新卒の採用基準は上がっているか?
三宅 航太(みやけ こうた)
若年層で非正規が増加
総務省発表の2013年平均労働力調査によると、役員を除く全労働者数は5,201万人で、そのうちパートやアルバイト、派遣・契約社員などの非正規労働者数は1,906万人でした。割合で見ると、全労働者に占める非正規労働者は36.6%(前年比1.4ポイント増)で、過去最高を更新しました。また、年齢別に非正規の割合を見ると、15~24歳(うち在学中を除く)で32.3%、25~34歳で27.4%、35~44歳で29.0%となっています。
年齢別の推移は、年を追うごとに全年代で非正規の割合が増えているものの、特に15~24歳の若年層で1990年代半ばから2000年代初めにかけて大きく上昇しています。1993年に非正規の割合は11.5%でしたが、1998年に18.3%、2003年では32.1%となっています(図1参照)。
就活しても、内定を採れない
先日、弊社は平成26年版パートタイマー白書を発表しました。テーマは「若年非正規雇用者の正社員化への可能性」で、20~30代の若年労働者を対象に調査を行いました。
大学卒業時に新卒で働くための就職活動を行ったかを聞いた設問では、「行った」が74.7%、「行っていない」が25.3%で、約4分の3の者が就職活動をしていました。これを年齢別に見ると、「行った」と回答した者は「29歳以下」で81.1%、「30~34歳」で70.9%、「35歳以上」で68.9%となり、年齢によって差がありました。
また、年齢別と就労経験別を合わせて見ると、〔C〕初職から現在まで正規雇用のみの者で就職活動を「行った」者の割合は、「29歳以下」93.4%、「30~34歳」84.7%、「35歳以上」90.6%で、全年齢層で高い水準となっています。
しかし、〔A〕初職が非正規雇用(正規雇用経験なし)では「29歳以下」69.1%、「30~34歳」61.0%、「35歳以上」53.9%、〔B〕初職が非正規雇用(正規雇用経験あり)では「29歳以下」81.3%、「30~34歳」69.4%、「35歳以上」61.2%となっており、年齢層が若くなるほど、就職活動を「行った」にもかかわらず、正規雇用の職が得られていないという傾向が見られます(図2参照)。
人手不足時代への対応
こうした傾向が見られる理由は、二つ考えられます。一つは、今回の調査対象年齢に設定した23~39歳の年齢差である16年の間に生じたビジネス環境や社会状況の変化です。
もう一つはそうした変化に伴い、企業が新卒社員に求める資質や能力が上がり、採用のハードルが高くなっている可能性です。いわゆる厳選採用です。バブル崩壊以降、採用予定人数に達しなくても、応募者が自社の基準に達しない場合は採らないという傾向が続いてきました。
現在、労働市場では人手不足の問題が持ち上がっています。少子高齢化による人口の減少という構造的な要因に加え、景気の回復基調によって人材の奪い合いが起きているためです。人手不足は飲食業や小売業などを中心に広がっており、各社が非正規社員の正社員化や待遇の改善など、人材確保のためのさまざまな施策を打ち出しています。
厳選採用の流れが長く続いてきましたが、これからの採用活動は質だけでなく、量とのバランスが求められるようになってきています。質と量については、大きく分けて二つの考え方があります。一つは量の確保に重点を置き、質は入社後の教育でフォローするという考え方です。
もう一つは自社に必要な人材像を明確にすることで、質と量の両方の確保を目指す考え方です。仕事の内容や役割に応じて求める能力を整理・細分化し、それに見合った待遇を設計します。待遇は賃金だけでなく、働き方も含みます。そうすることによって、さまざまな応募者の受け入れが可能になり、採用活動の幅は広がります。自社に必要な能力を明確にすることは質の確保に、幅を広げることは量の確保につながります。
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●文/三宅 航太(みやけ こうた)
アイデム人と仕事研究所 研究員。大学卒業後、出版社の営業・編集、編集プロダクション勤務を経て、2004年に株式会社アイデム入社。同社がWEBで発信するビジネスやマネジメントなどに役立つ情報記事の編集業務に従事する。人事労務関連ニュースなどの記事作成や数多くの企業ならびに働く人を取材。
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