人生100年時代をどう生きるか?
ソニーによるベテラン社員の
キャリア支援施策
「キャリア・カンバス・プログラム」
「キャリアを考えるって楽しい」と気付いてもらうことが研修のゴール
ベテラン・シニア世代の社員であっても、自分のやりたいことに挑戦できる仕組みができているのですね。一方で、「やりたいことが分からない」という人たちに対しては、どのようなサポートを行っているのでしょうか。
山下:新しい分野への挑戦を促す「キャリアプラス」や「Re-Creationファンド」とは異なり、キャリア形成を支援することを目的に行っているのが、ワークショップ型研修「エクスプローラー」と「ネクストステージ」。それぞれの対象は、「50~53歳」と「57歳」の全社員です。
まず、「エクスプローラー」では、「キャリアを考えるのは楽しいんだ」と感じてもらうことを目的にしています。そこから取り組みたい目標が生まれれば、キャリアプラスなどの制度を利用することもできるでしょう。対象年齢に幅を持たせているのも、会社が年齢を指定して受けさせるのではなく、社員自身が「自分の人生を考えたい」と思ったタイミングで受講を選択できるようにするためです。一方、「ネクストステージ」では、定年後を見据えたお金の計算や再雇用の検討など、将来設計をするためのサポートを行っています。
研修後には、キャリアメンターがフォローアップを行っているそうですね。
大塚:はい、一過性にならないように研修受講後、全員にメンターによるフォローアップを行っています。メンターは、主にマネジメント経験のあるベテラン社員に兼務としてお願いしています。兼務といっても、全員にキャリアカウンセリングの国家資格を取得してもらうなど、かなり本格的です。メンターを設けたのは、直属の上司や人事には話しづらい悩みも相談できる役割が必要だと思ったからです。現在、30人ほどが活動しています。メンターの選抜は当初、人事からお願いしていましたが、現在は「キャリアプラス」の制度を通じて募集を行っています。大変ですがやりがいも多いので、今では志願者の方が多くなっている状況です。
メンター同士は月に一度集まり、情報交換を行っています。難しい相談などには、こうした場で意見を交わしながらフォローをしているようです。それぞれのメンターに得意な分野があるので、相談を受けたメンターから別のメンターを紹介し、社員同士をつなぐ機能も生まれています。
ワークショップ型研修やキャリアメンター制度のほかには、どのような取り組みを行われていますか。
山下:特徴的な取り組みとして、キャリアを考える人たちが大学のサークル活動のように自主的に集まる、「ボトムアップ活動」があります。もともとソニーにあるボトムアップの風土を、キャリア支援を行う上でも役立てられないかと考え、導入しました。社員が主体的に勉強会や見学会を企画・推進し、それを会社がさり気なくサポートする、という雰囲気を作っています。
ワークショップ型研修 「エクスプローラー」「ネクストステージ」 |
それぞれ「50~53歳」、「57歳」の社員を対象に、キャリア形成のサポートを行う |
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キャリアメンター制度 | 研修受講者にメンターが付き、研修のフォローアップや各自が持つ課題等についての相談を行う |
ボトムアップ活動 | キャリアを考える社員同士が自主的に集まり、勉強会や見学会を企画、実行する |
今後は、どのような取り組みを考えていらっしゃいますか。
大塚:ソニーには「自分のキャリアは自分で築く」という理念があります。これは、ソニーの社員なら誰でも知っているほど浸透している言葉です。ソニーの創業者である盛田昭夫も、生前入社式では必ず「ソニーが合わないと感じたら、すぐに辞めたほうがいい。試用期間は、あなたたちが会社を選ぶ期間でもある」というメッセージを伝えていました。そのため、もともとキャリアに対する意識の高い社員が多いのです。あとは、自律を行動に移せる人を増やすことです。例えばインターンシップのように、社内だけでなく社外で気軽に経験を積める仕組みがあっても面白いと思います。
山下:会社がすべてお膳立てするのではなく、社員が自分で考える風土が大切だと感じています。いくら人事が新しい制度をつくっても、利用してもらえるとは限りません。先ほどお話した「ボトムアップ活動」も、本当に自主的な活動が盛り上がるか心配でした。しかし、実際に導入してみると予想以上に活発に機能していて、新しいつながりが生まれています。こうした主体的な活動が増えるよう、今後もいろいろな仕組みをつくっていきたいと考えています。
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