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海外勤務者の安全対策の実態
――海外勤務の状況、緊急事態発生時を想定した安全対策など

海外勤務の安全対策 –2

海外安全情報の情報源
「外務省」が93.0%、「自社の海外拠点」が78.0%

海外勤務者の安全情報について、情報源としているものを尋ねました。

「外務省」が93.0%と9割を超え最も多く、以下「自社の海外拠点」78.0%、「現地の日本大使館(領事館)」68.0%、「新聞・通信社等のマスコミ」53.0%と続きます(複数回答)。

ほとんどの企業が情報源としている外務省では、渡航者や海外在住者向けに「海外安全ホームページ」を開設しています。国・地域別に現地情勢や危険情報、感染症に関する情報、防犯・トラブル回避に役立つ情報等が示されており、また海外安全パンフレットや在留邦人向け安全の手引きといった情報も用意されています。

なお、安全対策というとテロや誘拐事件などに目が向けられがちですが、海外勤務時のリスクとして、感染症への対応も忘れてはなりません。今回の調査では利用率は44.0%と半数に満たないのですが、厚生労働省検疫所のホームページでは、海外の感染症の流行状況や予防方法などの情報を掲載しています。

上記のようなサイトを日ごろからチェックし、海外勤務者が安心して勤務できるよう備えることも必要でしょう。

また、33.0%と3社に1社は「セキュリティ・コンサルタント会社」を挙げています。「セキュリティ・コンサルタント会社」は高度の専門性を有し、平時の情報提供から有事の際のサポートまで、海外での安全対策に幅広く対応してくれます。

【図表3】海外勤務者の安全情報について、情報源としているもの(複数回答)
【図表3】海外勤務者の安全情報について、情報源としているもの(複数回答)

海外勤務者の安全対策に対する問題・課題
“国・地域ごとに危機の内容が異なる”“現地任せになっている”のほか、“メンタルヘルス対策”も複数が挙げる

最後に、海外勤務者の安全対策について問題・課題となっていることを自由に記入いただきました。

概観すると以下の項目が挙げられます。

  • 危機管理マニュアルの作成、緊急事態発生時の安全確保
  • 安全対策が現地任せになっている
  • 国、地域ごとに危機の内容が異なる
  • 健康問題、特にメンタルヘルス対策

中国での暴動やアルジェリアの人質事件の後も、直近ではアメリカ・ボストンの爆破テロ事件、中国での鳥インフルエンザ(H7N9型)の発生、サウジ アラビアを中心に感染が拡大している新種のコロナウイルス(MERSコロナウイルス)など、海外勤務者をめぐる懸念は後を絶ちません。

ところで、2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件を受け一般財団法人 労務行政研究所が実施した「海外危機管理の見直しに関する緊急アンケート」では、海外危機管理の課題とその対応策として「マニュアルの整備」や「連絡ルー トの再確認」などが挙げられていました(第3516号-01.11.23)。集計(回答)企業は異なるものの、今回の調査では、マニュアルの作成は 43.0%、現地勤務者の安否確認の体制整備は59.0%で依然として100%には及ばず、緊急事態への対策をしていない企業も23.0%に上ります。

もちろん中には、今回、回答いただいたコメントにある“ハードシップの高い地域への進出は今のところないため、静観している”企業もあるでしょう。 しかし、いつ、どこで起こるか予測できないのが危機です。自社の海外勤務者がどのようなリスクにさらされ、いざというときに企業がどのような行動をとれる のか、日ごろから意識して対策を講じておくことが必要といえるでしょう。

* ここでは、一般財団法人労務行政研究所が2013年3月4日~27日にかけて行った「海外勤務者の安全対策に関するアンケート」をもとに、『日本の人事部』編集部が記事を作成しました。詳細は『労政時報』第3848号(2013年6月28日発行)に掲載されています。
◆労政時報の詳細は、こちらをご覧ください → 「WEB労政時報」体験版
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