共著)がある。
『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』



「人事」に求められる役割とは?「人のプロ」とは?

―― 環境の変化が非常に早い現在、日本の人事部が抱えている問題とは何でしょうか。

経営が目指しているものに対して、人事がきちんとシンクロできていないことが問題だと思います。このような状態になってしまったのは、目標実現のために人事戦略をどうするのか、しっかりと議論してこなかったからです。

1971年から73年にかけてニクソンショック、第一次オイルショックがあり、明らかに日本経済の成長は止まりました。これを受けて、日本企業の人事はどういう戦略を取るべきだったのでしょうか。それまで日本企業では、年功序列、終身雇用など、成長を前提とした人事を行っていました。これらに企業内労働組合を加えて「三種の神器」とも呼ばれましたが、これは他でもない「戦略」です。前提としていた環境が変わったなら、当然、人事も変わらなければなりません。しかし、変わり切れなかった。未だに有効な手立てが行われず、根本的には解決できていない状態が続いています。

代表的な例でいうと「職能資格制度」です。この先、再び成長する時代が来るものと安易に考え、問題を先送りにしてしまいました。しかし、日本経済の成長が止まった段階で、人件費だけが上がっていく職能資格制度のような仕組みを続けていけば、会社が破たんするのは目に見えています。それは40年前に分かっていたはず。こういうことが問題として存在することからも、これまで人事部は何をしてきたのかと言わざるを得ません。

さらに言えば、1986年に「男女雇用機会均等法」が施行されましたが、この時点で、女性をもっと活用していきましょう、ダイバーシティ(多様性)を大事にしていきましょうという話になったはずです。ところが、未だに女性活用やダイバーシティが進んでいるとは言えない。

これらを、日本的なカルチャーという名の下で変えてこなかった人事に責任があります。経営を直視して何が課題なのかを明らかにし、それをどう克服すれば会社を勝ったと言える状態に持っていけるのか。そういったことを、十分にやってこなかったのです。

―― ご著書の中では、「勝ち」を定義することがとても重要であると強調されていますね。

「何が勝ちであるのか」をはっきりと定義していれば、戦略的な人事を実現できるからです。その時々の状況で勝ちの定義が都合のいいように変わってしまうようでは、戦略を立てようがありません。経営の責任の下で、勝ちの定義を明確に定め、その実現にこだわることが必要です。

LIXILであれば、売上高3兆円、営業利益率8%。このような目標を設定すれば、実現するために人事をどう行うか、その方向性は自ずと決まってきます。ところが、今はこのようなご時勢だからといって、「雇用を守ることを大事にしたい」というようなことを持ち出すと、方向性は定まらなくなります。

経営が何を目標として事業を行っていくのかを、はっきりとさせる必要があるのです。そして、人事は経営資源で最も大切である「人」を扱っているわけですから、その部分については意見を言わなくてはなりません。それは、他の部門の責任者も同じです。そういうリーダーシップを社長だけでなく、集団として作り上げていくことも人事の重要な仕事です。

ところで、人事の仕事をしている人の中で、「社長を育てよう」と考えている人はどれくらいいるでしょうか。むしろ、今いる人たちを階層別に育てて何とかしようしているケースが多いように思います。そうするとリーダーの育成というよりも、知識・スキルの育成になってしまいます。これでは会社がどうすれば勝つことができるのかという、戦略的なところにはつながっていきません。

また、人を扱う人事は、経営の場で語られている「勝ち」について、社員に対してコミュニケートできなければなりません。戦略が難しすぎて理解できなければ、戦略として機能しないからです。そのためにも、戦略を噛み砕いて、分かりやすく社員に伝えていくことができるかどうか。そういったコミュニケーション力はとても重要です。

―― 戦略ができたら、次はアクションプランですね。

人間は頑張るけれど、さぼります。この事実を忘れてはいけません。年初に「アクションプランを実行しましょう」と言うだけではダメなのです。実行するためには、オペレーションのメカニズムを整えることが必要です。例えば、1ヵ月に1度はレビューを行う。そこでコーチングを行い、アドバイスをする、あるいはウォーニングをするなどして、何としてでも自分たちの立てたアクションプランを実現するのだというプロセスを作り上げていくことです。

八木 洋介さん Photo

そして、アクションプランを実現できる人間を全社員の中から選び出して、その人をふさわしいポジションに就ける、すなわち、適材適所を行うことも重要です。女性だから、年齢が若いから、日本人ではないから、などと言っているようでは、グローバル競争に勝てるわけがありません。そういうことを主張し、実現していく仕組みや仕掛けを作っていくことも人事には必要です。大切なのは、一人ひとりの力を引き出していくことであり、それを現場のリーダーと一緒に行うこと。そして、そういうカルチャーを作り出していくことです。

人は、やる気があるかどうかによって、アウトプットが大きく変わります。そのため、人がやる気を出すための仕組み、仕掛けをどう作っていくのかは大変重要です。例えば、人によっては「朝、おはようと言ったのに返事をしてくれなかった」といったようなことで、やる気をなくすことが往々にしてあります。そのため、元気がなかった人に声を掛けたり、悩んでいる人がいたら相談に乗ったりするように、人を思いやる心と行動を持って、現場で働く人たちのやる気を上げていくことが必要です。そうすることで、組織のエネルギーを高めていくことができます。

これは日常的なことに限りません。戦略を分かりやすく皆に伝えていくことをはじめ、不平・不満があったら一緒に考えていくといったことも、人事の重要な役割だと思います。要は、人のやる気を高め、組織に貢献していこうとする「エンゲージメント」が大事だということです。

ここまで述べたことは、全て現場のマネージャーでもできることです。しかし、マネージャーにもいろいろなタイプがいます。どんな社員を相手にしてもその人の良いところを引き出し、やる気を高めていくことができる人はあまりいないでしょう。だからこそ、「人のプロ」である人事がマネージャーのできない部分を埋めていき、社員の能力を最大限に引き出していかなければならないと思います。


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1件中 11件を表示

1. *****さん フードサービス 東京都
「社長を育成する」という視点で、人事の仕事をあらためて見つめなおしたいと感じました。

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