企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

人事マネジメント「解体新書」

新・女性活用時代
―― いま改めて注目される「女性活躍推進」について考える【後編】 (1/3ページ)

2014/4/14
『前編』は政府の成長戦略の中、改めて「女性活用」が求められている背景と、企業が取り組むべき課題について述べてきた。『後編』では、迫りくる労働力不足の下、どのように「女性活用」に取り組んでいけばいいのか、その考え方と事例を紹介していく。
女性活用のための基本的な考え方
◆先入観にとらわれず、個人差に応じた役割の明確化を

2007年の人事マネジメント「解体新書」第5回『「女性」を活かせる会社でなければ生き残れない!』(https://jinjibu.jp/article/detl/manage/192/)の中でも記したが、社会人としての能力やレベル、スキルに「個人差」はあっても、「男女差」はないと考えている。女性活用においては、まず、この考え方を人事管理の中心に置き、職場風土として根付かせていくことが肝心である。しかし、依然として「女性だから」という理由(良い意味でも悪い意味でも)で、女性を活用することに躊躇する企業が少なくない。

女性の戦力化をどこまで推進できるかが、今後の企業経営に大きな影響を与えることは『前編』でも述べた通りである。労働力の減少が急速に進んでいく状況下、従来通りの「男性・正社員・フルタイム労働」の働き型に依存する体制を維持していくのは、もはや困難。それなのに男女の違いにこだわり、女性を活用、戦力化しようとしないのは、「人材」という経営資源の観点からみても、大いなる無駄遣いである。

そうした中、女性比率の高いサービス業界などでは早くから女性の戦力化を推進し、女性に活躍の場を与え、女性が働きやすい環境づくりのための制度・インフラ整備を進めている。その結果、女性の生産性が向上しているケースをよく見かける。また、女性の戦力化は社内にも好影響を与え、全社的な生産性にも大きく貢献している。このような女性活用の基盤ができているかどうかが、これからの企業業績に決定的な影響を与える時代となってきたのだ。

一方で、女性をしかるべきポジション・職務に置いたものの、周囲の理解、サポートが得られずに、期待したほどの成果が上がらない(むしろ手間暇がかかる分、負担が大きい)ため、女性活用に消極的になり、「男性・正社員・フルタイム労働」のパターンへと戻ってしまったケースも少なくない。このような企業の多くは、男性中心(男性前提)の仕組みを変えることなく、結果ばかりを求めてきたのではないだろうか。そもそも女性を活用しようという組織風土(合意形成)ができていないのだから、成果が上がらないのも当然のことである。

男性も女性も、一人ひとりは違う。肝心なのは性差をではなく、一人ひとりの個性・特徴に着目することである。そのためには、各人における「役割(求める成果)の明確化」といった人材活用のソフト部分に目を向け、一人ひとりのスキル・能力を活かせるようなマネジメントと環境づくりを考えていくことである。言うまでもなく、役割の明確化においては、「男性だから」「女性だから」という決め方ではなく、個人の持つスキルや能力、意欲、適性などに応じた形で実施していくことが重要になる。先入観にとらわれず、個人差に応じて役割を明確にすることがポイントだ。

◆女性活用の成否を握るのは現場の管理職

その際に鍵を握っているのが、現場の管理職(上司)である。管理職の理解と現場の指導の方向性によって、特に女子活用の場合、その成否が決まってくると言えよう。さまざまな女性活用に関する調査や専門誌のインタビュー記事などを見ても分かるように、最大のネックとなるのは女性活用に理解を示さない(態度・行動を変えようとしない)管理職の存在で、このような管理職の啓発に腐心している企業が少なくない。

特に、旧来型の大手企業に代表される男社会のシステムの中で育ってきた男性管理職は、女性の活用に慣れていない(うまく対応できない)。加えて、失敗しないことが昇進の条件という企業風土が一部に根強いこともあって、不慣れな女性の活用に難色を示す管理職が少なくないのが実情のようだ。そうした意識(偏見)を持っている管理職の下に、意欲やスキル・能力の高い女性をいきなり配属しても、うまくいかない可能性が高い。だからこそまず行うべきなのは、研修などを通して管理職の意識を改革していくことである。

研修では、経営トップの強い女性活用の方針を明確に示し、女性活用が企業の生き残りのために不可欠な道であるという女性活用の“必然性”をまず理解してもらう。そして、能力や資質の差は男女差によるものではなく個人差に過ぎず、実際に戦力化を図れば男性と変わらない(あるいは男性以上の能力や成果を発揮できる)ことを周知徹底する。そのためには、これまでの男性中心社会でのビジネスの進め方、マネジメントの仕方で問題となる(悪い)部分を排除し、男女差ではなく個人差、一人ひとりの個性・特徴に配慮した部門・部署経営を行う必要があることを気づかせていくことである。

何より、女性戦力化を図ることが管理職としての大きな役割であり、それが生産性を高め、企業の業績向上につながっていく。こうした点に対する管理職への意識改革が欠かせないと思う。



この記事は会員限定です。会員登録(無料)をすると続きを読むことができます。
登録10秒!メールアドレスだけで簡単にご登録ができます
会員の方はこちら
次のページ
「ポジティブアクション」に取り組む企業事例
  • 1
  • 2
  • 3
  • 次のページ

記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です

人事マネジメント解体新書のバックナンバー

人事マネジメント「解体新書」第118回
「法改正」が進む中で人事部に必要な「法対応」スキルとは(後編)
「公的資料」を使って「働き方改革関連法」を徹底理解する
近年、労働に関する「法改正」が進展する中、人事担当者の「法律」(労働関連法令)への正しい理解と適切な対応は、需要なスキルとなっている。「後編」では「働き方改革関...
2019/11/21掲載
人事マネジメント「解体新書」第117回
「法改正」が進む中で人事部に必要な「法対応」スキルとは(前編)
厚生労働省などの「公的資料」をいかに読み抜くか
近年、「働き方改革関連法」の施行や「パワハラ防止法」の成立に代表されるように、人事部の業務に関連する「法改正」の動きが一段と活発化している。そのため、人事の仕事...
2019/11/13掲載
人事マネジメント「解体新書」第116回
「パワー・ハラスメント防止」を義務付ける関連法が成立、
企業は「パワハラ防止法」にどう対応していけばいいのか?(後編)
職場での「パワー・ハラスメント(パワハラ)」の防止を義務付ける関連法が2019年5月29日、参院本会議で可決・成立した。大企業には2020年4月から、中小企業は...
2019/10/22掲載

関連する記事

高橋俊介さん:
不確実性の時代に企業や人事はどう行動すべきか
「変化対応能力のある組織」をつくるダイバーシティとキャリア自律
グローバル化によるビジネス環境の急速な変化、少子高齢化にともなう人手不足、働き方改革への対応、さらには突然の大規模災害や感染症に備えての対策まで、企業はさまざま...
2020/05/08掲載キーパーソンが語る“人と組織”
日本の人事部「HRアカデミー2019」夏期講座
従業員の「仕事」と「育児」の両立支援~いま、人事が取り組むべきこと~
従業員の仕事と育児の両立を支援するうえで欠かせない「育児休業制度」。しかし、その利用状況を見ると、男女間に大きなギャップが存在する。女性の育休取得率が80%台で...
2019/10/21掲載イベントレポート
女性活躍推進が成果を「上げている」企業は約半数。
「上げていない」と答えた企業では、女性従業員の「昇進意欲」や「モチベーション向上」が課題
多くの企業が女性活躍推進に取り組んでいる。その成果については、「上げている」(8.9%)「どちらかといえば上げている」(36.6%)が合わせて45.5%と、半数...
2018/08/02掲載人事白書 調査レポート
いま考えるべき人事の「未来像」
~新しい時代における人事の存在意義とは~
グローバリゼーションやテクノロジーの急激な進化により、いま世界は大きく変わろうとしている。企業もビジネスモデルの変革を余儀なくされているが、こうした環境の中にお...
2018/06/11掲載注目の記事
伝統的な左官という仕事の価値を見つめ直し、安定的かつ魅力的な仕事へ
新たな形の左官業に挑む、原田左官工業所
人手不足や従業員の高齢化など、さまざまな問題を抱えている、建設業界。特に中小企業では、その苦労が大きいことでしょう。そのような状況下、人材育成や働き方改革に取り...
2018/04/19掲載編集部注目レポート

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

従業員の自律的なキャリア開発を支援する POSITIVEが選ばれる理由

記事アクセスランキング

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。