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「日本版401k」のための正しい投資教育 

経済ジャーナリスト

荻原 博子さん

加入者が自己責任のもとに運用し、その実績次第で受け取る額が変わる確定拠出年金(日本版401k)の導入から、この10月で丸3年が経ちました。著名企 業が相次いで401kに移行し、地方銀行から投資顧問会社まで多くの金融機関も続々と市場に参入しています。しかし「従業員に対しての投資教育が負担」 「管理・運用コストがかかりすぎる」などという理由で導入を見送った企業もあり、従業員側からも「運用商品の説明を受けたが、難解でわかりづらい」「60 歳になるまで受け取れないなど使い勝手が悪い」といった不満の声も聞こえてきます。日本の401kはどのような方向に向かうのか。人事・労務担当者が留意 すべき点は何か? 経済ジャーナリストの荻原博子さんが従業員の側の視点に立って分析・提言します。

Profile

おぎわら・ひろこ●1954年長野県生まれ。明治大学文学部卒。経済事務所勤務を経て82年にフリーとなり、経済ジャーナリストとして雑誌・新聞・テレビ などで幅広く活躍中。複雑な経済やお金の仕組みをわかりやすく解説。バブル崩壊後の家計の見直しや国の財政投融資の矛盾を指摘するなど、時代の一歩先を行 く分析力に定評があり、ビジネスマンから主婦層まで幅広い支持を得ている。『シティバンクに気をつけろ!』(ダイヤモンド社)、『生命保険は掛け捨てにし なさい!』(同)、『あなたのお金防衛術』(小学館)、『国からお金を取り戻す77の法則』(青春出版社)など著書多数。

「確定給付」から「確定拠出」へ変わった背景

これまでの企業年金といえば、企業が積み立てた資金を運用し、退職後に約束した額を従業員に支払う「確定給付型」でした。なぜここにきて、将来の受け取る額が運用結果によって変わる「確定拠出型」が新たに導入されることになったのでしょうか。

2001年から企業会計の制度が変わり、企業は年金の積立がちゃんとあるかどうかを帳簿上明らかにしなければならなくなりました。その結果、運用実 績の悪化で積立不足に陥る企業が相次ぎ、大手企業の中にはそれが4000億円にも膨らんでしまったところも出てきたのです。これは引き当てを積んで処理し なければならないものであり、不良債権と同じです。企業はビックリ仰天したわけです。

超低金利が続く現在、企業はこのまま「年金の掛け金を5%で運用します」などと約束していたら、運用実績がさらに悪化して、積立不足が膨らむ一方で しょう。そこで「資金は出しますが、運用するのはあなたです。将来的にいくらもらえるかは、あなたの運用の結果次第です」ということにしてしまえば、今ま での不足分はしょうがないけれども、これからは企業が資金運用の責任を取らなくても済む。それで出てきたのが日本版401kというわけです。

401kの導入を望んでいたのは、企業だけでなく金融機関や国も同様でした。金融機関にとっては、多くの企業が401kを導入すれば手数料で稼げる わけだし、国も401kで株や国債を買わせたりすれば、少しは景気がよくなると考えたのです。三者の思惑が一致したから導入されたのであって、決して従業 員や一般の人たちが望んでできた制度ではないと私は思いますね。

従来の適格年金や厚生年金基金から401kへ一気に乗り換えが進むと見られたのに、実際には加入者数は100万5000人強にとどまっています(厚生労働 省調べ、2004年7月末現在)。日本の会社員の総数は約3200万人と言われていますから、全体の導入率は3%強にすぎません。思ったほど乗り換えが進 んでいないのはなぜでしょうか。

荻原 博子さん Photo

401kへ移行するためには、今までの年金を清算しなければなりません。しかし積立不足が巨額すぎて清算できない企業が少なくない。それがネックになっている背景があると思います。

その一方、積立金をそっくり分配して、年金そのものを廃止してしまう企業も出てきています。とりあえず今の制度のまま続けようというところもある。 そうした理由で導入のテンポが遅れていますが、それでも年金を存続しようとする企業の多くは、これからは従来型のものよりも、運用リスクを負わない 401kへ移行していくのではないでしょうか。

投資を理解するには時間もコストもかかる

確定拠出年金法には「事業主は従業員の投資教育の責務を負う」などと努力義務規定が盛り込まれています。しかし厚生労働省所管の財団法人シニアプラン開発 機構が実施したアンケートによると、401kの導入を見送った企業の47.1%が「従業員に対しての投資教育が負担」をその理由にあげています。従業員へ の投資教育をどうするか、頭を抱えている企業が多いのが現状のようですが。

人事・労務担当者の大半は金融については素人でしょうから、従業員への投資教育はプロフェッショナルを呼んできて説明してもらうかたちになりますよ ね。しかし人事・労務担当者と同様に、従業員のほうも学校で投資教育を受けたこともなければ、金融の知識などほとんどゼロに近い状態でしょう。だから、 401kにかかわる投資教育には、コストだけでなく時間も相当かかります。これは当然ですね。

荻原 博子さん Photo

たとえば会社に呼ばれた講師から、「投資信託とはどういう商品か」「株を組み込む比率が高い商品とはどういうものなのか」などと、金融の専門的な話 を1時間とか2時間だけ聞かされて「あとは自分で投資したい金融商品を選んでくださいね」と言われる。それだけでは従業員はどうしていいかわからないで しょう。従業員に対する投資教育というのは、もっと入念に、また継続的に行う必要があると思いますね。

さきほども言ったように、401kは企業、金融機関、国の思惑から導入されたという側面もあるので、従業員にしてみればそこに巻き込まれたようなも のかもしれません。何の投資の知識もないのに、いきなり商品を選べと言われ、何かを選ばなければいけないような状況ではないでしょうか。「金融商品なんて 何が何だかわからない」という従業員は無理をしないで、「預貯金」で入れておいてもいいんじゃないかと、個人的には思っているんです。

リターンよりもリスクをとらない戦略

金融自由化で個人のお金を運用する場所が増え、とくに401kが導入されたころから、テレビや雑誌も、また国も個人に「投資」「運用」を勧めるようになってきました。でも無理に手を出さなくてもいい、ということでしょうか。

そう。今は積極的に投資に乗り出すときではないと私は思います。お金のある人が投資をするのはいいとしても、年収500万~600万円で住宅ローン を抱えている――といった会社員など、お金に余裕のない人は勧められても投資に手を出さないほうがいい。なけなしの百万円で百万円の株を買ったりしてはい けません。

401kの従業員の投資教育でも、どうしても金融の仕組みや商品の良し悪しがわからないという人に対しては、人事・労務の担当者は別のメッセージを 伝えることが必要ではないでしょうか。たとえば、「無理に投資をしなくてもいいです」「気に入った金融商品が見つからなければ、預貯金を選んでもいいで す。金額は大きくは増えないけれども、少なくとも目減りしませんから」というように。

荻原 博子さん Photo

従業員の投資教育のために金融機関の人を呼んで説明してもらうと、どうしても「投資してください」という方向だけになりがちです。従業員に投資信託を選んでもらえば金融機関は手数料が入りますが、預貯金では儲けになりませんからね。

たとえば投資信託を買って、それが毎年3%ずつ増えていけば、金融機関に1.5%程度の手数料を取られても、多少は増えていきます。しかし現在のよ うに景気が本当に回復していないときに投資信託を買ったりすると、手数料分だけが目減りしていくリスクがあります。投資の世界は、海千山千のプロも闘う、 義理人情の通じない修羅場。そこで勝利を得るのは、容易なことではありません。金融の知識も関心もない人が手を出しても、いい結果を得るのはむずかしいと 思いますが、しかし勤務先の会社が401kを導入すれば従業員はそれに従うしかない。となれば「リターンよりもリスクをとらない」ということを肝に銘じて おくべきでしょう。

お手本のアメリカでは投資教育が進んでいる

日本の401kはアメリカのそれを手本にして制度化されたと言いますが、 違いはありますか。

ありますね。たとえば、日本の401kでは60歳になるまでお金を引き出せません。会社に勤務している間に401kをマイホーム購入の資金に充てようとか、そういったことができない仕組みになっています。一方、アメリカでは、途中で引き出して家でも何でも買えます。

でも日本とアメリカでは、そもそも投資に対する背景が違うと思うんですね。アメリカ人は投資教育を受けていますし、日常的に株式投資をしている人も多い。「投資をして富を築く」といった考え方も持っているし、そういう教えも小さいころから受けています。

荻原 博子さん Photo

ですから日本人とは違って、会社の従業員が「資金は出しますが、運用するのはあなた。将来的にいくらもらえるかは、あなたの運用次第」と言われて も、うろたえることなどありません。逆に、これまでの日本の会社の確定給付制度みたいに「会社があなたのために資金を運用します」と言われたりすると、 「やめてくれ! 私が自分でやるから」と言うかもしれない。投資知識のある人が少ない日本とは、だいぶ背景が違います。

アメリカでは401kによって株価が押し上げられた側面もあります。しかし今は景気が下り坂にかかり、資金運用がマイナスになって、401kでマイホームを買った家庭が崩壊する可能性も一部では指摘されています。そのあたりの事情も日本と違いますね。

「必勝法」よりも「ネガティブ」情報を伝える

人事・労務担当者が401kの投資教育で従業員に正確なことをきちんと伝えるためには、どうしたらいいでしょうか。たとえば、企業が100万円ほど資金を出して、半年ぐらい担当者が実際に運用を経験してみる、などというのはどうでしょう。

それはいいことだと思います。投資・運用は、自分でやってみないと人に説明できませんからね。たぶん、損をすると思いますけど、損をした担当者のほ うが従業員にいいアドバイスができるかもしれません。投資のよい面を知ると同時に、落とし穴にも目が向けば、初めて投資する場合でも「大怪我」を避けるこ とができるし、賢く運用していくこともできるはずだと思いますね。投資で本当に役に立つのは、「必勝法」よりも「ネガティブ情報」のほうだと思うのです が、金融機関の人も投資の専門誌もネガティブな情報はほとんど伝えません。そうした情報を人事・労務担当者が知り、従業員にも教えてあげることも大事だと 思うんですね。

それと、経済の基本をもう一度押えておくことも大事です。デフレが続く中では預貯金をしておけば実質的に資産の価値が上がることになるとか、インフ レのときはその逆だとか、そういった基本的なことがわかっていないと、本来は投資などできないものなのです。商品の中身がどうのこうのというのは、その先 の話ですよ。

今はまだデフレで物価が下がっていますから、投資など何もせず、資産をそのままにしておけばその価値は相対的に上がります。何もしないと儲からない し、他人と差がつくと思うかもしれませんが、これも立派な運用方法の一つです。デフレの今はリスクを取らないことを優先すべきでしょう。一部の投資を勧め る本の中には「最初は低リスクの商品を主体に運用して、経験を積むうちに、より高いハイリスク・ハイリターンの商品を……」などと書いてありますが、決し てそうではありません。リスクをとってもいいのは、インフレになったときです。経済の状況を読まなくてはいけません。

401kを導入した企業では、人事・労務担当者が従業員と金融機関の間に立ち、投資教育の現場をしっかり注視していかなければなりませんね。

荻原 博子さん Photo

そうですね。でも、人事・労務担当者は今、すごく大変な時期で、401kどころではないかもしれません。山のように仕 事があるのに人員を減らされ、同僚にリストラ勧告をしなくてならない辛い立場に立たされるときもある。ついつい「すべて金融機関にお任せ」となりがちで す。しかし従業員の老後の大事な生活設計のために投資教育とアドバイスは絶対におろそかにしてもらいたくないですね。

(取材・構成=天野隆介、写真=塚崎智晴)


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