メンバーが自発的に動き、新たなアイデアが次々生まれる企業へ
ヤッホーブルーイングを変えた、チームビルディング研修とは(前編)
株式会社ヤッホーブルーイング 代表取締役社長
井手 直行さん
「井手さんが変な宗教にハマっちゃった?!」 社員の反発の中で始まったチームビルディング
チームビルディング研修で得られた経験を、どのようにして社内に還元されたのですか。
感動して長野に戻り、これをどうやって生かそうかと考えましたが、なかなかいい方法が思いつきませんでした。それでもどうにかしてヤッホーの社員にも伝えたい、と思ったとき、ふと「このファシリテーターは、自分にもできるんじゃないか」という思いがよぎりました。そして大胆にも、その研修内容をそのまま社内で実施することにしたのです。
メンバーには、研修の実施をすぐに受け入れてもらえましたか。
メンバーからの反感は、かなり大きなものでした。研修から帰ってくるなり「チームビルディング」を連呼していたので、「井手さんは変な宗教にハマっちゃったにちがいない」と冷めた目で見る社員も少なからずいました。それでも、僕の変わりようを見て興味を持ってくれる社員や、口には出さなかったけれど同じように会社の雰囲気を変えたいと思っていた社員が手をあげてくれて、チームビルディング研修の第1期生として、7名が参加することになりました。
できるだけ早く実践したかったので、7月から研修を実施したのですが、夏のビール業界はまさに繁忙期。そんな時期に、当時20名ほどのスタッフのうち7名が研修に時間を取られる。当然、参加していないメンバーにしわ寄せがいきます。しかも、研修に参加していない社員からは、なんだかよく分からない遊びをしているように見えるので、「プライベートでやってください」というクレームは少なくありませんでした。
反対する社員の方々をどのように説得したのでしょうか。
彼らに負担をかけていることは事実だったので、僕にできるのは、ひたすら謝り、重要性を説明することだけでした。チームビルディングは、今のヤッホーブルーイングにどうしても必要なことなんだ。この夏の売上が多少下がったとしても、一刻も早くチーム力を高めていくことが、長い目で見れば業績を上げることになるんだ、と毎回説明しました。しかし、まだ目に見えた結果が出ていない当時、理解してくれる人はほとんどいませんでした。謝り、説明し、でも分かり合えないという状態が2年ほど続きました。しかし僕自身は、1期生の研修が終わるころには、確かな手ごたえを感じていたんです。
さまざまなジャンルのオピニオンリーダーが続々登場。それぞれの観点から、人事・人材開発に関する最新の知見をお話しいただきます。