「シン・人事の大研究」調査レポート【第10回】
35歳~44歳の人事パーソンが体験する、
キャリアに関する「ウキウキ」とは?
人事パーソンは何を学び、どんなキャリアを描いているのか。自身をどう評価し、どのように変わろうとしているのか――。立教大学 田中聡氏・中原淳氏と『日本の人事部』編集部による「シン・人事の大研究」の調査結果を基に、人事パーソンの実態を明らかにしていきます。
中堅人事パーソンは「ウキウキ期」をどう乗りこなすのか
第9回では、人事のキャリアについて、34歳までの若手を「モヤモヤ期」、35歳~44歳までの中堅を「ウキウキ期」、45歳以降のベテランを「ドンヨリ期」と3区分しました。今回は中堅の「ウキウキ期」について見ていくことにします。
全年代に対して「このまま人事の仕事を続けることに不安があるか」を聞いたところ、40代に入ると不安が高まる傾向にあることがわかりました。キャリアの終わりが見えてきて、漠然とした不安を感じ始めるのがこの時期のようです。
では、中堅人事パーソンの“幸せな活躍”を促す仕事の特徴とは何でしょうか。調査によれば、もっともプラスの効果があったのは「社員から感謝される」ことでした。以下「新しいことにチャレンジできる」「決まった仕事を自分のペースでできる」と続きます。
では、逆に“幸せな活躍”を阻害している特徴とは何でしょうか。もっともマイナス効果があったのは「やって当たり前と思われる」こと。以下、「仕事内容に比べて報酬が低い」「専門性が身に付かない」「やらされ感が強い」と続きます。
このように、感謝されるとプラスに働く一方で、やって当たり前だと思われると、マイナスへと働きます。正当な評価を得ていると実感できるかどうかが、中堅期の幸福活躍度の差を分けるようです。
次に中堅期の幸福活躍度に対して、プラスに影響する職場での学習行動を調べたところ、上位から「ジョブ・クラフティング」「1on1」「フィードバックシーキング」という結果になりました。「1on1」や「フィードバックシーキング」のように、自分から周囲に対してフィードバックを求める行動ができている人ほど、幸福活躍度が高い傾向が見られます。
一方で、「上司と定期的に1on1を実施しているか」「上司や同僚に仕事のフィードバックを求めているか」を聞いたところ、どちらも年齢が上がるにつれて頻度は下がる傾向にありました。中堅期に1on1を定期的に行っている人は半数くらいという結果です。だんだん自分自身を見つめ直す機会がなくなっていくことが中堅期の特徴といえるでしょう。フィードバックを受ける機会を、自ら積極的に作り出すことが求められます。
では、中堅期の職場以外での学習行動は、幸福活躍度にどのように影響するのでしょうか。インプット重視の学習行動が重要だった若手期とは異なり、中堅期にはアウトプット重視の学習行動が重要になることがわかりました。学んだ知識を仕事の現場や職場メンバーに還元するような学びが大事です。
また中堅期では、人事業務を通じて「人間の持つポテンシャルの大きさを実感した」「経営層の視点に立って考えるようになった」「自社の経営戦略や事業課題について理解が深まった」という人事パーソンほど、幸福活躍度が高いことがわかりました。
中堅人事パーソンが「ウキウキ期」を乗り越えるためには、以下がポイントとなりそうです。
中堅人事パーソンが「ウキウキ期」を乗り越えるためのポイント
- 社員からの評価を待つのではなく、自ら評価をもらいに現場に行く
- 他者からのフィードバックを待つのではなく、自ら求めに行く
- 中堅期は、とにかく膨大な量のアウトプットを!
第11回のレポートでは、「ベテラン人事パーソンの幸福活躍度」からキャリアについて考えます。次回もお楽しみに!
実施時期 | 2022年2月1日(火)~ 2月28日(月) |
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調査対象 | 企業で人事関連の仕事(人事、人材開発、組織開発など)に従事している方 ※「人事関連の仕事」とは、ご自身が所属する組織の「人と組織にまつわる業務全般」を指します。所属部署が本社人事部であるか事業部であるかは問いません。採用支援や人事コンサルティングなど、人事担当者に対してサービスを提供する企業に従事されている方は該当しません。 |
調査方法 | Webでのアンケート |
回答者数 | 1,514名 |
全国の人事パーソンを対象に行った大規模調査の結果から、人事パーソンの実状を明らかにしていきます。