プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社:
P&Gは「スキル」に着目したプログラムを、なぜ他社に無償で提供するのか?――「ダイバーシティ&インクルージョン啓発プロジェクト」発足の背景と活動内容とは(後編)[前編を読む]
プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社 ヒューマン・リソーシス マネージャー
小川 琴音さん
セミナーやトレーニングを各社の状況に合わせて提供
プログラムの提供の仕方にはどのようなパターンがありますか。また、どのような企業にプログラムを提供しているのですか。
大きく三つのパターンがあります。一つ目は、複数の企業に向けて当社のノウハウをお話しするワークショップやフォーラム。二つ目は、一社に対して行う部下をもつ管理職向けトレーニング。三つ目は、個別のヒアリングのご依頼にお応えする場合もあります。
トレーニングを提供するにあたっては、申し込みのあった企業に、まずじっくりとヒアリングを行います。その企業のダイバーシティに関する状況を、徹底的に教えてもらうのです。当社のプログラムを提供するにはまだ早いと判断した場合には、提供を辞退することもあります。例えば、管理職や社員の方々が「ダイバーシティ」の定義を理解していない、社内の「ダイバーシティ」が進んでいない、画一的な組織になっている、など。当社のトレーニングは「ダイバーシティ」のその先をお教えするものなので、その段階にまで至っていない企業には、残念ながら「インクルージョンスキル」のトレーニングはあまり効果がないと考えています。トレーニングを提供できない企業には、ほかの二つのパターンで、知識やノウハウをお教えしています。
2016年3月にこのプロジェクトの発足を発表し、5月から本格提供を開始。12月中旬までに、約160社に対して、フォーラムやトレーニングなどのいずれかを提供しました。今でも日々、問い合わせをいただいています。本当にありがたいことです。
一社に対して行う、部下をもつ管理職向けトレーニングの提供にあたっては、一社ごとにケーススタディをカスタマイズします。例えばプログラムの中には、管理職同士がケーススタディに取り組み、グループディスカッションを行うようなものもあります。その「ケース」を各社に合わせた内容にしていくのです。人事の方にヒアリングし、その内容を踏まえて、ケースをつくります。受講者が研修の内容を「自分事」にしやすいように工夫しているのです。
このように手間暇かけて、良質なプログラムを提供しています。啓発プロジェクトにかかわる当社のメンバーは全員、通常業務を行いながらプロジェクトに携わっていますので、かなりハードではあります。でも、このような重要なプロジェクトを遂行するにあたっては、いい加減なことはできませんからね。
また、トレーニングの講師(トレーナー)は、社内のトレーナーと同じ人が担当します。トレーナーになるためには、社内で厳しい承認プロセスを経なければなりません。そのため、高い質を担保できているのです。多くのトレーナーは執行役員や部長級の人材で、通常業務を行いながら、啓発プロジェクトにかかわっています。