企業研修、採用、評価、人材開発、労務・福利厚生のナレッジコミュニティ

人事マネジメント「解体新書」

新・女性活用時代
―― いま改めて注目される「女性活躍推進」について考える【前編】 (1/4ページ)

2014/4/7
アベノミクスの成長戦略で、女性の活躍推進が打ち出された。日本社会において、女性の積極的な活用が経済的閉塞打開のカギを握る、というものである。周知のように、「女性活用」の重要性は以前から言われてきたが、なぜ今、改めて注目されることになったのか? この古くて新しいテーマである女性活用を現時点で整理し、その課題と企業が対応すべき施策・マネジメントについて洗い直していく。『前編』では、女性活用が再び俎上(そじょう)に上がった背景について解説する。
女性を国の「成長戦略」の中核に
◆2012~13年、政府が打ち出した女性活用への方針とは

女性活用が言われるようになって久しい。振り返ると、1985年に「男女雇用機会均等法」(均等法)が制定され、翌年施行された。働く人を性別によって差別することなく、働く女性の母性を尊重し、その能力を十分に発揮できる雇用環境を整備することは、少子高齢化が急速に進む日本において、また、経済社会の活力を維持していく上で、非常に重要な課題であった。しかし、それから30年近くを経た現在も、当初の思惑とは裏腹に女性活用はなかなか進んでいない。その理由については多くの見方があるが、男女の役割分業意識が根強い日本社会や会社組織風土において、性差のない活躍を進めていくには相応の意識改革と継続的な取り組みが必要であり、そのためにはかなりの時間とコストを要するという意見が支配的である(だから、できなくても仕方がないという言い訳になっている)。それがここに来て、やっと政府が本腰を入れ始めた。国際公約的な意味合いも含め、少子高齢化が進む国内での労働力不足が進展していく中、2012年から13年にかけて女性活用に向けた明確な方向性が打ち出されることになった。

2012年、経済産業省産業構造審議会は価値創造経済への経済社会ビジョンを発表した。この中で日本経済を縮小連鎖型の「やせ我慢の経済」と表現し、その活路の一つとして女性の活躍を求めたのである。戦後の重厚長大・製造業型経済が様変わりし、現在では第3次産業が約75%を占めるという産業構造の変化に対して、従来型の男性モノカルチャーでは、イノベーションにも経済の拡大にも限界がある。また、国内市場の飽和状態に対しても、女性の持つソフト力が商品開発などで新たな市場創出に大きく機能するとしていて、産業構造が移り変わっていく中、改めて女性活用を国の「成長戦略」の中核に置くことを同報告書は強調している。

翌2013年、そうした意向を受けた形で経済産業省は、「ダイバーシティ経営企業100選」を発表、表彰した。一部の先進的な企業を除き、多くの日本企業では多様な人材を積極的に活用していこうという動きが鈍くなっているが、その中で、女性活用が多様な人材力の獲得と市場形成の試金石であると明示したのである。要は女性活用が、ダイバーシティ経営への突破口になるということだ。

余談であるが、「ダイバーシティ経営企業100選」の発表会場で、IMF(国際通貨基金)の専務理事から「日本女性の活躍は、経済に計り知れない恩恵をもたらす」とのビデオレターが紹介された。IMFは東京で開催された年次総会の場でも、「女性は日本を救えるか?」という研究発表を行っているが、その中で、今後20年間で日本が女性の労働参加率を現在の62%から先進7ヵ国(G7)並みの70%に引き上げれば、GDP(国内総生産)を0.25ポイント、北欧並みの80%とすれば0.5ポイント引き上げることができるとしている。このような指摘の背景には、日本女性の「ジェンダー・ギャップ指数」(男女平等指数:政治・経済・健康分野における女性の地位)の低さがある。世界136ヵ国中105位という低ポジションでは、日本は女性活用について国際社会で語る資格はないのかもしれない。

何より、政府が女性活用の方向性を意識的に打ち出した理由には、このような内外からの要請があったことは間違いないが、労働力不足と縮む一方の国内市場に対する大きな危機感が非常に大きいと思われる。まさに、待ったなしの状況なのだ。

◆依然として女性は「眠れる労働力」

急速に進む少子高齢化は、確実に労働力不足を引き起こす。そこで、女性をはじめとした多様な人材を活用しようとなったわけだが、問題は人口の半分を占める女性が労働市場に十分に参加していなくて、さらに参加の内容も不十分なことである。女性の年齢別就業率を議論する場合、育児期の主婦層が前後の世代より下がる「M字型就業曲線」が引き合いに出される。直近の2014年に総務省が発表した「労働力調査」では、M字傾向がかなり改善の傾向を示しているものの、諸外国と比べるとまだまだ低い状態である。この年代の女性で就業率が低下する主な理由は、第一子出産で6割以上が仕事を辞めることにある。これは、出産・子育てと仕事が両立できない状態が依然としてあるからで、官民挙げて進めているワーク・ライフ・バランス施策も、あまり効果を上げていないようだ。

加えて、40代から始まる再就業にも問題がある。その多くはパートタイムなど非正規労働であり、本人の持っている能力・スキルを発揮することのできる仕事とは程遠いのが現実である。また、家庭との両立が難しい日本企業では、大卒女性の復帰率も低くならざるを得ないという事情がある。



この記事は会員限定です。会員登録(無料)をすると続きを読むことができます。
登録10秒!メールアドレスだけで簡単にご登録ができます
会員の方はこちら
次のページ
ロールモデルとしての女性管理職
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次のページ

記事のオススメ、コメント投稿は会員登録が必要です
  • 参考になった0
  • 共感できる0
  • 実践したい0
  • 考えさせられる0
  • 理解しやすい0
  • その他の感想2
オススメ2
最新順 | 人気順 | 古い順
*****さんがその他の感想でオススメしました
2014/04/10

今後の制度設計において、基本的な視点として考えていきたい

kenkoさんがその他の感想でオススメしました
東京都 教育 2014/04/08

拝見して、女性の活躍を考えるに当たり、果たして部課長といった旧来のライン組織的な位置づけで考える事が相当であるのか、この点新たな視点で考える方が効果的ではないかと思いました。

2件中 1~2件を表示
  • 1

人事マネジメント解体新書のバックナンバー

人事マネジメント「解体新書」第118回
「法改正」が進む中で人事部に必要な「法対応」スキルとは(後編)
「公的資料」を使って「働き方改革関連法」を徹底理解する
近年、労働に関する「法改正」が進展する中、人事担当者の「法律」(労働関連法令)への正しい理解と適切な対応は、需要なスキルとなっている。「後編」では「働き方改革関...
2019/11/21掲載
人事マネジメント「解体新書」第117回
「法改正」が進む中で人事部に必要な「法対応」スキルとは(前編)
厚生労働省などの「公的資料」をいかに読み抜くか
近年、「働き方改革関連法」の施行や「パワハラ防止法」の成立に代表されるように、人事部の業務に関連する「法改正」の動きが一段と活発化している。そのため、人事の仕事...
2019/11/13掲載
人事マネジメント「解体新書」第116回
「パワー・ハラスメント防止」を義務付ける関連法が成立、
企業は「パワハラ防止法」にどう対応していけばいいのか?(後編)
職場での「パワー・ハラスメント(パワハラ)」の防止を義務付ける関連法が2019年5月29日、参院本会議で可決・成立した。大企業には2020年4月から、中小企業は...
2019/10/22掲載

関連する記事

日本の人事部「HRアカデミー2019」夏期講座
従業員の「仕事」と「育児」の両立支援~いま、人事が取り組むべきこと~
従業員の仕事と育児の両立を支援するうえで欠かせない「育児休業制度」。しかし、その利用状況を見ると、男女間に大きなギャップが存在する。女性の育休取得率が80%台で...
2019/10/21掲載イベントレポート
女性活躍推進が成果を「上げている」企業は約半数。
「上げていない」と答えた企業では、女性従業員の「昇進意欲」や「モチベーション向上」が課題
多くの企業が女性活躍推進に取り組んでいる。その成果については、「上げている」(8.9%)「どちらかといえば上げている」(36.6%)が合わせて45.5%と、半数...
2018/08/02掲載人事白書 調査レポート
いま考えるべき人事の「未来像」
~新しい時代における人事の存在意義とは~
グローバリゼーションやテクノロジーの急激な進化により、いま世界は大きく変わろうとしている。企業もビジネスモデルの変革を余儀なくされているが、こうした環境の中にお...
2018/06/11掲載注目の記事
社員53人で100億円を売上げる驚異の生産率
女性活躍を推進し、チームの力を最大に高める秘訣とは
オリジナル化粧品「マナラ」を展開する、株式会社ランクアップ。従業員は53人と少数精鋭ながら、100億円近くの売上を計上する同社では、増収増益を続けているにもかか...
2017/12/06掲載編集部注目レポート
「女性管理職増加」「多様性の達成」は通過点 マタハラにいち早く取り組んだプルデンシャル生命に聞く“多様性のその先”
プルデンシャル生命保険株式会社は、2008年頃には管理職の3割を女性が占めるなど、女性活躍推進に関して先進的な企業として知られます。現在は数字からは見えない、真...
2017/09/20掲載編集部注目レポート

会員として登録すると、多くの便利なサービスを利用することができます。

事業戦略を支える人事の挑戦 あなたの会社の健康労務費見直しませんか?

記事アクセスランキング

注目コンテンツ

【人事の日制定記念企画】
オピニオンリーダーからのメッセージ

HR領域のオピニオンリーダーの皆さまから全国の人事部門に向けてメッセージを頂戴しました。


人事メディア情報

人事メディア情報

人事・労務関連の代表的なメディアをご紹介いたします。


健康経営を加速する「コラボヘルス」という新発想<br />
企業と健保が強みを活かしあう協働の仕組みとは

健康経営を加速する「コラボヘルス」という新発想
企業と健保が強みを活かしあう協働の仕組みとは

社員一人ひとりの健康づくりを支援することによって、医療費の適正化と生産...


ミスなく!手間なく!リスクなく!<br />
「奉行シリーズ」で中堅・中小企業を熟知するOBCのマイナンバー対応サービスとは

ミスなく!手間なく!リスクなく!
「奉行シリーズ」で中堅・中小企業を熟知するOBCのマイナンバー対応サービスとは

マイナンバーの個人への通知開始まで、半年を切った。企業のマイナンバー対...