武田薬品工業株式会社:
人事はビジネスに貢献する戦略的パートナー
タケダのHR改革に学ぶグローバルマインドセットとは(後編)[前編を読む]
武田薬品工業株式会社 グローバルHR グローバルHRBP コーポレートヘッド
藤間 美樹さん
人事が人事の専門家になり過ぎている、もっとビジネスに貢献を
グローバル基準の人事を実現する上で、日本の企業に足りないものがあるとすれば、それは何だと思われますか。
ハードやしくみではなく、マインドセットの部分ではないでしょうか。先ほども言いましたが、人事はそもそも何のためにあるのかといえば、ビジネスに貢献するためにほかなりません。私は、この「ビジネスに貢献する」というマインドセットが、日本の人事に最も不足しているものだと思います。ビジネスに貢献しようという意識が足りないから、海外でも、社員を管理するような古い時代の人事オペレーションを展開してしまうのです。日本の会社が人事をグローバル化していくとき、グローバル統一の評価制度とか、何かにつけて“統一”したがるのは、その典型例でしょう。内外の制度やしくみを統一すると、グローバルマネジメントができているような気になってしまうんですね。実際は、グローバルでそろえられる部分はそうすればいいし、そうでないところは状況に応じて、それぞれローカルで対応したほうが成果に結びつきやすい。にもかかわらず、多くの企業で社員の管理や統一が自己目的化しているのは、「企業業績を上げるために何ができるか」という人事の原点が見失われているからです。
それと、もう一つ。私がつねづね、日本の人事パーソンに足りないと思っているものがあります。インタビューの前半で、グローバルHRBPのコーポレートヘッドに着任したときのエピソードをお話ししましたね。
外国人のエグゼクティブが着任1ヵ月前から電話会議を要求してきたのに対し、日本人のエグゼクティブは挨拶に出向いても「人事が、何の用があるの?」と、対応に大きな差があったというお話でした。
その差は、人事が会社や社員から、リーダーとして期待されているか否かの差なのです。残念ながら、従来の日本企業では、人事はリーダーとしても、また他のリーダーの戦略的ビジネスパートナーとしても認められているとは言えませんでした。しかし私の経験からすれば、グローバルビジネスの現場では、人事に限らず、リーダーシップを発揮していないとなかなか相手にしてもらえません。
なぜ日本の人事は、会社の中でリーダーになれないのか。おそらく、人事の専門家になり過ぎてしまったからでしょう。採用なら採用、評価なら評価と狭い範囲を深く極めていたり、非常に精密で複雑な制度設計が得意だったり、“人事屋”としてはすごいんですよ。でも、現場はそれを理解できないし、求めてもいません。会社の業績に貢献するどころか、要らない施策を押し付けて、現場の足を引っ張っているのが日本の人事部の実態だとしたら、「何の用があるの?」と言われてしまうのも当然ですよね。