「100人いれば、100通りの働き方」を実現
サイボウズでの仕事を複(副)業とする人材を
募集する「複業採用」とは
サイボウズ株式会社 執行役員 事業支援本部長 中根弓佳さん
サイボウズ株式会社 事業支援本部 人事部採用担当 武部美紀さん
実施に向けて、バックオフィス部門や現場とも連携して課題を解決
「複業採用」で新たな人材が入社されたことで、会社にどんな効果が生まれましたか。
武部:社員からよく聞くのは、友人や知人をサイボウズに誘いやすくなった、ということです。やはり、他の会社でバリバリやっている方に「サイボウズに100%コミットしにきてよ」というのはなかなか難しい。でも「この業務を手伝ってもらえないかな。複業採用もやっているから」といったように、声をかけやすくなったそうです。リファラルや紹介にも、つながりやすくなりました。
「複業採用」が順調にスタートできた要因はどこにあったとお考えですか。やはり、青野社長によるコミットメントは大きいのでしょうか。
武部:複業採用は人事が主導していますが、実際に進めていく中では、「現場の面接官はどういう目線で面接をするのか」「入社が決まったら、チームとしてどう受け入れるのか」といったことを、全方位的に検討しなければなりません。当然ながら、人事の採用担当だけでは対応できないので、総務・労務・法務などのバックオフィス部門の理解や、受け入れるチームとの連携・協力が欠かせませんでした。特に複業採用はサイボウズとして初めての取り組みだったので、どのように運営していくかを皆で議論しました。採用担当だけで進めようとしていたら、実現できなかったと思います。
中根:複業採用は、人事が5年後、10年後に向けた採用の理想像についてディスカッションをしてきたなかで、生まれたアイデアです。ただ、社長の青野が「今までの取り組みの一つとして、プロモーションを展開して採用につなげたい」という人事の考えを応援してくれたのも事実です。「社長はコミットしてくれていますか」と聞かれれば、当然答えはYESですし、何かあったときには、アドバイスしてもらっています。
貴社の人事制度の方針は「100人いれば、100通りの働き方」とのことですが、今後は人事関連でどのような取り組みをお考えですか。
中根:「100人いれば、100通りの働き方」という方針は、メディアでもよく取り上げられますが、実はすごく大変なんです。一律の方が当然、マネジメントも評価しやすいでしょう。各自の個性を重視しながら、チームとしても個人としても成果が出るようにしていくのは、本当に難しい。実際、すべてがうまくいっているわけではありません。試行錯誤の連続です。評価も、働き方も、労務管理も、日々悩みながら、社員一人ひとりに対応しています。
大事なのは、社員個人が自立していること。自分はどう生きたいのか、どんなふうに生きることが自分にとってハッピーなのかを、きちんと認識し、それをしっかりと周囲に伝え、実行に移していくことです。さらに、それを実践するためのセルフマネジメントがとても大切です。もちろん、サイボウズにいるメンバー全員ができているかというと、正直なところ、そうではありません。だからこそ、個人の自立を支援していかなければなりませんし、一人ひとりの個性をしっかりと認識し、その上でどうチームに組み込んでいくのかを考えなくてはなりません。
武部:複業採用でも、独自の募集要項を用意しているわけではありません。応募してくれた方にあわせて、「この部門でこんな活躍をしてほしい」「こういう仕事を任せたい」などと、一人ひとり作っているんです。ほかの中途採用でも同じですが、特に複業採用の場合は、「どのくらいのボリュームで働けるのか」「どんな仕事と掛け持ちなのか」など、それぞれの事情により、その内容は異なります。いろいろな部門のメンバーを巻き込んで、一緒になって議論しながら決めていかなければならないので、手間も掛かります。他社の人事の方からは「大変なことをやっていますね」と言われますが、あえてそれを目指しているのであり、それが人事の仕事だと考えています。
社員の「複業」自由化に関心はあるが導入は難しいとお考えの人事の方々、また「複業」自由化にこれから取り組もうとしている人事の方々に対して、何かアドバイスなどがありましたら、お聞かせください。
中根:複業(副業)について、解禁する・しないといった議論があると思うのですが、「その会社にとってなぜ必要なのか」が、おざなりになっていると思います。「他の会社も導入しているから、うちでもOKしなければいけない」「何となく働き方改革をやらないといけないと感じている」。そんなレベルの会社も多いのではないでしょうか。当社では「100人いれば、100通りの働き方」を目指すなかで、どうしても必要だったので、複業採用の導入に至っています。複業(副業)が必要だと判断したのであれば解禁するべきですが、必要ではない会社もあるはず。その会社にとって何が必要なのかを、しっかりと議論していくべきだと思います。