あなどるなかれ。実は経験豊富な主婦パート
古橋 孝美(ふるはし たかみ)
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例えば本調査では、回答した主婦パートの約9割が、過去に正社員で働いた経験がありました。しかも、正社員として働いたことで「基礎的な実務能力」「責任感」「一般常識・教養」などを身に付けたと自負しています(図3)。加えて、うち2割には監督職・管理職の経験もありました。これらは、先に述べた「企業が中途採用を行う際、応募者の“正社員経験”に期待していること」と同じです。
実際、主婦パートに「現在のパート先で自分の能力が発揮できているか」を尋ねると、正社員時と“同一職種”の主婦パートでは、「(<十分に>も含む)発揮できている」との回答が、約7割に上りました(図4)。 “異なる職種”の場合より、約2割も多い結果です。
多くの場合、正社員は、年齢が若くてもパート・アルバイトよりも広く業務を把握しているものではないでしょうか。その“正社員時”での経験が、現在の能力発揮につながっているように思われます。
調査で明らかになったのは、企業が求職者の「正社員経験」に一定の評価や期待をしているということ。ただ、それが考慮されるのは正社員の採用時にとどまり、パートの採用時にはほとんど重視されていないのが現状です。逆に言えば、企業側が主婦パートの正社員経験に着目していないために、主婦パート本人が自負する能力を活用しきれていない可能性があります。
主婦パートには、働ける時間に限りがあったり、年収制限をしていたりなど、「個人の能力や経験」だけを基準に採用・活用できない場合があります。しかし、そうした面だけでなく、主婦パートが積んできた“経験”にも着目し、これを踏まえて仕事を与えていくことで、彼女たちの力をより一層引き出せるのではないでしょうか。
これから採用する場合はもとより、すでに働いている主婦パートの方に対しても、その経歴に注目してみてください。予想以上の能力を秘めた人材が、埋もれているかもしれません。
平成22年版パートタイマー白書
変わる主婦パート ~主婦パートの実態と今後の可能性~
<個人調査> 1030名 <企業調査> 1554名
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●文/古橋 孝美(ふるはし たかみ)
2007年、株式会社アイデム入社。求人広告の営業職として、人事・採用担当者に採用活動の提案を行う。2008年、同社人と仕事研究所に異動し、毎年パートタイマー白書の企画・調査・発行をトータルで手がける。2012年、新卒採用・就職活動に関する調査等のプロジェクトを立ち上げ、年間約15本の調査の企画・進行管理を行う。2015年出産に伴い休職、2016年復職。引き続き、雇用の現状や今後の課題について調査を進める一方、Webサイトの記事・コンテンツ制作、顧客向け販促資料などの編集業務も行っている。
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