同一労働同一賃金の実態は?
岸川 宏(きしかわ ひろし)
非正規雇用従業員が行う業務は「定型的業務の割合が高い」と回答した企業が約6~7 割に上ります。一方、正社員が行う業務において「定型的業務の割合が高い」と回答した企業は43.2%に留まり、企業が非正規雇用従業員を責任や判断を伴うような非定型的業務よりも、単純作業などを含む定型的業務に従事させている状況が見受けられました。
この回答結果からは、「職務」自体が異なるということになり、非正規労働者の多くはパートタイム労働法で言うところの「通常の労働者(正社員)と同一視すべきもの」には該当しないということになります。
パートタイム労働法に則り、職務の内容に応じた待遇をするといった考え方に基づけば、職務の内容を正社員と明確に変えなければなりません。人件費を安く抑えていきたい企業であれば当然の結果と言えるかもしれません。
現状の傾向からすれば、正社員(通常の労働者)と同じ待遇にすることは難しい状況です。もちろん、職務の内容に“応じた“処遇をする必要があることに間違いはありません。
賃金の実態
平均時給 | 月給換算※ | 対正社員比 | |
---|---|---|---|
パート・アルバイト | 1,041 | 160,730 | 68.4% |
派遣 | 1,247 | 192,537 | 81.9% |
(東京都:平成26年7月~平成27年6月の平均)
※月給換算:厚生労働省「毎月勤労統計」(平成26年度確報)
事業所規模5人以上の所定内労働時間平均(154.4時間)を元に算出
データ元:『しごと情報アイデム』『ジョブアイデム』各月2週発行分を集計
上記の表は、当社の求人媒体から募集時の賃金について、パート・アルバイト、派遣社員の賃金と、正社員の賃金との比較を行ったものです。所定労働時間等を一律にして比較が行えていませんのでかなり大雑把な比較となります。
正社員と比較すると、パート・アルバイトでは約7割、派遣社員では約8割となっています。賞与や退職金、その他福利厚生に関しても考慮されていませんので、その辺りまで含めるとその割合はもっと下がるものと思われます。
いかがでしょうか?現在パート・アルバイト、派遣社員が行っている職務への対価として均衡がとれている賃金となっているでしょうか。
データは少し古くなりますが、パート・アルバイトとしては、もう少し差を小さくしてほしいといった意見も少なくないようです。(平成23年版パートタイマー白書)
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