介護経験のあるビジネスパーソン309人に聞いた
仕事と介護の両立実態
仕事と介護の両立のための会社に対する要望は、
「従業員ニーズを把握してほしい」が24%で最多
総務省「平成24年就業構造基本調査」によれば、2005年10月~2012年9月までに家族 の介護・看護のために前職を離職した雇用者は、48万6900人(うち男性9万7900人、女性38万9000人)であった。また、介護をしている者 (557万4000人)のうち、40代が13.9%、50代が29.6%となり、企業の中核を担う40代・50代のキャリアに大きな影響が出てくる恐れが ある。今後、働き手世代で介護をする人の増加とともに、離転職する労働者の増加が懸念される。
厚生労働省は、2014年8月に労働者が仕事と介護を両立できる職場環境の実現と、介護離職を防止するための取り組みに向けた社会的機運の醸成を狙いとし た「トモニン」マークを導入し、その対策を進めている。「優秀な人材の確保・労働生産性の向上」等の観点からも、“介護” は一企業だけでなく、喫緊の社会的課題となっている。
このように、仕事と介護の両立支援は看過できない課題となっているにもかかわらず、どのように対策を講じればよいか企業も手探り状態である。そこで、 2014年7月に行ったWEBアンケートでは、これまで実際に介護をした人が、どのように仕事と介護を両立してきたのかを実態調査し、その結果から課題と 今後の取り組みのヒントを分析した。
※『労政時報』は1930年に創刊。80年の歴史を重ねた人事・労務全般を網羅した専門情報誌です。ここでは、同誌記事の一部抜粋を掲載しています。
◎調査名:「介護に関するアンケート」
1. 調査対象:(株)マクロミルのアンケートシステム「Quick」の回答モニターに登録している、民間企業等に勤務する全国20~59歳のビジネスパーソンで、介護をしたことがある人もしくは介護している人の計309人(自営業および役員は含まない)。
2. 調査期間:2014年7月7~8日
3. 調査方法:WEBによるアンケート
ポイント
実態編
要介護者と回答者の年齢との関係:「自分の父母」「配偶者の父母」は「50~54歳」が3割弱、「祖父母」は「30~34歳」が24.7%で最も多くなっている[図表2]
1週間における介護に要した(要する)日数:「自分の父母」「子」「配偶者」では「週に7日」が最も多く、「祖父母」「配偶者の父母」では「週に1~2日」が最も多い[図表4]
介護に関わった(関わっている)期間:「自分の父母」が「1年未満」「1~2年未満」、「祖父母」が「1~2年未満」「2~3年未満」、「配偶者の父母」が「2~3年未満」「3~5年未満」の順で多くなっており、要介護者別にバラツキがでている[図表6]
介護をする上での苦労や不安:「介護の先が見えないことによる “生活面” での不安」が28.8%と最も多く、「常に介護をしていることによる精神的な負担・疲弊」が24.6%、「介護が長期にわたり、仕事を継続しにくくなっていることへの不安」が15.2%と続く[図表7]
仕事と介護の両立編
介護をしている間における業務量の調整方法:「業務量は変わらなかった」が68.6%[図表9]
役職と業務上の課題や不利益取り扱いの内容:部長クラスでは「特に困ったことはなかった」が半数以上だが、係長・主任クラスでは「介護をしていることを上司に告げていなかったので、仕事量、残業の抑制などの配慮を望めなかった」が27.9%と最も多く、役職別でバラツキが見られる[図表12]
介護を理由に退職した人の会社を辞めたきっかけ:退職の理由として「介護に時間が割かれ、時間的余裕がなかった」が57.1%と半数以上を占め、「上司の無理解」「職場全体の雰囲気」が各23.8%と続く[図表14]
介護に関して相談できる仕組み:「直属の上司との面談」が28.5%で、「特にない」が50.8%となっている[図表15]。相談できる仕組みがあり「相談した」と回答した人のうち、「直属の上司との面談」をしたのは71.6%[図表17]
会社や上司へ相談しなかった理由:「なんとかやりくりをすれば、自分自身で解決できると考えたため」が57.1%と半数以上を占める[図表18]
仕事と介護の両立のために会社に対する要望:「仕事と介護の両立のための従業員ニーズを把握してほしい」が24.3%と最も多く、「年休を取得しやすくしてほしい」が14.6%と続く[図表22]
アンケート結果からの総括
先の見通しが立たない介護は、労働者の不安や精神的な負担となり、仕事のパフォーマンス低下や離職にもつながっている。特に40代の組織の中核を担う層で は、業務量の調整が難しいポジションにある中で、介護の事実を申告しない場合も多い。そもそも相談する機会がないことで、職場の理解・協力が得られず、仕事と介護の両立が難しくなっている現状もある。会社側の積極的な情報提供と、柔軟な働き方を可能にするオープンな職場環境の整備が重要である。
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