そもそも「正社員」って何?
岸川 宏(きしかわ・ひろし)
パートタイマー白書や学生を対象にした就職活動に関する意識調査など、当研究所が独自で行っている調査から見えてくることを考察します。
正社員登用や限定正社員等、正社員化についての制度運用の成功事例を聞いていると、「この人と働きたい」「この人が働き続けられるにはどうしたら良いのか」が、制度作りのきっかけであることが多いように感じます。
あらためて、これが様々な制度つくる上での本質だと感じました。法律などによって強制される制度の導入は、必要と思っていない企業にとっては窮屈なものでしかありません。制度を活かすも殺すも、いかに「運用できる」「利用する側にメリットがある」にかかっているようです。
一方、正社員化・正社員雇用を進める上でのデメリットとして、「コスト増」というキーワードも良く耳にします。下記、平成26年度版パートタイマー白書の調査結果です。
非正規労働者の雇用が「人件費の節約」という論点から考えれば、正社員雇用は=「人件費増」となってしまうのも“当たり前”なのでしょうか。
そもそも、賃金等を含む待遇は、労働力を提供する事による対価のはず。「正社員」として雇用するのですから「コスト(人件費)増」と捉えるには違和感を感じないでしょうか。
そもそも「正社員」って何?
それでは、そもそも正社員に求められるもの、正社員とはどういった存在なのでしょう?「無期雇用でフルタイム」もしくは、「会社の中で最も多い、通常の労働者」「能力のある人」「転勤できる人」「残業できる人」?
みなさんでしたら、どのように定義するでしょうか。意外に「これだ!」と定義することが難しいものです。人と仕事研究所で調査した過去のデータをピックアップしながら、探ってみたいと思います。
●「人柄」は従業員としての必須要件
まずは、平成26年版パートタイマー白書より。
企業に「前職が非正規雇用だった20代、30代の労働者を自社の正社員として採用するとしたら、何を重視するか」を聞いたものです。
採用選考とする意識が強いので、「本人の性格・人柄」が圧倒的に高い結果となっています。それ以外では、「職業経験」「正社員での就労経験」等と続きます。「人柄」については、通常の採用と同じで常に求められるもの。「職業経験」は、自社で発揮できる能力があるかどうかを測るもの。この次に「正社員経験」とありますので「正社員」であったことに、何らかの期待、価値を認めているということになりそうです。
人事の専門メディアやシンクタンクが発表した調査・研究の中から、いま人事として知っておきたい情報をピックアップしました。