プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社:
P&Gは「スキル」に着目したプログラムを、なぜ他社に無償で提供するのか?――「ダイバーシティ&インクルージョン啓発プロジェクト」発足の背景と活動内容とは(後編)[前編を読む]
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社 ヒューマン・リソーシス マネージャー
小川 琴音さん
「スキル」で解決できることを啓発していく
プロジェクトを通じて他社と接していて、どのようなことを感じますか。
本当に問い合わせが多く、多くの日本企業がダイバーシティに関して課題を抱えていることを実感しました。「女性活躍推進の号令がかかっていて、女性を増やしたが、その次に現場でどう女性を活用すればいいのか」という悩みを抱える人事の方が多いようです。また、多様な人材をそろえたとしても、人材の能力を引き出したり、組織の生産性を上げたりできる管理職は、一部の人格者やマインドセットを持った人に限られる、と思っている人事の方も多い。しかし、それでは属人的になってしまい、企業として、組織として、多様性を経営に結び付けられないのです。
当社では「スキルを身につければいい」という答えを持っています。スキルは誰でも学べるし、ビジネスパーソンとして学ぶべきものです。スキルを管理職が身につけることによって、部下の能力が十分に生かされるようになり、組織の生産性が上がり、会社の業績も上がります。
プロジェクトの活動としては、アンケート調査の実施などもありますね。
2016年3月には、報道関係者向けのプレスセミナーを開催しました。当社のプロジェクトの主要メンバーや社長が登壇し、当社の取り組み内容についてお伝えしたほか、プロジェクトの発足も発表しました。シンポジウムも他社と連携しながら、いくつか開催しています。また、アンケート調査に関しては、2016年3月、ビジネスパーソン2000人を対象に行った「ダイバーシティに関する潜在意識調査」の結果を発表しました。こうしたことも社会の状況やニーズに合わせながら、今後も実施を検討していきたいと思っています。
プロジェクトに携わっていて、どのようなときにやりがいを感じますか。
他社にトレーニングを提供していると、「スキルが大事なんですね。学べるんですね」と安堵の表情を浮かべる人事の方が多いのが印象的です。そんな気づきを提供できたときや、その気づきを基に実際にアクションにつなげた企業から「効果が出てきました」などと報告を受けたときは、「この仕事に携わって良かった」と思いますね。また、私たちが社外で学んだことを社内に持ち帰って、その知識やノウハウを還元すると、「それは気づかなかった」「そんな考え方もあるんだ」「そこが知りたかったんだ」などの声を社員から聞くこともあります。社外と社内のつながりをつくれたときは、プロジェクトの一つの意義を達成できたと感じ、本当にうれしく思います。
それでは、御社の「ダイバーシティ&インクルージョン」の取り組みや、プロジェクトの今後の展望について教えてください。
ダイバーシティ、つまり多様性は、日々変化します。社員の構成、社員一人ひとりの状況やニーズによって変わっていくのです。自社内の取り組みとしては、今後もそのニーズを組み上げ、施策を調整して次のステージに進みたいと考えています。多様なニーズに合うように、制度をもっと柔軟にしていく、社員のマインドセットを変える取り組みを行うなど、いくつか新しい施策も考え、準備している段階です。当社は変化を好む会社です。まだ歩みは止めません。
プロジェクトに関しては、2016年3月に立ち上げたばかりで、今でも問い合わせが多い状況です。複数企業向けワークショップ、一社向けトレーニングの提供など、さまざまな形で、このまま引き続き広く社会に啓発をしていきたいと考えています。