パートが辞める本当の理由
岸川 宏(きしかわ ひろし)
信頼関係を構築しにくい環境を改善するには?
では、“信頼関係”“相談できる雰囲気”がある職場にするにはどうしたらよいでしょう。パートタイマー白書のアンケート調査に寄せられた「自由意見」にヒントを探してみました。
・職員の数は少ないものの、みな世代が近く、意見や相談をしやすいし、仲が良い。(女性31歳・一般)・まだ始めたばかりだけど皆さん丁寧に教えてくれるし、同じ目線で考えてくれると感じることも多い。アドバイスからは、さすが社員だなと思う意見もたくさん聞けるので、仕事を通して自分自身も成長できるのではと期待しています(女性26歳・主婦)・親身になって気持ちや現状を理解しようとしてくれているのが、日頃の対話や接し方からも感じられます。私もこういう社員になっていきたいと思わせる先輩がいること、それが仕事に対する意欲につながっていくのだなと感じます。(女性23歳・学生)(パートタイマー白書 平成20・21年版から抜粋)
「属性が近い」「親身・丁寧な対応」「尊敬」がキーワードのようです。しかし実際には、店長がパート・アルバイト一人ひとりに気を配り、丁寧に相談に乗ることは難しいものです。また、店長や社員とパート・アルバイトの関係は、年齢や人生経験が逆転していたり、大きく離れていたりすることもよくあります。信頼関係を構築しようにも、難しい環境があることは否めません。
まずは、ヨコの関係づくり
それではどうするか?まずは、パート・アルバイト間(ヨコ)の信頼関係の構築を図り、相談しやすい環境を作る。そして、管理責任者はその意見や相談の内容を吸い上げる、と考えてみましょう。
ひとつの方策として「パート・アルバイトの中から新人の教育担当(トレーナー)を選任し、導入教育にとどまらない、継続して指導・助言を行う“メンター的”(※)な役割を“付与”もしくは“意識付け”をする」という方法は考えられないでしょうか?
※メンター(制度)仕事をしていく上で「目標となる」人物に相談をしたり、指導を受けたりする行為を制度化したもの。指導・助言を行う人を「メンター」と呼び、指導・助言を仰ぐひとを「メンティー」と呼ぶ。新入社員の早期自律化・離職防止・キャリア形成促進などを目的に導入されることがある。
職場の先輩・後輩、師弟関係をより積極的・機能的に推進するための仕組みを作ろうというものです。良好な先輩・後輩、師弟関係を築くことができれば、仕事を遂行するための技術・知識の指導だけにとどまらず、人間関係や家庭に関する相談ごとなど、親密なコミュニケーションに発展していくはずです。
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