これからの人材育成業界に大切なのは
マーケティング的発想
リーダー自らも新たなサービス・商品を生み出す
「事業家」であるべき
株式会社ラーニングエージェンシー 代表取締役社長
眞﨑大輔さん
マーケターとしての知識と経験が「定額制」の発想を生んだ
画期的といわれる「Biz CAMPUS」のシステムは、立ち上げ時に考え抜かれた中で生まれたわけですね。
それが最大の特色である「定額制」につながっていきます。企業の経営者に聞くと、誰もが人材育成には力を入れたいと答えます。しかし、学ばせ方がよく分からない、研修やセミナーに行かせても効果があるのか分からない。その割に費用は結構高い。高くて効果が分からないものには、なかなか積極的にはなれませんよね。そういうマーケットの状況が分かってきて、外部研修の最大のポイントは「価格」だと確信しました。
では、それをどうビジネスモデル化すればいいのか。私の原点であるマーケターとしての知識と経験を総動員して考えました。いろいろ調べると、既存の研修会社のセミナーは、たいてい「会員価格」と「非会員価格」を表示していることに気付きました。会員価格のほうが少し安いわけです。それが業界では常識のようだったのですが、ある時「会員企業はこれで満足なのかな?」と思ったんですね。いっそのこと、無料にしてしまったらどうだろう、そのほうが会員はよりハッピーなのではないだろうか、と。よく考えてみると「会費はかかるけど個別のサービスは無料」というシステムは人材育成業界以外にはよくあります。だったら、人材業界でも通用するのではないだろうか、とひらめいたわけです。
これが、一定の会費を払うだけでいつでも社員に必要な研修を受けてもらえる「Biz CAMPUS」の原点です。会員企業にとっては受講するほど一つのセミナーあたりの費用は安くなりますし、会費以上はかからないという安心感もあります。これを先行してやっている同業他社は当時はまったくありませんでした。ですから、私たちは堂々と「業界初」をアピールすることができたのです。
実際にいくつかのクライアントに打診してみたときの反応は、とても良かったですね。契約件数も順調に増えていきました。顧客が増えると当然会費が集まり、私たちも研修コンテンツを増やしていくことができます。すると、コンテンツが豊富だという評判が広がってさらに契約が増える。立ち上げて比較的早くそういった好循環ができていったので、うれしかったですね。
従来の研修会社は、なぜ「定額制」を取り入れなかったのでしょうか。
業界ではセミナーごとに個別課金するシステムが常識となっていて、会場費や外部講師謝礼などのコスト、集客予定などをまとめた収益計画もセミナーごとに立てられます。そのため、定額制に切り替えるには、一からビジネスモデルをつくり替える必要があるのです。
それに対して、私たちは後発でゼロからのスタートであり、最初から「定額制」を前提にした事業計画をつくることができたのです。もちろん、定額制の会費の範囲内で収益を上げられるように無駄なコストは徹底して省く工夫もしています。たとえば、従来型の研修ですと、一日コースには昼食のお弁当が付くのが普通です。でも「Biz CAMPUS」には付きません。あるいは、個別セミナーの場合、講師以外に受付や司会を担当する人が研修中にずっと付いていることもありますが、当社では、必要な時間だけ人を配置しています。そのほか、特に大きいのはプロモーション費用がかからないことです。一般の研修会社ではセミナーごとに集客のためのチラシを作ったり、ダイレクトメールを送ったりします。しかし、当社の場合は定額制で、会員の方々は自主的に受講されるので、集客のための費用が基本的にゼロで済みます。
まるでLCC(格安航空会社)のような発想ですね。
そうかもしれません。後発ですから、とにかく新しいことをやらないとマーケットから認めてもらえないのではないか、と考えました。思い切って始めた「定額制」というビジネスモデルに集中したのが成功のポイントでしたね。おかげさまで、かつて高価だと思われていた「フリース」をリーズナブルなものに変え、爆発的に普及させたユニクロになぞらえていただくこともありました。ユニクロのフリースが出て、初めてフリースを購入した人が多かったように、当社の「Biz CAMPUS」で初めて外部研修を導入された企業も少なくありませんでした。その意味では、新しい市場をつくることができたと自負しています。
日本を代表するHRソリューション業界の経営者に、企業理念、現在の取り組みや業界で働く後輩へのメッセージについてインタビューしました。