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となりの人事部人事制度掲載日:2019/03/18

人生100年時代をどう生きるか?
ソニーによるベテラン社員の
キャリア支援施策
「キャリア・カンバス・プログラム」

現在の部署に在籍しながら、兼務で別の仕事に挑戦できる

「キャリア・カンバス・プログラム」の中では、同時に複数の施策に取り組まれていますね。

大塚:施策の目的は大きく二つあって、「新しい分野への挑戦を促す」ことと、「キャリア形成を支援する」ことです。これを目指して導入した複数の施策の総称が、「キャリア・カンバス・プログラム」。それぞれの施策が独立したものではなく、一貫した取り組みであることを社内に浸透させるため、一つのパッケージとして名付けました。

まず、「新しい分野への挑戦を促す」取り組みとして、現在実施しているのは二つ。一つ目が、「キャリアプラス」です。これは現在の部署に籍を置いたまま、業務時間の2割~3割ほどを使って、別の仕事を兼務できるという制度です。もともと、ソニーでは2015年に会社全体で社内公募制度のリニューアルを行い、このキャリアプラスをはじめとしたいくつかの施策を導入しました。社員が自分の経歴をまとめたレジュメを登録することで、人事権を持つマネージャーから声がかかりやすくなる「キャリアリンク」や、プロ野球のように、社員が与えられたFA権を行使できる「FA(フリーエージェント)制度」などです。

こうした複数の社内公募制度のうち、自分の部署の仕事をしながら新しい挑戦ができるキャリアプラスは、最も気軽に利用することができます。「全く新しい部署に、いきなり移動するのは不安」というベテラン・シニア社員でも手を挙げやすいのではないかと思い、キャリア・カンバス・プログラムの一環として、活用を呼びかけました。

キャリアプラスは、実際にどのようなかたちで活用されていますか。

大塚:すでに60人ほどの社員が活用していますが、だいたい三つのパターンにわかれます。一つは、若手社員のアイデアを具現化するためのサポート的役割。若手社員は新しい技術にも関心が高く、発想力豊かな提案をしてくれますが、一方でビジネススキームを確立させたり量産したりするための知見は多くありません。そんなときにプロジェクトにベテラン社員が入ることで、互いの得意な分野を生かして商品をつくることができます。

山下:趣味を仕事に生かすパターンも多いですね。例えば、アニメ好きの人たちに刺さるような企画を考えるとき、アニメが好きな社員がプロジェクトに参加すれば、参考になる意見をもらえます。以前、ウォークマンのアニメコラボモデルを作った際も、キャリアプラスで募集を行い、アニメ好きのベテラン社員から多くの応募がありました。

大塚:もう一つは、全社プロジェクトの運営ですね。このようなプロジェクトの企画運営などは、会社の指示で担当者をアサインすると、どうしてもやらされ感が出てしまいます。でも社内のどこかには、大きなイベントや施策の運営に携わってみたいと考えている人が必ずいます。やりたくない人に嫌々やらせるよりも、挑戦したいと人に任せる方がいいですよね。そこがうまくマッチングできるようになりました。

制度導入後、社内に浸透させるために、どのような工夫を行いましたか。

大塚:ソニーは1966年から社内公募制度を導入していて、50年以上の歴史があります。自ら手を挙げる組織風土があるので、新しい制度への抵抗はもともとありませんでした。とはいえ、制度をどのように使えるのかがわからなければ、なかなか一歩を踏み出せない人も多いでしょう。そのため、まずは前例を作ることが大切だと考えました。

そこで、こうした制度に関心がありそうな人や、挑戦してくれそうな人に個別に声をかけ、まず試しにやってみてもらうことにしました。彼らの成功体験が周囲に口コミで広がることで、「自分もやってみたい」という人が増えたように思います。また、その他にも体験した人に社内報でインタビューするなど、制度利用のハードルを下げることを意識しています。

新しい分野への挑戦を促すために、「キャリアプラス」の他には、どのような施策を行っていますか。

大塚:ベテラン・シニア世代の新たなスキル獲得や学びなおしをサポートするために設けたのが、「Re-Creationファンド」という制度です。これは、50歳以上の社員が新たなスキル獲得のために自己投資をした場合、上限10万円までの費用を会社が補助するというものです。社内には、学びなおしをしたいと思いながら、できていない人がいます。50代の社員にヒアリングを行った結果、その理由の一つは「お金」であることわかりました。金銭的な部分でためらっている人がいるのであれば、制度で背中を押そうと考え、支援制度を設けたのです。

新しい分野への挑戦を促す施策
キャリアプラス 業務時間の2割~3割ほどを使って、別の仕事を兼務できる
Re-Creationファンド 50歳以上の社員が新たなスキル獲得のために自己投資をした場合、上限10万円までの費用を会社が補助する

Re-Creationファンドでは、どのような挑戦が生まれていますか。

大塚:現在の得意分野をさらに伸ばす人もいれば、全く新しいことにチャレンジする人もいます。すでに100人以上が制度を利用していますが、そば打ちや世界遺産検定に挑戦した人など、さまざまです。

現在の業務に直接関係がなくても、制度を利用できるのですね。

大塚:はい。自分が歩みたいキャリアの中で、そのスキルや知識を学ぶ必要があるということが描けていれば、会社として応援するようにしています。例えば「ゴルフが好きだからゴルフ費用を払ってくれ」という申請は認められませんが、「将来ゴルフトレーナーになりたいから」という理由であれば許可する可能性もあります。

「キャリアプラス」や「Re-Creationファンド」を導入したことで、ベテラン・シニア社員にはどのような変化がありましたか。

山下弘晃さん(ソニーコーポレートサービス株式会社 人事センター EC人事部 キャリアサポート課 キャリアサポートマネジャー)

山下:いきなり「学びなおしをしろ」と言われても、多くの人はイメージができないと思います。でも、これだけ前例があって周囲に経験者がいると、「どんな挑戦でもいいんだ」と、発想が柔軟になってきます。仕事や会社の枠にとらわれず、自分のキャリアを考える人が増えたことは、大きな成果だと思っています。

大塚:ベテラン社員が守りに入るのではなく、一歩を踏み出せるようになったのはいい変化ですね。外に出ていくことによって、自分の市場価値がこれまで以上に見えるようになります。職場をちょっと変えたり、今とは違う仕事に触れてみたりすることで、自分の得意不得意も再確認できる。すると、この先のキャリアの描き方が具体的になっていくと思うのです。

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この記事ジャンル 能力開発関連制度

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