Sansan株式会社:
全ての人事施策は「生産性向上」のために
~Sansanが進めるミッション・ドリブンな働き方改革とは~(後編)[前編を読む]
Sansan株式会社 人事部 部長
大間 祐太さん
チームコーチングによって言語化された「人事部のカタチ」
人事部は何のために存在するのか。Sansanの人事部のミッションとは何なのか。それぞれの考えや気持ちをコーチに引き出してもらいながら、1泊2日の合宿で徹底的に話し合いました。合宿はもちろん神山ラボで行いました。そこで生まれたのが、人事部としての使命と姿勢をまとめた「人事部のカタチ」。会社全体の理念などを明文化した「Sansanのカタチ」の、“人事部版”というわけです。もちろん、最上位に会社のミッションがありますが、じゃあ、それを実現するために人事はどういう役割を担っているのかというと、そこは従来、いまひとつはっきりしていなかった。前任の部長も、私もそこを言語化し、自分たちできちんと“ピン止め”したいと思っていたのです。
「人事部のカタチ」を明確にしたことで、部署内にどういう影響が現れましたか。
人事部にはもともと人が好きで優しい人間が多く、少し相手に寄りすぎるきらいがありました。たとえば、誰かに何かを言われたら、それをかなえてあげるために新しい制度をつくろうとするとか……。優しさは大切だけど、人事はそれだけじゃダメですよね。やはりSansanという会社のミッションを実現するために、人事部があるわけですから。
議論の末にたどり着いた人事部のミッションは、「事業成長のための最高のコミュニケーションエンジンになる」こと。事業成長を加速すること以上に優先される目的や存在意義はありません。意識がそこにピン止めされてから、メンバーも行動がブレなくなりました。制度担当のあるマネジャーも、本当に優しい人なのですが、「人事部のカタチ」ができてからは、「これ、事業成長につながらないよね」とか「ある人にとってはうれしい制度かもしれないけど、全体最適になるの?」という考え方を徹底できるようになり、すごく変わりましたね。これで、「コーチャTEAM」という制度の有効性にも確信が持てました。
貴社ならではのさまざまな施策の成果をご紹介いただきましたが、逆に、制度の設計や運用にあたって苦労された点などありましたら、お聞かせください。
現在は休止しているのですが、以前「CHOTTO」という制度がありました。文字どおり、他部門の業務を“ちょっと”体験できるという制度で、たとえば、営業が1週間だけ開発部門へ行くとか、コンサル業務を体験するとか、そんなことができる制度です。部門をまたぐことで、初めて他部門の考え方や苦労が理解できたり、自部門の課題を客観視できたり、“七人八脚感”を深める上で一定の成果が見込めたのですが、いざ始めてみると、やはり“未経験者”を受け入れる側の負担が大きくて。その負担と期待できるメリットを天秤にかけた結果、「今は全体の生産性向上につながらない」と判断し、休止するに至りました。