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企業がどこまでできる!?仕事中・私生活上の喫煙制限
弁護士
岡本 光樹(岡本総合法律事務所)
4 私生活上の喫煙行為と企業秩序および企業の社会的評価
従業員の職場外における私生活上の言動については、上記に比べて、より一層、労働者の人格や自由に対する配慮が要請されますが、そうは言っても、使用者の企業秩序維持権限が一切及ばないわけではありません。
判例によれば、従業員の職務遂行に関係のない職場外の行為であっても、企業秩序に直接関連するものおよび企業の社会的評価を毀損するおそれのあるものは、企業秩序による規制の対象となる旨判示されています(国鉄中国支社事件・最高裁昭和49年2月28日判決、懲戒免職有効。関西電力事件・最高裁昭和58年9月8日判決、けん責処分有効)。
例えば、以下のような場合には、企業秩序を乱すおそれ、あるいは、企業の社会的評価を毀損するおそれがあり、使用者が喫煙を制限し得ると考えられます 。
- 終業時刻後に、得意先等を接待して行う飲食会・宴会や従業員同士で行う懇親会・宴会等(いずれも原則として労働時間でないと解されている)において、受動喫煙を生じさせる態様で喫煙する場合
- 健康や医療への貢献を標榜している企業において、制服や社員証を着用したまま、社外で喫煙し、取引先や第三者からの苦情が当該企業に寄せられているような場合
接客などを行う業種で特にサードハンドスモーク対策が要請される企業では、口臭や衣服にタバコ臭が残ることをなくすべく、そもそも喫煙習慣をやめるよう従業員に働きかけることも、必要性および合理性が認められ得ると考えられます。
他方で、特に必要性や合理性がなく、企業秩序を乱すおそれがないにもかかわらず、従業員の休日の私生活上の喫煙を禁止するような場合は、行き過ぎた拘束として、命令や規則が無効・違法となる可能性があります。
以上のように、労働時間、休憩時間、通勤時間、会社関連の宴会、休日など、それぞれの場面について、いずれも個別具体的に、企業秩序との関連性の程度、従業員の職場外の私的側面の強弱といった連続的な要素に照らして、喫煙規制の必要性・合理性を検討する必要があります 。
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