帝人株式会社:
「One Teijin」の旗印の下、大胆な人事改革に着手
帝人が取り組む人財育成の要諦とは(後編)[前編を読む]
帝人株式会社 人事・総務本部 人事部長
藤本 治己氏
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経営トップの想いを実現する戦略人事
帝人の場合、その時々の経営トップの考えや想いを、人事が制度や仕組みとして取り入れ、戦略人事として対応してきたように感じます。
1990年代の後半から、そうした傾向が強くなっていると思います。経営を取り巻く環境が大きく変わってきたこともあり、経営者の人事に対する思いや要求が直接、人事に来るようになりました。
しかし、今になって考えると、どれもが当たり前のことです。例えば、女性活用の問題にしても、労働力人口が減っていくのは既に分かっているわけですから、会社としてはいち早く手を打っておく必要があります。そうでなければ、会社として生き残っていくことができませんから。そして、女性に活躍してもらおうと思えば、そのための環境を整備するのは当たり前の話です。
今後、会社が成長し続けていくためには、新たな融合領域をどんどん広げていかなければなりません。技術やマーケットだけではなく、人においても同様です。部門や地域の垣根を越えて、人と人とが状況を共有し、つながりを持つ。まさに、「One Teijin」の考え方ですね。
最後に、人事改革に取り組む他社の人事担当の方々に向けて、メッセージやアドバイスをお願いします。
最近、人事に必要なスペシャリティーとは何なのだろうか、とよく考えます。いろいろと考えた結果、二つの側面があるとの結論に達しました。一つ目は、経営に対して寄り添いながら、「人軸」の中で経営の問題解決をしていくことです。しかし人軸とはいえ、人だけではなく、やはり事業のことを分かっていないと、人軸の中で有効な施策を打てません。その点で、人事担当者は事業のことをしっかりと勉強しなければいけないと思います。
二つ目は、現場の問題解決です。現場で起きている人に関する問題にいかに対応できるか、ということです。現場には、その部門の執行役員や部長などマネジメントを担当する人たちと、従業員がいます。前者のマネジメントをする人たちは、日々悩みながら従業員と相対しています。人事がうまく寄り添っていくことで、マネジメントに関して自信を持って判断し、より良い組織風土を作っていくことが可能になります。そこで人事は公平な立場でありながら、スペシャリストとしても、現場のマネジメント層との接点を持たなくてはなりません。
一方、従業員に対しては、キャリアカウンセリングが必要だと考えています。従業員が一つの会社にずっと縛り付けられることが、今後は少なくなると思うからです。そのため企業は、従業員がこれから自分がどんなキャリアを送りたいのかを考え続けていけるような組織風土を、作っていかなければなりません。その際、人事担当者よりも、キャリアカウンセラーのような人がそばにいて、その人の生活や健康問題などを含めてアドバイスできるような体制を作る必要があると考えています。
帝人グループには管理職が約2000人いますが、2016年1月から9月まで、人事・総務本部で「管理職全員面談」を行っています。面談には、人事・総務本部内の部課長と若手メンバーが総勢で対応しています。面談の内容は、「いま抱えている課題は何なのか」「組織のことをどう思っているのか」「将来どうしたいのか」といったようなこと。管理職一人に対して1時間くらいかけて、じっくりと話を聞いています。
こうした面談を実施しようと考えたのも、従業員に寄り添うという視点と、今後の中高年対策からです。中高年のこれからのキャリアは、各人各様です。帝人グループとしても、中高年対策に関する施策はまだ不十分な状態です。そこで、中高年に対する人事的な対策であると同時に、キャリアサポートをどう行っていけばいいのか、そのための最初のアプローチが管理職全員面談なのです。そのためにも、キャリアコンサルタントが国家資格と認定されるようになった今年、資格を持った人が人事部に増えてくることが必要ですね。
今回の管理職全員面談は私が言い出したことですが、これからの時代、とても重要になると考えたからです。人と組織にとって必要だと思うこと、やりたいと思うことを、人事担当者はどんどん口に出して、実行していかなければなりません。しかも、スピード感を持って。社内の至るところで、社員がそういうことができる組織を作るためにも、まずは人事部が率先していくことが大事ではないでしょうか。
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