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森下仁丹の「第四新卒採用」とは
森下仁丹株式会社 専務取締役 事業統括担当 兼 ヘルスケア事業本部長
森下雄司さん
採用できる人数に限りがあり、心苦しかった
その後、採用はどのように進められたのでしょう。
Webエントリー時に登録していただいた経歴と志望動機、自己PRにくまなく目を通し、200人に絞りました。非常に細かく記入された方やシンプルにお答えいただいた方など、さまざまでしたが、どの方も非常に興味深いキャリアを積まれていました。その中で、一度お会いしたいという方を選んでいきました。
大阪と東京で100名ずつ、それぞれ3日間かけて、グループディスカッションと個人面接を行いましたが、申し分のない学歴だったり、MBAなどの資格を取得されていたり、驚くようなご経験をされていたりと、素晴らしい経歴の方ばかりでした。採用できる人数には限りがありますから、選ばなければいけないと思うと、とても心苦しかったですね。それくらい、今回の採用はレベルの高いものでした。その中で一緒に仕事したい、我々の期待に応えてくれるのではないか、と思う人材と面接を重ね、最終的に10名が入社しました。半数は製薬会社やバイオ関連など同業の出身ですが、残りの半数はITや家電、ホテルなど、全くの異業種からの転職です。
選考に際し、部門責任者の間で事前にガイドラインを定めてはいません。しかし選考の過程で「この人がいいよね」というのは、自然と一致していきました。それは面接で話す中で、失敗経験がありながらチャレンジすることを恐れない姿勢や、壁にぶつかったときに周りの声を聞きながら考えを変えていける柔軟性が感じられる点でも共通していました。何より、問題意識が高く、自分から行動できる人材が集まったと思います。もし先にガイドラインを定めていたら、違う結果になったかもしれません。
入社された皆さんのご活躍の状況はいかがですか。
業務に関しては、基本的にそれぞれの配属先に任せています。当社は中途社員が6割を占めているので、新しい人が入って来ることへの抵抗はあまりなく、なじみやすい環境にあると思います。変革に向けた新たな取り組みを行う際には、我々経営陣も話に入るようにし、透明性を持たせて議論を進めています。
会社を変革するといっても、そう簡単に結果が出るものではありません。長い歴史の中で培ってきたものの中には、変えるべきではないものもあります。入社して3、4ヵ月が経ちますが、この段階になって気づいたこと、分かってきたこともたくさんあるのではないでしょうか。「早く結果を出さなければ」と焦ると、社員にとっても負担となってしまうので、駒村が定期的に個別面談などでフォローをしながら、「一つずつ堅実にやっていきましょう」と伝えています。
年齢と経験が、柔軟な対応と変革を生む
第四新卒採用について、既存の社員のみなさんはどう感じているのでしょうか。
組織の成長のためには新しい風を取り入れなければいけないと、誰もが理解していると思います。私たちが戦うべき相手は病気であり、競争すべきはライバル会社です。内輪でもめている場合ではなく、変わり続けかなければならないという共通認識が存在しています。今回の採用でも、3月1日の採用スタートの日に、全社朝礼の中で駒村から取り組みの意義、期待することを直接伝えて、新しいメンバーを迎え、全員で高め合っていくことを意識付けしました。そのため、社員からの反発などはなく、入社するメンバーへの期待も高かったように思います。
実際に第四新卒組の仕事ぶりを見て、感化されている社員もいるようです。発言の質が変わった人もいれば、アドバイスを受けて仕事のやり方を変えた人もいます。「そういうやり方があるのか」「ああいうふうに調べるべきなのか」などと、彼らの奮闘は既存の社員の目には新鮮に映っているようです。目標にしたい先輩が身近にいれば、他の社員の成長にもつながります。第四新卒組の最も大きな影響は、そこにあると考えています。
第四新卒組にとって、当社での仕事は新たな挑戦です。彼らはコンサルタントとして入ったわけではないので、一緒に新しいものをつくっていこう、今までと違うやり方を試してみようと、積極的にチャレンジしてほしい。取り組む課題に、最初から正解はありません。みんなで議論し、これでやろうと信じて試す。うまくいけばそれでいいし、失敗したらまた次を考える。この繰り返しだと思います。
活躍されている方のエピソードがあれば、お聞かせください。
IT企業出身の社員は、通信販売事業のコールセンター改革に取り組んでいます。以前から新技術については私たちなりに調べていましたが、彼の場合は知識と人脈を生かしながら、我々が思いもしなかった課題提起をしてくれます。また、その提案の進め方という点でも光っていると感じます。
彼が提案してくれたのは、AIを活用し、お客様からの簡単なお問合せに対応する技術の導入でした。こうした新しい提案を行う際、「今の進め方はダメだ」と全てを否定すると、どうしても現場が反発してしまうことがあります。その点、彼は実際にコールセンターの現場を観察し、メンバーの豊富な知識やコミュニケーションスキル、お客様満足度を上げるホスピタリティなどの強みを理解してくれました。その上で、強みを活かしながらさらにサービスを向上させる方法を考え、新しい提案を出してくれています。
知識や経験だけで押し切って、こうしたほうがいい、このほうが効率的だといったアプローチではなかったため、周りも受け入れられる。現場のメンバーも、業務特性を理解してくれたうえでの提案だから、最初は新しいやり方に慣れないことがあっても、やってみようと思ってくれるはずです。彼に限らず、どの社員も現場の声を聞き、柔軟に対応しながら変革に臨んでいます。そこはやはり、それなりの年齢と経験を積まれているからこそだと感じます。