そもそも「正社員」って何?
岸川 宏(きしかわ・ひろし)
●「パート・アルバイト」と「正社員」の違いから
それでは、自社で非正規として雇用していた者を正社員に登用する場合の基準ではどうでしょう?
今まで自社で働く姿を見ていますので「人柄」や「職業経験」の判定は前提条件としてわかっているはずです。より鮮明に、正社員に求めるものが抽出されそうです。平成26年のパートタイマー白書では、正社員登用の制度や実績のある企業に「正社員登用・転換の際に何を重視しているか」を聞いています。
最も多かった回答は「仕事への責任感、積極性などの姿勢・意欲」で79.4%。次いで「仕事を遂行するための能力」74.8%、「仕事の成果・結果」70.3%となっています。能力や成果もさることながら、仕事に対する姿勢が最も重視される結果となっています。
●正社員に「最も」必要なもの
また、平成23年版パートタイマー白書の調査では、労働条件や意識について求めるものを「パート」と「正社員」の2つの雇用形態に分けて聞くことで「正社員」に求めるものを明確化しようと試みています。
正社員に必要なものは「長期にわたって勤続できる」95.2%(61.5+33.7%)「会社の理念や方向性を理解して行動できる」93.7%(46.1+47.6%)「会社の利益を考えて行動できる」91.7%(39.7+52.0%)と、この3項目が90%(あてはまる;どちらかと言えばあてはまるの計)を超えています。
さらに、最も必要なものをひとつ聞いたところ、「長期にわたって勤続できる」は最も多い回答ではなく、「会社の理念や方向性を理解して行動できる」が最も多い回答となっていました。
以上の結果を勘案すると、「責任感や積極性」「会社の理念や方向性を理解して行動できる」など、仕事に対する考え方や姿勢が一番に求められていて、その次に「仕事の遂行能力」やその能力を養成するための「長期勤続」等が求められているように感じます。
言い換えれば、「企業の理念や方向性を理解し、積極的に行動できる自律した社員であること」といえるでしょうか。
長時間労働をはじめとする労働条件は、必ずしも必須ではないようです。企業の意志に沿った自律的な社員の行動は、必然的に生産性の高い働きとなるはずです。こういった社員を発掘することができれば、コスト増とは言えないのではないでしょうか。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。