人材紹介会社にできないこと
本業に差し障るので…… 人材紹介会社に「“裏”活用法」はない
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募集しながら転職先を探す人事も
企業の人事から「転職先を探して」と頼まれることも、時々ある。
「打ち合わせが終わったら、ちょっとお時間をいただいてもいいですか」
S社で採用担当者と話し合っていると、普段はあまり顔を合わせる機会のない人事部長に声をかけられた。何だろうと思っていたら、別室に通される。おもむろに封筒から書類を取り出す部長。特別な求人案件でも教えてもらえるのだろうか……と思って楽しみにしていると、渡されたのは履歴書と職務経歴書だった。
「私に合った求人があれば、教えてもらえないかと思いましてね。とりあえず履歴書をお預けしておきますので、よろしくお願いします」
こういうパターンは、外資系企業などに多い。いざという時に備えて転職の準備をしておきたいという場合や、本当にすぐにでも移りたいという場合など、その理由はさまざまだ。時には上司が部下を呼んできて、「君も書類を渡しておくといいよ」とアドバイスすることもある。
本人が転職を希望しているのであれば、厳密には「引き抜き」には当たらないかもしれない。しかし、企業の立場からすると「現役社員を転職させた紹介会社」ということになる。
もう一つ問題なのは、人事担当者が転職したがっている会社に、人材を紹介しなくてはならないケースだ。その場合、次のような質問が欠かせない。
「転職をお考えになった理由を、お聞かせ願えますか」
もし会社そのものに大きな問題がある場合は、新規の紹介は控えた方がいいかもしれない。しかし、相手もさるものでそう簡単には本音は教えてくれない。
「この会社ではある程度キャリアアップできたので、もっといい条件で働けるところがあれば、転職したいと考えているんです」
こういう場合、「できません」と断るのも角が立つので、一応書類はお預かりする。しかし、もし現役社員を転職させたことが、上位の役員クラスなどにわかってしまうと、今後出入り禁止になってしまう危険性もある。
利用する側は軽い気持ちで相談しているのかもしれないが、人材紹介会社としては、「“裏”活用法」はほどほどにしていただきたい、というのが本心なのである。
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